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慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈バルーン形成術の日本国内全体の最新治療成績の登録レジストリー(J-BPA)の結果を2025年AHA(アメリカ心臓学会)Late Breaking Science in Featured Science Sessionでの発表と論文同時掲載

概要

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する新しい治療である肺動脈バルーン形成術(BPA)はこの10年国内で急速に増加してきているが、日本全体での治療実態や有効性、安全性の成績は不明である。そのため日本全体を対象とした前向き多施設共同BPAレジストリ(J-BPA)が施行された。全国44施設でCTEPH患者1202例に総計5207件のBPAが実施され、症状・臨床パラメータ・血行動態を有意に改善し、周術期BPA関連死亡率は0.2%と低値であった。全患者の3年生存率は94.7%と良好であった。高治療数施設群と低治療数施設群の比較では、BPAの効果は同等であったが、高治療数施設では重篤な合併症は有意に低く、死亡リスクの低減が認められた。本研究は日本におけるCTEPHに対する最新のBPAの良好な治療成績と高い安全性を示した。BPAが高実績病院においてより安全である可能性を示唆している。

研究のポイント

  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する肺動脈バルーン形成術(BPA)の日本全体を対象とした初めての前向き多施設共同BPAレジストリ研究。
  • 日本全国44施設、CTEPH患者1202例の世界最大規模の最新のBPA治療実態の調査が行われ、日本国内全体での良好な効果と高い安全性、良好な予後が示された。
  • 高治療数施設群と低治療数施設群の比較では、BPAの効果は同等であったが、高治療数施設では重篤な合併症は有意に低く、死亡リスクの低減が認められた。BPAが高実績病院においてより安全である可能性が示唆された。

背景

 これまで慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する肺動脈バルーン形成術(BPA)は、高症例数の専門病院において手技の洗練化により成績が向上し、国内、海外での治療が増加してきている。しかし、専門性の高い疾患、治療であり、少ない症例数の病院でBPAの成績に関しての懸念がある。日本BPAレジストリは、低治療症例数の病院を含む全国的な視点から最新のBPAの成績を評価するために設計された。

研究成果

 5年間で1202人のCTEPH患者に総計5207件のBPA治療が実施された。低症例数病院35施設(79.5%)が全BPA症例の40.8%を実施していた。BPAは症状・臨床パラメータ・血行動態(肺血管抵抗55.6%減少)を有意に改善し、周術期BPA関連死亡率は0.2%と低値であった。重篤な肺損傷、バルーン過拡張、人工呼吸管理(0.3%)は、低実績施設と比較して高実績施設で有意に低頻度であった(P<0.001)。カプラン・マイヤー解析では、全患者の3年生存率は94.7%であった。多変量Cox回帰分析では、右心房圧の上昇に伴い死亡リスクが増加し、高治療数病院では死亡リスクの低減が認められた。高治療数施設群と低治療数施設群の比較では、BPAの効果は同等であったが、高治療数施設では重篤な合併症は有意に低く、死亡リスクの低減が認められた。本研究は日本におけるCTEPHに対する最新のBPAの良好な治療成績と高い安全性を示した。BPAが高治療数病院においてより安全である可能性を示唆している。

発表論文情報

著者:大郷 剛
題名:Balloon Pulmonary Angioplasty for Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension: A Nationwide Prospective Multicenter Registry in Japan (J-BPA)
掲載誌:Circulation: Cardiovascular Intervention
DOI:10.1161/CIRCINTERVENTIONS.125.016172

最終更新日:2025年11月12日

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