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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2011年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2011年 研究活動概要

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・画像診断学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。

2011年は、峰松副院長(前部長)の助言と後援を受けながら、豊田部長体制での2年目を迎えた。上原が12月に脳血管リハビリテーション医長に就き、従来の病棟医長と兼務することになった。横田外来医長、古賀脳卒中集中治療科医長との3人医長で脳血管内科、Stroke Care Unit (SCU)、脳血管リハビリテーションの運営を牽引し、研究開発基盤センター先進医療・治験推進部長である山本の後援を受けた。またスタッフ医師の有廣、宮下、鈴木に加えて、4月に尾原が、10月に佐藤が着任した。4月に6名の新人レジデント(岡田・黒沼・坂本・下村・田中・小林)を迎えた。また国内外から多くの研修者を受け入れ、とくに北京の中日友好病院からLiu Wei医師、Wei Kun医師の2名の女性医師が合流した。

年初の慶事として峰松副院長が、脳血管障害医学分野での卓越した国内外の研究者1名に毎年贈られる公益信託美原脳血管障害研究振興基金「美原賞」を、「治療可能時間の延長と治療効果の飛躍的改善を目指した脳血行再開療法の開発」という研究課題で受賞した。国難の年であった2011年を脳血管内科が何とか無事に切り抜ける、大きな弾みとなった。内外の様々な出来事の中で、年の前半はやはり東日本の震災を避けて語ることはできない。仙台出身のレジデントである遠藤を、震災直後に診療支援に派遣し、当施設全体での支援対策にも科として可能な範囲で協力した。後半は2012年1月に迫った電子カルテによる新医療情報システムJUNHISの院内導入に向けて、やはり現場の事情に精通したレジデントたちが力を発揮し、藤並を中心に診療科を超えた導入準備作業に力を注いだ。

多施設共同研究は、脳血管内科が長年とくに重視してきた、研究の主軸である。2011年は、豊田が主宰する二研究が、新たに始まった。一つは厚生労働科学研究「急性期脳卒中への内科複合治療の確立に関する研究」で、脳卒中内科治療の根幹を成す血栓止血学治療と危険因子管理を組み合わせた効果的な治療法確立を目指して研究を始めた。もう一つは循環器病研究開発費「脳血管領域における国際共同臨床試験の企画・運営のための基盤整備」で、国際レベルの脳卒中臨床研究を国内で進める上での、当施設の統括・調整機能の強化を目指して研究を始めた。また、峰松副院長が主宰する厚生労働科学研究「一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究」が第三年度を、循環器病研究開発費「新しい脳卒中医療の開拓と均てん化のためのシステム構築に関する研究」が第二年度を迎え、研究成果を情報発信した。豊田が主宰する厚生労働科学研究「わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究(The Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement Study: SAMURAI)」が終了したが、研究課題の幾つかは「急性期脳卒中への内科複合治療の確立に関する研究」に持ち越された。他にも多くの研究に主要分担研究者として参加した。

「脳血管領域における国際共同臨床試験の企画・運営のための基盤整備」のモデル事業として、NIH助成を受けた国際多施設共同第Ⅲ相試験Antihypertensive Treatment for Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH) IIの国内多施設参加に向けて、日本側主任研究者である豊田・山本を中心に会議を重ねた。国際共同研究TIA Registryにも、継続して参加した。

当科の主要な研究主題である超急性期脳梗塞治療法に関して、rt-PA静注療法の治療成績向上に取り組み、2010年より脳神経内科・脳神経外科と協力して始めた急性期脳血管治療のチーム医療体制強化に努めた。新たな血栓溶解薬や抗血栓薬の開発に、治験の中核施設として加わった。その他、上述した一過性脳虚血発作や均霑化をはじめとする多くの研究に、精力的に取り組んだ。研究成果の英語論文化を徹底させた。

学会活動では、6月に峰松が第10回日本頸部脳血管治療学会を主宰し、多くの参会者を得た。豊田が、European Stroke Conferenceの学術委員に指名された。科内の多くのメンバーが、招請講演やシンポジウム発表をはじめ、国内外の多くの学会で研究成果を発表した。

2011年の脳血管リハビリテーション科は、上原脳血管リハビリテーション科医長が就任し、理学療法士2名、作業療法士1名、言語聴覚士1名が増員されセラピスト計15名体制になった。治療実績は、総実施単位数が48,000単位(前年比20%増)、総依頼件数が1500件超と、ともに過去最高であった。また、早期リハビリテーションの有効性を踏まえた上で、発症後早期のリハビリテーションオーダーを推進し、超早期から介入することによりリハビリテーションの治療成績向上に努めた。脳血管部門において多職種合同リハビリテーションカンファレンスを毎週開催し、チーム医療を実践してきた。脳卒中均てん化班のセラピストを対象とした全国意識調査の解析結果を日本脳卒中学会などで発表した。第23回大阪府理学療法士会学術大会(2011年7月10日、大阪国際会議場)の大会長を尾谷理学療法士長が務めた。

 

【主な研究成果】

  • 峰松副院長の公益信託美原脳血管障害研究振興基金「美原賞」受賞
  • 第10回日本頸部脳血管治療学会の主宰(峰松会長)
  • 第23回大阪府理学療法士会学術大会の主宰(尾谷)
  • 上記の多くの多施設共同研究における研究遂行、成果発表
  • ATACH II国内研究者会議の主宰
  • 単施設研究、多施設共同研究の成果を、若手が主体となって精力的に英語原著論文化(研究業績リスト参照)
  • International Stroke Conference 2011 (Los Angeles)、20th European Stroke Conference, (Hamburg)を中心に、多くの国際学会での招請講演、一般演題発表
  • 日本蘇生協議会蘇生ガイドライン作成への参加 (豊田)
  • 英語原著論文査読 100編超
  • 施設全体で取り組んだ震災支援、新医療情報システム導入への協力
  • 上原医長の脳リハビリテーション科医長就任に伴う脳血管リハビリテーションの体制強化

最終更新日:2021年10月08日

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