メニュー

小児心臓外科

対象疾患・治療法
修正大血管転位(corrected TGA)

心修正大血管転位(corrected TGA)

背景

心修正大血管転位(corrected TGA)

左右の心房と心室の関係が入れ替わり、さらに心室と出口の大血管の関係が入れ替わっているために、血液の流れが右心房→左心室→肺動脈→肺静脈→左心房→右心室→大動脈となっている比較的稀な先天性心疾患です。体から還ってきた静脈血が肺へ送られ、肺から還ってきた動脈血が全身に送られるので血液の流れは修正されているため、修正大血管転位と呼ばれます。心室中隔欠損、肺動脈狭窄や不整脈などを他の心疾患を合併することが多く、それにより重症度に差があります。


症状、経過

生後1ヶ月以内に心不全症状を来すものから、80才まで天寿を全うするものまで、症状・経過は個々の症例により様々です。症状の出現時期や重症度は、合併する心疾患の種類、程度によって決まってきます。心室中隔欠損を合併し、肺動脈狭窄が無いものは症状出現が早く、乳児期早期に心不全症状を来します。三尖弁閉鎖不全を来すものは幼児期以降に運動時息切れを来します。心室中隔欠損と肺動脈狭窄を合併するものは、チアノ-ゼを呈します。心室中隔欠損や肺動脈狭窄の合併のないものでは成人期まで症状なく経過し、健康診断等で心電図異常、房室ブロックなどの不整脈から息切れや意識消失発作を来たしてみつかる場合もあります。

血行動態(血液の流れ)

修正大血管転位症では、左心室が肺に血液を送り出し、右心室が体に血液を送り出します。ここでいう左心室とは体の右側にあっても左心室と呼ばれます。それはなぜかというと、左心室と右心室では入り口の弁の形や心室の壁の筋肉の構造などが違うからなのです。左心室の入り口の弁は僧帽弁といって2枚の弁からなり、右心室の入り口の弁は三尖弁といって3枚の弁でできています。三尖弁はつくりも華奢にできているので体の血圧に対抗しにくいため、修正大血管転位症では三尖弁逆流を来たしやすいのです。修正大血管転位症における三尖弁逆流とは通常の心臓の僧帽弁逆流に相当するものです。

診断

聴診所見、胸部X線検査、心電図といった健康診断で通常行われる検査で心疾患が疑われた場合、循環器を専門にしている医療機関で心臓超音波検査を受ければ確定診断がつきます。いろいろな不整脈を合併していることが多いので、24時間心電図や負荷心電図なども必要です。手術治療が考慮される場合には心臓カテーテル検査でさらに詳しく冠動脈、三尖弁、肺動脈弁の形態や他の合併疾患を調べることがあります。

治療

合併する心疾患によっては、手術治療が必要な場合があります。特に小児期にチアノ-ゼ、心不全を呈する場合は手術により、その後の成長、QOLの改善が見込まれます。症例によっては、心房内血流転換術と動脈スイッチ手術を組み合わせたダブルスィッチ手術を行うことで、より長期に良好な心機能が期待できる場合もあります。当センターでは25年以上前からダブルスイッチ手術を導入し遠隔期のQOLの改善、心不全の予防を図ってきました。しかしながらどの修正大血管転位症の患者にでもダブルスイッチ手術が適応になるわけではなく、またそのための準備手術も数回にわたることがしばしばあります。成人期の心不全症状に対しては内科的治療が第一となりますが、三尖弁逆流が進行してきた場合は外科治療も考慮します。また完全房室ブロックで徐脈による運動時息切れ、意識消失発作などの既往があれば、ペースメーカー治療を考慮します。動悸発作など脈が速くなる頻脈性不整脈には、抗不整脈薬やカテーテル治療が考慮されます。

治療後経過

病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々になります。成人期に達した患者さんでは成人先天性心疾患を取り扱う循環器科の定期受診が望ましいでしょう。

最終更新日:2021年10月08日

設定メニュー