トピックス
急性期脳内出血患者の血腫増大予測AIモデルを開発
ー脳神経外科専門医不在状況下における標準的な治療方針選択の支援を目指すー
概要
循環器病対策情報センター 飯原 弘二 循環器病対策情報センター長、脳卒中・循環器病次世代医療研究部 渡辺 翔吾、連 乃駿らの研究チームは、日本国内のJ-ASPECT Study参加施設の急性期脳内出血患者の24時間以内の出血増大を予測するAIモデルを開発した。脳神経外科専門医の不在状況下において、非専門医の標準的治療選択を支援することを目的としている。救急搬送時に取得が容易な患者の情報と自動でCT画像から算出したRadiomics特徴量を組み合わせたAIモデルを開発し、その評価を行った。その結果、多施設データを使用した血腫増大予測モデルにおいて、予測精度と解釈性を担保しつつ、救急現場で運用しやすい出血増大予測モデルを開発した。
研究のポイント
- J-ASPECT Study参加協力10施設のデータを用いた急性期脳内出血の血腫増大予測
- 救急搬送時に取得しやすい臨床情報と半自動でCT画像から計算するRadiomics特徴量を組み合わせたAIモデル
- 脳神経外科の専門医不在状況下における治療選択の支援を目指した
背景
急性期脳内出血を発症した患者において、血腫(出血)の増大は患者の予後に大きく影響するため、早期に適切な治療方針を決定することは極めて重要であるが、血腫増大を予測することは難しく、非専門医においては尚困難である。医師の働き改革後の医療体制の安定化と社会全体の労働力不足の補填するためにも、標準的な治療方針の選択を支援できるAIモデルの開発は重要な課題である。本研究では、脳神経外科専門医不在状況下で急性期脳内出血患者が搬送された状況を想定し、そうした状況下でも標準的な治療方針の選択ができるよう支援するAIモデルの開発を行った。
研究成果
日本国内の10施設から後方視的に収集した急性期脳内出血患者452人のデータに基づき、年齢・性別・抗凝固薬服用の有無といった臨床情報と、半自動でCT画像から算出したRadiomics特徴量を組み合わせた、24時間以内の血腫増大予測のためのAIモデルを開発した。AIモデルの予測性能評価では、5分割交差検証を用いて、臨床情報のみのモデル、Radiomics特徴量のみのモデル、両方を組み合わせたモデルの予測精度を比較し、それぞれ平均ROC AUCが0.70、0.73、0.77となり、組み合わせたモデルが最も高い性能を示した。また、本研究で使用した勾配ブースティング決定木モデルは、AIモデルの中でも解釈性が高いという特徴があり、予測結果とともに血腫増大と関連の高い情報を提示することができる。今回開発したAIモデルを元に、将来的に専門医不在状況下における標準的な治療方針選択の支援の実現と救命率の向上が期待される。
発表論文情報
著者:Shogo Watanabe, Nice Ren, Yukihiro Imaoka, Kento Morita, Syoji Kobashi, Nobutaka Mukae, Koichi Arimura, Kunihiro Nishimura, Koji Iihara, J-ASPECT Study collaborators
題名:Clinically applicable machine learning approach to predict intracerebral hematoma expansion
掲載誌:Journal of the American Heart Association
DOI:10.1161/JAHA.125.042387
最終更新日:2026年01月05日