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患者の皆様へ

糖尿病

 

糖尿病について

糖尿病は、発症初期は食後高血糖のみで自覚症状が乏しい場合がありますが、高血糖がずっと続くと、口渇、多飲、多尿、体重減少といった症状(図1)が現れます。

高血糖を放置して全身の血管が障害されると、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、透析、失明、足壊疽といった合併症(図2)が起こるとされていますが、実際には合併症は自覚症状の乏しい食後高血糖の時期から、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)を含めた血管死亡リスクが高くなることがわかってきました。(図3)
また近年では、糖尿病が認知症と関係があることが明らかとなっています。

<糖尿病の分類>
糖尿病には、インスリンを分泌する膵臓が障害されて、インスリンが出なくなる1型糖尿病(図4)と、食べすぎや運動不足、肥満、加齢によりインスリン抵抗性、インスリン分泌とも関係して血糖が上昇する2型糖尿病(図5,6)があります。
また膵臓癌などの悪性腫瘍や、甲状腺ホルモン異常などの内分泌疾患により糖尿病を発症することもあります。
そのため、どのタイプの糖尿病かを検査し、治療を進めていく必要があります。

<当院で行う検査>
①合併症の検査(入院前・入院中に行います)
〇冠動脈CTや心筋SPECT、心エコー:狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や心臓弁膜症などの病気の合併の検査
〇頚動脈エコー:脳梗塞の発症リスクとなる頚動脈プラーク、頚動脈狭窄の検査
〇血液検査や腹部CT、腹部エコー:悪性腫瘍や内分泌疾患のスクリーニング

②入院中の検査
〇インスリン分泌能の評価:入食前・食後の血液検査や、24時間蓄尿検査でインスリンの分泌量を測定します。
〇副作用の評価:開始した治療薬で副作用がないかを調べます。
〇持続血糖測定:近年、持続血糖モニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)の機器が開発され、測定電極を装着することにより、夜間・早朝など実際に採血して血糖を測定しないときでも血糖値を確認できるようになりました。(図7)

<治療について>
①食事療法
入院後は、患者さんの身長や体重、年齢をもとに計算した食事を摂取して頂きます。どの程度の量やバランスが適正なのか、実際に食べて体感してください。
また栄養士による個別栄養指導もありますので、ご家庭での食事の改善すべき点や取り組み目標を確認して頂けます。なお、栄養指導を受ける際は、実際に食事を調理される方に同席をお願いしています。

②運動療法
運動療法開始前に心臓疾患を患っていないかを運動負荷検査にて検査を行います。検査に異常がなければ、リハビリ担当の医師や看護師、健康運動指導士の指導のもと、適切な運動強度、運動時間を確認しつつ、リハビリを実践して頂いています。
杖歩行など足腰の筋力が低下している方でも、理学療法士の指導のもとで、個別メニューのリハビリを行っています。

③薬物療法
入院中に行った検査で、インスリンがたくさん分泌されていて、インスリン抵抗性が高いと考えられた場合は、インスリン抵抗性改善薬をはじめとする経口血糖降下薬による治療から開始します。(図8)

近年では、体重減少作用のある糖尿病薬も開発されており、糖尿病に肥満が大きく影響していると考えられる場合には、尿にブドウ糖を排泄させるSGLT2阻害薬や、消化管の運動を緩やかにするGLP-1受容体作動薬などの薬剤を使用することもあります。
SGLT2阻害薬は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や心不全のある患者さんでは生命予後を改善するとの報告があり、心疾患を合併した糖尿病患者さんには積極的に使用しています。
GLP-1受容体作動薬は、欧米では肥満症治療薬として使用されており、インスリン分泌促進、体重減少作用のほかにも、膵保護作用、心保護作用、脂肪細胞減少作用といった様々な効果が報告されています。
一方、インスリン分泌能が低下している場合には、インスリン分泌促進薬やGLP-1受容体作動薬、インスリン注射を行います。
GLP-1受容体作動薬、インスリン注射の治療を早期から開始することで、インスリンを分泌する力が低下する速度を緩やかにすることができると言われています。

心理士面談
スムーズな治療をサポートするために公認心理師によるカウンセリングを行っています。

糖尿病治療では、食事や運動の生活習慣を健康なものにしていくことが重要です。これは頭では分かっていてもなかなか実行が難しいものです。なぜなら、そこにはひとの行動の原理が関係しているからです。例えば、入院中は健康的な食事で満足できたとしても、退院して仕事が忙しくなれば、隙間時間で高カロリーのものを食べたり、疲れを食べ物で発散したりしてしまいがちです。このように、人は遠い将来の健康よりも、目の前にある欲求を優先する行動をとる傾向にあります(図9)。

そのため、根性論で治療に取り組むのではなく、行動の原理を活用して無理のない環境を設定することが大切です。心理面談では、お一人お一人に合った続けやすい生活習慣を一緒に探して、スムーズな治療を実現していきます。
また、糖尿病治療は長期に渡ることが多いため、治療への不安、職場での病気の伝え方など、さまざまな悩みや気持ちの変化が生じるものです。心理面談では、一緒に気持ちを整理し解決方法を考えていきます。

⑤多職種カンファレンス
『はじめて糖尿病と言われて・・・』、『インスリン注射が必要と言われて・・・』、『減量を試みるが、リバウンドしていまい・・・』、『合併症で腎機能障害を指摘されて・・・』、など患者さんは様々な状況で糖尿病、肥満症などの生活習慣病で病院を受診されます。医学的には、食事療法・運動療法および薬物療法での血糖・体重の適正化ですが、患者さんを取り巻く社会や環境の中で上手くいかないことがあります。
多職種カンファレンスは、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、心理士のチームで毎週行います。それぞれの立場から、患者さんの生活習慣の問題点・改善点について意見を持ち寄りサポートにつなげます。患者さんだけでなく、患者さんをケアする家族へのサポートも大切にしています。医療者のみでなく、心理士の視点より患者さんの気持ちや行動における問題解決のきっかけや出口の見つけ方をサポートします。
多職種でのチームでカンファレンスを行うことで、個々の患者さんにテーラーメイドの治療を提供し、患者さんのQOL(生活の質)が豊かになるように一緒に考えます。

↑多職種カンファレンスの様子

 

 

最終更新日:2022年10月14日

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