糖尿病・脂質代謝内科
対象疾患・治療法
脂質異常症
脂質異常症
1)脂質異常症とは?
血液中には脂質として、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類があります。コレステロールは人の細胞膜や、消化吸収に必要な胆汁酸、ホルモンのもととなる重要な物質です。中性脂肪は、エネルギーとして貯蔵したり、保温、外部からの衝撃を和らげたり、内臓を固定したりして、体内で重要な役割を果たしています。しかしながら、これらの脂質が多すぎると問題になってくる場合があります。脂質異常症というのは、これらの脂質の中でも特に、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多過ぎる、あるいは善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる、などの状態を示す病気のことです。図のように、悪玉(LDL)コレステロールは、余分なコレステロールを血管の壁に沈着させ、動脈硬化を起こしますが、善玉(HDL)コレステロールは逆にその血管内にたまったコレステロールを肝臓へ戻すように働きます。
2)脂質異常症と動脈硬化
血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、血管壁に余分な脂が沈着し、プラーク(粥腫)と呼ばれる塊が作られます。これらの余分な脂は比較的短期間で血管壁にたまるため、柔らかくて壊れやすいものですが、時間の経過とともに血管の壁がどんどん分厚くなって、血管がつまりやすい状態になります。このような、血管の壁の変化を「粥状動脈硬化」と呼んでいます(図2A)。
不安定なプラークが破れると破れた部分を修復するため、血液の成分の一つである血小板が集まり血栓ができます(図2B)。
この血栓が大きくなって動脈を塞いでしまうと血液はその先に流れなくなり、血流の途絶えた組織や臓器は壊死します。
このような動脈硬化は全身に起こります。脳動脈に閉塞・狭窄が起こると脳梗塞や一過性脳虚血を発症し、心臓の冠動脈に閉塞・狭窄が起こると心筋梗塞や狭心症発症します。また、下肢の動脈が狭窄・閉塞すると急性動脈閉塞症や下肢閉塞性動脈硬化症を発症します。
3)脂質異常症の治療目標値
脂質異常症は、症状がなくでもじわじわ血管の中で動脈硬化を進め、突然心筋梗塞や、狭心症、脳梗塞などを発症させる怖い病気です。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022では、動脈硬化性疾患の絶対リスクをスコア表や疾患保有の有無により評価し、それぞれの人に合わせた動脈硬化性疾患の予防のための管理目標値を定めています。(表2参照)
・虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)またはアテローム性血栓性脳梗塞(明らかなアテロームを伴うその他の脳梗塞も含む)の既往がある場合は、二次予防(疾患の再発予防)の区分に該当します。
・動脈硬化性疾患のリスクとなる糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)のいずれかを合併する場合は、高リスクに該当します。
・上記の疾患を持たない方については、久山町スコアによる絶対リスク評価(年齢、性別、血圧、脂質、喫煙有無、耐糖能異常有無などによるフローチャートを用いたもの)によりリスクを判断します。10年間の動脈硬化性疾患の発症リスク2%未満を低リスク、2~10%未満を中等度リスク、10%以上を高リスクの管理区分とされ、それぞれ目標値が設定されています(表2)。
このように動脈硬化性疾患のリスクは様々です。
脂質の管理目標値も個人により異なりますので、ご自身の目標値がわからない方は、担当の先生に相談してみてください。
*1 総コレステロールからHDLコレステロールを引いたもの
*2 疾患(動脈硬化性疾患)にならないための予防
*3 疾患(動脈硬化性疾患)を発症したことのある患者さんが再発しないための予防
*4 糖尿病において、末梢動脈硬化疾患、細小血管症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害)合併時、また喫煙ありの場合に考慮する
*5 急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の4病態のいずれかを合併するときに考慮する
*6 10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などのカロリーのない水分の摂取は可とする。それ以外の条件を「随時」とする
*7 頭蓋内外動脈の50%以上の狭窄、または弓部大動脈粥腫(最大4㎜以上)
4)家族性高コレステロール血症 Familial Hypercholesterolemia(FH)について
LDLコレステロールが高く、早期に心臓の血管に動脈硬化を起こす遺伝性の疾患です。詳しくは下記のページをご参照ください。
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/genome/genomesupport/fhyperchol/
5)治療法は生活習慣の改善から
最終更新日:2024年05月24日