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発症から24時間以上経過した急性期脳梗塞に対する血管内治療の実態と治療成績
「日本脳卒中データバンク」を用いた最大規模のリアルワールド解析
令和8(2026)年4月2日
国立循環器病研究センター
国立循環器病研究センター脳血管内科 乾 涼磨、田中寛大、豊田一則、古賀政利らは、国内最大の脳卒中登録システム「日本脳卒中データバンク」の2016年から2021年のデータを用い、急性期脳梗塞に対して血管内治療(EVT)を受けた5,862名の患者を対象に、発症から24時間以上経過して来院した症例の実態を調査しました。本研究により、24時間超の患者群は若年で軽症が多く、大血管アテローム硬化症の割合が高いという特有の臨床像を持つことが判明しました。また、適切に選択された患者群では、退院時の機能的転帰が早期治療群に匹敵する良好な成績を収める可能性が示されました。
背景
急性期脳梗塞に対するEVTは、発症から最大24時間以内の有効性が確立されていますが、24時間を超えて来院した患者に対するエビデンスは観察研究等に限られており十分ではありません。24時間を超える症例もEVTの恩恵を受ける可能性がありますが、特に頭蓋内動脈硬化症の有病率が高い日本人集団において、多施設大規模な実態調査はこれまで存在しませんでした。そのため、臨床現場においてどのような患者が治療を受け、どのような転帰をたどるのかを明らかにする必要がありました。
研究成果
「日本脳卒中データバンク」に登録された急性期脳梗塞患者61,829名のうち超遅延期に来院された患者は16,774名に上りました。しかし、このうち実際にEVTを受けたのはわずか326名(実施率1.9%)であり、早期(17.2%)や遅延期(7.1%)と比較して、極めて限定的な患者にのみ適応されている実態が浮き彫りになりました。 本研究では、EVTが実施された5,862名(早期3,988名、遅延期1,548名、超遅延期326名)の臨床像を比較しました。超遅延期群は、早期・遅延期群と比較して年齢が若く、神経学的な重症度が低い傾向にありました。病型においては心原性脳塞栓症が少なく、大血管アテローム硬化症が半数以上(50.6%)を占める特徴的なプロファイルを示しました。 退院時の良好な機能的転帰の達成率は、早期群41.4%、遅延期群35.3%、超遅延期群45.7%であり、超遅延期群でも早期・遅延期群と同等の治療成績を示しました。背景因子を調整した多変量解析では早期群よりも成績が悪化したものの、適切な患者選択がなされた超遅延期に対するEVTは高い有効性を持つ可能性があります。

【今後の展望と課題】
本研究の成果は、現在進行中の発症24時間超の患者を対象とした無作為化比較試験(DONE SYMPLE、LATE-MT、SKIP-EXTENDなど)において、結果を解釈するための重要な指標となります。さらに、アジア人に多い大血管アテローム硬化症など特徴的な背景因子を踏まえ、今後の臨床試験を適切に設計するためのデータとしても貢献することが期待されます。
発表論文情報
著者:Ryoma Inui, Kanta Tanaka, Kazunori Toyoda, Sohei Yoshimura, Kaori Miwa, Tomohide Yoshie, Junji Miyazaki, Toshio Machida, Takashi Tsuzuki, Kenichi Morita, Jin Nakahara, Yoshihiro Miyamoto, Kazuo Minematsu, Masatoshi Koga, Japan Stroke Data Bank Investigators
題名:Endovascular therapy for acute ischemic stroke beyond 24 hours after onset: A nationwide registry-based analysis
掲載誌:Stroke: Vascular and Interventional Neurology
DOI:doi.org/10.1161/SVIN.125.002024
【謝辞】
本研究は日本医療研究開発機構(AMED)、日本学術振興会、および武田科学振興財団の支援を受けて実施されました。
【報道機関からの問い合わせ先】
国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室 水本・間嶋
TEL : 06-6170-1069(21120) MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
最終更新日:2026年04月02日