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日本の経験を活かしてインドネシアの脳卒中医療を前進させる

―アジアにおける脳卒中診療体制の強化に向けた国際比較研究―

令和8(2026)年4月24日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の脳血管内科 吉江智秀医長、吉村壮平医長、塩澤真之医師、井上学客員研究員、豊田一則副院長、古賀政利部長の研究グループは、インドネシア国立脳センター病院(Mardjono Mardjono、東ジャカルタ)のBeny Rilianto医師(国循客員研究員)とともに、日本とインドネシアの脳卒中診療体制を多面的に比較した研究を実施しました。
本研究では、日本がこれまで積み上げてきた制度整備や診療体制の経験を手がかりとして、インドネシアにおける課題と改善可能な領域を体系的に検討しており、アジア全域の脳卒中医療の発展に向けた重要な示唆を提供しています。本研究成果は、令和8年4月16日にJournal of Clinical Neuroscience誌にオンライン掲載されました。
なお、Beny Rilianto医師は、国循と業務提携の基本合意を結ぶインドネシア国立脳センター病院から、国循での研究を希望して来られました。

背景

脳卒中はアジアにおいて依然として主要な死亡・後遺障害の原因であり、医療・社会・経済の各方面に甚大な負担をもたらしています。日本では、高血圧管理の普及、住民啓発活動の推進、救急搬送体制の整備、脳卒中・循環器病対策基本法の制定、学会主導による脳卒中センター認定制度などにより、脳卒中医療は着実な進歩を遂げてきました。

一方、インドネシアでは生活習慣病の急増を背景に脳卒中の疾病負担が拡大しています。しかし、1万7000以上の島々からなる地理的条件と医療資源の偏在が障壁となり、急性期治療への迅速なアクセスに大きな課題が残されています。

研究成果のポイント

本研究では、疫学、住民啓発、救急搬送、再灌流療法(血栓溶解療法・血管内治療)、専門人材、医療機器・基盤、保険制度、予防戦略について両国を比較分析しました。

インドネシアにおける主な課題
  • 治療アクセスの格差:脳卒中センターや再灌流療法を提供できる施設が大都市に集中しており、地方では適切な急性期治療に迅速に到達できない状況が続いている。
  • 専門人材・医療機器の不足:神経内科医、脳神経外科医、脳血管内治療医の絶対数が不足しており、MRIをはじめとする診断機器も都市部に偏在している。
  • 住民啓発と早期認識の不十分さ:脳卒中の症状に対する住民理解や脳主幹動脈閉塞の早期認識体制が整っておらず、治療の機会損失につながる可能性がある。
  • 保険制度による補償の制約:公的医療保険制度は整備途上にあり、特に血管内治療(血栓回収療法)への費用補償が十分でないことが、診療体制整備の障壁となっている。
日本の経験が与える示唆

日本では、予防・早期発見・救急搬送・急性期治療・リハビリテーション・地域連携・人材育成を一体的に組み合わせた包括的な体制整備が、脳卒中医療の質向上を支えてきました。こうした制度設計の過程と成果は、同様の課題を抱えるインドネシアをはじめとするアジア諸国にとって、有用な参考モデルとなり得ます。

今後の展望

インドネシアにおける脳卒中医療の改善には、急性期治療体制の整備だけでなく、住民啓発、搬送体制、人材育成、医療機器整備、保険制度、予防戦略を含めた包括的かつ持続可能なアプローチが不可欠です。特に、地方における脳卒中センター整備、専門人材の育成と適正配置、血管内治療へのアクセス向上、持続可能な医療財政基盤の整備が重要です。

研究グループは、今後もアジア各国の実情に応じた脳卒中医療体制の構築を支援すべく、国際的な研究・情報共有を推進していきます。日本が長年にわたり培ってきた経験と知見が、アジア全域の脳卒中医療の発展に貢献することが期待されます。

発表論文情報

著者:Beny Rilianto, Tomohide Yoshie, Sohei Yoshimura, Masayuki Shiozawa, Ita Muharram Sari, Reza Arpandy, Syahrul, Adin Nulkhasanah, Mursyid Bustami, Manabu Inoue, Kazunori Toyoda, Masatoshi Koga
題名:Identifying potential improvement areas in stroke care by comparing Indonesia and Japan
掲載誌:Journal of Clinical Neuroscience
DOI:doi.org/10.1016/j.jocn.2026.112030


【報道機関からの問い合わせ先】

国立循環器病研究センター 企画経営部 広報企画室
TEL : 06-6170-1069(21120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

最終更新日:2026年04月24日

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