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小児心臓外科

対象疾患・治療法
無脾症(Asplenia)・多脾症(Polysplenia)・内臓錯位(Heterotaxy)

無脾症(Asplenia)・多脾症(Polysplenia)・内臓錯位(Heterotaxy)

人間の内臓は完全に左右対称ではありません。たとえば胃や脾臓は左側に、肝臓は右側にあります。心臓の構造も右心房・右心室と、左心房、左心室がそれぞれ別の働きをしています。無脾症・多脾症とは、左右非対称であるはずの内臓が一部左右同じになって生じる、多彩な病気です。
単心室、共通房室弁、大血管転位、両大血管右室起始、肺動脈狭窄又は閉鎖などの重篤な心奇形を高率に合併します。


無脾症(Asplenia, Right Isomerism)
両側心耳が右房形態

多脾症(Polysplenia, Left Isomerism)
両側心耳が左房形態


背景

無脾症・多脾症とは、左右非対称であるはずの内臓が一部左右同じになって生じる、多彩な病気です。脾臓は本来おなかの左側に位置する臓器ですが、多脾症では左側にあるものが両側に、無脾症では右側にあるものが両側に出現します。そこで多脾症のことは左側相同、無脾症は右側相同と呼ばれたりします。両者をあわせて内臓錯位と呼ぶこともあります。心臓の構造も左右対称ではなく、右心房・右心室と左心房・左心室は別の働きをしているため、無脾症・多脾症では80%以上の場合なんらかの先天性心疾患を合併しています。

症状、経過

無脾症、多脾症は非常に多彩な疾患です。先天性心疾患を合併している場合、多くは新生児期にチアノ-ゼもしくは心不全症状(息が速い、脈が速い、ミルクの飲みが悪い)を呈してきますが、なかには乳幼児期を過ぎてから症状を呈してくる場合もあります。また先天性胆道閉鎖症、腸回転異常といった腹部臓器の病気が先にみつかる場合もあります。脾臓は病原菌から体を守る免疫に関与しているため、無脾症では免疫機能の低下から感染症、敗血症を来たしやすく、注意が必要です。

血行動態(血液の流れ)

無脾症、多脾症に合併する心疾患として頻度の高いものは、左上大静脈遺残、下大静脈欠損、肺静脈還流異常、心房中隔欠損、単心房、単心室、心室中隔欠損、房室中隔欠損(共通房室弁)、両大血管右室起始症、大血管転位症、肺動脈狭窄ないし閉鎖などです。合併する心疾患はこれらのどれかひとつないし複数の組み合わせで生じ、それによる血行動態も様々です。

診断

合併する心疾患の診断は心臓超音波検査で可能です。腹部臓器の位置診断は超音波検査、CT、MRIなどにより可能です。また無脾症では、血液検査でHowell-Jolly小体とよばれる特徴的な赤血球がみつかります。

治療

総肺静脈還流異常症で肺静脈閉塞を来しているものや、肺動脈閉鎖を伴い動脈管開存に依存しているものは新生児期早期より手術が必要となります。長期的に成長可能な状態とするために段階的な(複数回の)手術を要する場合もあります。ポンプ機能を果たせる心室がひとつしかない場合には機能的修復(Fontan 手術)をめざした治療計画が必要です。心室が2つあっても、房室弁の形態や心室中隔欠損の位置などにより分割がむずかしい場合もあります。
無脾症においては、免疫力の低下を伴いますので、なんらかの外科治療に際しては抗生物質の予防的投与を行います。

治療後経過

病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々になります。外科的修復を終え、心臓内の短絡やチアノ-ゼのない状態に至れば、長期的な成長発育が可能です。

最終更新日:2021年10月08日

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