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7日間の心電図検査で“見逃されていた心房細動”が見つかる
令和8(2026)年3月30日
国立循環器病研究センター
熊本大学
ポイント
- 7日間ホルター心電図の大規模データ解析では、発作性心房細動の中で、発生頻度10%未満の低頻度の心房細動が最も多く認められました。
- 7日間ホルター心電図検査は、従来の短時間モニタリングでは見逃されやすい低頻度の発作性心房細動の検出において高い有用性を示しました。
- 国内最大規模のデータ解析により、心房細動の「発生頻度」と「最長持続時間」の間に強い正の相関関係があることを、日本では初めて学術的に示しました。
概要説明
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也) 心臓血管内科 中辻孝太医師、井上優子特任部長、草野研吾副院長、脳血管内科 古賀政利部長、研究所 心臓再生制御部 望月直樹客員部長、健診部 小久保喜弘特任部長、熊本大学 循環器内科 星山禎特任講師、辻田賢一教授、小川久雄学長、福岡山王病院ハートリズムセンター 熊谷浩一郎センター長、および香川大学 循環器内科 野間貴久准教授らの研究チームは、日本全国1,653医療機関で実施された7日間パッチ型ホルター心電計(Heartnote®、オムロン ヘルスケア株式会社)の大規模データを解析し、心房細動の検出率と発作頻度の関係を明らかにしました。
本研究では、25,000例以上の検査データを解析した結果、心房細動の出現頻度が低い患者ほど、モニタリング期間を延長することで検出率が高まることが明らかとなりました。特に、心房細動の出現頻度が10%未満の患者では、モニタリング期間を7日間に延長することで24時間検査と比較し約2.6倍の心房細動を検出できることが分かりました。また、心房細動の発生頻度と、心房細動の最長持続時間との間には強い相関関係(相関係数=0.79)があることが確認されました。

これらの結果は、長時間の心電図モニタリングが早期診断に重要であることを示しており、脳梗塞などの重篤な合併症の予防に役立つ可能性があります。本研究成果は、2026年3月6日に医学雑誌「Circulation journal」オンライン版に掲載されました。
背景
心房細動*1は脳梗塞や心不全のリスクを高める不整脈であり、近年、高齢化社会にともない患者数は増加しています。発作性心房細動は、持続性心房細動と比較して脳梗塞リスクが変わらないものの、一時的な発生に留まるため、通常の心電図検査や24時間ホルター心電図では検出できない場合があります。より長期間の心電図モニタリングが心房細動の発見に有用であることが知られていますが、心房細動の発生頻度によって検出率がどの程度変化するかについては十分に明らかになっていませんでした。
研究の内容、成果
本研究では、7日間にわたり心電図を連続記録できるパッチ型ホルター心電計*2を使用しました。日本全国の1,653医療機関、25,817件の検査記録を解析し、発作性心房細動が2,289例(8.9%)、持続性心房細動が571例(2.2%)確認されました。解析の結果、以下のことが明らかになりました。
- ① 低頻度の心房細動が多数を占める:発作性心房細動患者の約66%が発生頻度10%未満の低頻度の心房細動でした。
- ② 7日間検査で心房細動の検出率が大きく向上:モニタリング期間を24時間から7日間に延長することにより、発生頻度10%未満の心房細動では、2.57倍に検出率が大きく向上しました。
- ③ 心房細動の発生頻度と最長持続時間は強い相関(相関係数 r=0.79)が認められました。
これらの結果から、脳梗塞や心不全などの重篤な合併症の原因となり得る心房細動の早期発見において、7日間ホルター心電図が重要な役割を果たす可能性が示唆されました。
展開
本研究により、短時間の心電図検査では見逃されやすい低頻度の心房細動を検出するためには、長期間の心電図モニタリングが重要であることが示されました。本研究の結果は、7日間ホルター心電図検査の臨床的価値を示すエビデンスとなり、将来的には心房細動の早期診断や脳梗塞予防の向上につながることが期待されます。
≪参考≫
用語解説
- *1 心房細動:心臓のリズムが乱れる不整脈の一種で、臨床現場で最も多くみられます。脳梗塞や心不全など重篤な合併症を引き起こすことがあり、早期発見が重要です。
- *2 パッチ型ホルター心電計:シール状で体に貼り付けて使用し、1週間にわたり心電図を記録できる装置。従来の24時間ホルター心電計よりも検査の負担が軽いとされています。
論文情報
題名:Seven-Day Holter Monitoring Substantially Improves Detection of Low-Burden Atrial Fibrillation ―Results From a Large Japanese Multicenter Cohort―
著者:Yuko Inoue, Kota Nakatsuji, Koichiro Kumagai, Tadashi Hoshiyama, Kenichi Tsujita, Takahisa Noma, Yoshihiro Kokubo, Masatoshi Koga, Naoki Mochizuki, Hisao Ogawa, Kengo Kusano.
掲載誌:Circulation journal
DOI:10.1253/circj.CJ-25-1126
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/advpub/0/advpub_CJ-25-1126/_html/-char/en
【お問い合わせ先】
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 不整脈科
担当:副院長 草野研吾
電話:0570-012-545
e-mail:kkusano@ncvc.go.jp
最終更新日:2026年03月30日