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脳血管内科・脳神経内科

SAMURAI研究の紹介

SAMURAI研究ロゴ(L)

1. 平成21年度の研究成果

【研究目的】

脳卒中はわが国の国民病であり、その征圧は喫緊の課題である。慢性期再発予防治療のエビデンスが欧米を中心に集積されつつあるが、日本人は病型内訳や好発部位などの脳卒中の特質や、至適薬物投与量などが欧米人と異なり、独自の再発予防法を確立する必要がある。とくに超急性期から急性期は治療介入による転帰改善効果がもっとも期待される時期であるが、同時期の危険因子管理の意義は国内外のいずれにおいても明らかでない。本研究では、国内各地域を代表する脳卒中基幹10施設を選んで3年間の多施設共同研究を行い、超急性期からの危険因子管理・抗血栓療法の有効性と安全性を検証する。具体的には、下記の2つの多施設共同研究を中心に研究を進める。

【特色】

低用量rt-PA静注療法はわが国独自の治療法で、承認後の実臨床での成績が解明されていない。降圧療法は脳出血超急性期治療として期待されるが、明確なエビデンスを欠く。その他の急性期危険因子管理が再発予防に及ぼす影響も明らかでない。これらの課題を解決する。

【期待される効果】

国民病である脳卒中の征圧への貢献。真に日本人に有用な再発予防法として、ガイドライン作成に寄与。国際共同研究にわが国の施設が参加する端緒となる、など。

【研究計画と平成21年度の成果】

[1] rt-PA患者登録研究

低用量rt-PA静注療法の治療成績を明らかにし、背景にある危険因子やその急性期管理、発症前や急性期の抗血栓療法が治療成績に及ぼす影響を解明する。rt-PA治療を受けた600例の臨床データを登録、解析し、その全体成績をStroke誌(発表論文1)に発表した。各危険因子と治療成績の関連を調べた研究7題がInternational Stroke Conference(2010年2月)での発表演題に採択され、さらに多数の層別解析が進行中である。関連研究として、rt-PA治療国内認可後の主幹脳動脈閉塞を伴う脳梗塞患者の治療実態に関する調査への参加を要請され、循委20公-2班(坂井信幸班長)と当班で1,176例を登録・解析した。結果の一部を日本脳神経血管内治療学会で坂井班長が報告し、全体成績を日本脳卒中学会(2010年4月)などで報告予定である。

[2] 超急性期脳出血への降圧療法に関する研究

日本人に多い脳出血の超急性期治療として効果が期待される降圧療法に関して、日本人に適した降圧手段や降圧目標を明らかにする。本主題の現状把握を目的に、全国アンケート調査を行い、解析結果をHypertens Res誌(発表論文2)に発表した。とくに添付文書上で急性期脳出血への使用が制限されているニカルジピンが84%の施設で使われている現状を明らかにし、前年度に引き続き脳卒中学会を介して、添付文書改定意見を厚生労働省に提出中である。上記のアンケート調査で国内多数施設が行っていたニカルジピン静注を用いた収縮期血圧140~160mmHgないしそれ以下への降圧の安全性・有効性を検討するため、研究参加10施設で前向き観察研究を始めた。2009年11月現在で31例が登録され、主要評価項目である72時間後の症状進行、24時間以内の降圧薬中止を要する副作用はともに0%と、既往文献から算出した予測値を上回る成績を示している。関連研究として、心房細動患者の脳出血発症後の抗凝固療法再開について全国アンケート調査を行い、結果を日本脳卒中学会などで報告予定である。米国で本主題への多施設共同介入試験Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage 2(ATACH2)を企画するミネソタ大学Qureshi教授らと連携を取り、ATACH2への日米共同参加を検討中である。

2. 平成20年度までの研究成果

[1] rt-PA患者登録研究

国立循環器病センターでのパイロット登録研究(発表論文3)結果に基づき、研究参加10施設でrt-PA治療を受けた600例の臨床データを登録し、解析を始めた。

[2] 超急性期脳出血への降圧療法に関する研究

国立循環器病センターとNHO九州医療センターでのパイロット登録研究(発表論文4)結果に基づき、本主題に関する全国アンケート調査を行い、結果を解析した。この結果に基づき、脳卒中学会、脳外科学会、高血圧学会の3学会を介して、ニカルジピン添付文書改定意見を厚生労働省に提出した。Qureshi教授らと日米共同研究を模索し、複数回の研究打ち合わせや合同会議を行った。

3. 研究成果の意義および今後の発展

[1] rt-PA患者登録研究

全体成績(発表論文1)でわが国の低用量rt-PA静注療法が欧米の市販後調査と同等以上の治療成績を収めていることを明らかにした。サブ解析で糸球体濾過量低下などの非古典的危険因子や拡散強調画像における広範な早期虚血所見などが治療成績に影響することを解明した。発表論文に対して海外からletterを受けるなど、本治療への国際的な関心の高さがうかがえた。H22年度は多数のサブ解析研究を国際学会で発表予定であり、これらの英語論文化を急ぐ。rt-PA療法の至適治療手段を国際的に見直すための契機となることを期待する。

[2] 超急性期脳出血への降圧療法に関する研究

国内外のガイドラインに載る明確なエビデンス作りを目指す。本治療に関するガイドラインや能書の記載と実臨床との乖離を是正する。H22年度は観察研究を完遂し、わが国の実臨床での治療内容の安全性を示したい。本研究班の成果をもとに、近い将来の日米共同介入試験を実現させる。心房細動患者の脳出血発症後の抗凝固療法再開に関する観察研究を行い、エビデンス構築に寄与したい。

4. 倫理面への配慮

研究対象者の人権擁護、個人情報保護に最大限配慮する。

SAMURAI研究グループ

5. 発表論文集

  1. Toyoda K, Koga M, Naganuma M, et al for Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement (SAMURAI) Study Investigators. Routine use of intravenous low-dose rt-PA in Japanese patients: general outcomes and prognostic factors from the SAMURAI register. Stroke, 2009;40:3591-3595
    [rt-PA患者登録研究の全体成績]
  2. Koga M, Toyoda K, Naganuma M, et al for the Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement (SAMURAI) Study Investigators. Nationwide survey of antihypertensive treatment for acute intracerebral hemorrhage in Japan. Hypertens Res 2009;32:759-764
    [超急性期脳出血への降圧療法に関する研究における全国アンケート調査成績]
  3. Nakashima T, Toyoda K, Koga M, et al. Arterial occlusion sites on MRA influence the efficacy of intravenous low-dose (0.6 mg/kg) alteplase therapy for ischemic stroke. Int J Stroke 2009;4:425-431
    [rt-PA患者登録研究のパイロット研究]
  4. Itabashi R, Toyoda K, Yasaka M, Kuwashiro T, Nakagaki H, Miyashita F, Okada Y, et al. The impact of hyperacute blood pressure lowering on the early clinical outcome following intracerebral hemorrhage. J Hypertens 2008;26:2016-2021
    [超急性期脳出血への降圧療法に関する研究のパイロット研究]

6. 研究組織

研究者名 所属施設
(主任研究者)
豊田 一則

(分担研究者)
苅尾 七臣

中川原譲二

古井 英介

塩川 芳昭

長谷川泰弘

奥田 聡

山上 宏

木村 和美

岡田 靖

古賀 政利

永沼 雅基

国立循環器病センター 内科脳血管部門


自治医科大学 循環器内科

中村記念病院 脳神経外科

財団法人広南会 広南病院 脳血管内科

杏林大学 脳神経外科

聖マリアンナ医科大学 神経内科

国立病院機構名古屋医療センター 神経内科

神戸市立医療センター中央市民病院 脳卒中センター

川崎医科大学 脳卒中医学

国立病院機構九州医療センター 脳血管内科

国立循環器病センター 内科脳血管部門

熊本労災病院 神経内科

最終更新日 2012年05月29日

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