メニュー

小児心臓外科

対象疾患・治療法
総肺静脈還流異常症(TAPVC)

総肺静脈還流異常症(TAPVC)

すべての肺静脈が、左心房には還らずに、上大静脈、門脈、右心房など体静脈に還流している先天性心疾患です。多くの場合新生児、乳児期早期よりチアノ-ゼ、心不全を来します。肺静脈が体静脈に合流する部位が狭くなっているものは、より重症で、早期の外科治療が必要です。


Ⅰ型
上心臓型

Ⅱ型
心臓型

Ⅲ型
下心臓型

背景

総肺静脈還流異常症とは、肺からの赤い血が還っていく経路である肺静脈すべてが、本来還るべき左心房ではなく、体静脈に還流している病気です。肺静脈がつながっている体静脈の場所によって、上大静脈を通じて還る上心臓型と、肺静脈が右心房へ還る旁心臓型、肺動脈が門脈(肝臓の入り口の血管)を通じて還る下心臓型、などに分類されます。

症状、経過

多くの場合新生児、乳児期早期よりチアノ-ゼ、心不全を来します。すなわち呼吸が速い、呼吸がしんどそう、ぜろぜろいいやすい。脈が速い、ミルクの飲みがわるいなどです。肺静脈が体静脈に合流する部位が狭くなっている(肺静脈狭窄)ものは、より重症で生後1、2日目よりチアノ-ゼ、多呼吸、頻脈を来たします。放置すれば多くは生後1週ないし1ヶ月以内に死亡するため、より早期の外科治療が必要となります。

血行動態(血液の流れ)

肺から還ってきた真っ赤な血と、全身から還ってきた黒っぽい血が右心房で混ざりあった状態になります。そのうち一部が心房中隔欠損を通って左心房に流れ込み全身に送られ、残りは右心室を経由して肺に送られます。右心房→右心室→肺動脈→肺静脈→右心房と血液のぐるぐる周りができるので肺血流の多い状態になり、乳児期早期から心不全をきたします。またこの病気には肺静脈の狭窄を伴う場合が多く、肺静脈狭窄を来していると肺で血液が欝滞(うったい)する肺うっ血を起こすため、十分な酸素の取り込みができなくなりより重篤な状態になります。

診断

心臓超音波検査で診断が確定します。胸部X線検査では心臓の影が拡大したり、また肺静脈狭窄をきたしていると肺うっ血の影が出ます。手術に際しては、肺動脈から肺静脈造影を行い、手術術式を詳細に検討します。

治療

治療には人工心肺装置をもちいて心臓を直す開心術が必要です。手術前の状態が非常に重篤な場合には、ECMOとよばれる人工心肺装置を緊急的にとりつける場合もあります。
手術では、上心臓型や下心臓型の場合は肺静脈が合流してひとつになったところを左心房に縫いつけて直します。肺静脈が右心房に合流している旁心臓型の場合は心房中隔欠損を通じて左心房に流入するように右心房内にしきりをつけて直します。

治療後経過

手術直後は、人工心肺の影響などから、一時的に肺高血圧の増悪を来す場合もあり注意が必要です。一酸化窒素といって肺動脈の血圧を下げるガスの吸入を必要とする場合もあります。手術を乗り切った後、最初の数週間ないし数ヶ月以内に肺静脈を左心房に吻合したところや、肺静脈の血管そのものが狭くなって、肺静脈狭窄を来すことがあり注意が必要です。これらを乗り切れば、長期的には多くの場合は正常児に近い発育発達が見込まれます。肺高血圧が残存したり、不整脈を合併する場合、は何らかの内服治療の継続が必要な場合があります。

最終更新日:2021年10月08日

設定メニュー