メニュー

脳血管内科・脳神経内科

対象疾患・治療法
4.5時間を過ぎても、専門的な脳梗塞救急治療が重要です

4.5時間を過ぎても、専門的な脳梗塞救急治療が重要です

脳梗塞超急性期の治療法が、近年新たな展開を呈しています。

脳梗塞急性期の治療法として組織型プラスミノゲン・アクティベータ(tissue-type plasminogen activator, t-PA:一般名アルテプラーゼ)の静注による血栓溶解療法が2005年に認められてから、15年近くが経過し、いまやわが国でも標準治療として定着した感があります。

2012年9月からt-PA静注療法の対象患者が発症後3時間から4.5時間に延長されました。この治療に間に合うよう、脳卒中を疑った場合にすぐに専門病院を救急車で緊急受診することが増え、このことがt-PA治療の成功に大きく寄与しています。

しかしながら、「4.5時間以内」が強調されるあまり、「4.5時間を過ぎた場合は、専門病院で治療してもあまり意味がない」と誤解され、専門病院への受診を躊躇されることが少なくないようです。

2010年10月から脳梗塞発症後原則8時間以内の患者さんに対して、Merciリトリーバルシステムという名の新しいデバイスによる血管内治療が認められ、その後、血栓吸引カテーテルやステント型血栓回収機器が導入されました。血栓吸引カテーテルは、カテーテルを閉塞した血栓の近くまで進め、血栓を吸引して、脳梗塞を治療します。ステント型血栓回収機器は、デバイスを閉塞血栓部位に留置することで血栓がステント内に捕捉され、その機器を回収することで血栓を除去し、治療効果を発揮します。2014年から2015年にかけて4件のランダム化比較試験の成績が相次いで発表され、前方循環系の主幹動脈(内頚動脈、中大脳動脈近位部)閉塞による急性期脳梗塞に対して、rt-PA静注療法を含む内科治療に加えて血管内治療を追加することにより、90日後の日常生活自立度が有意に改善することが明らかになりました。発症から6時間以内の症例には、速やかに血管内治療を開始することが勧められ、6時間以上経過した症例でも、神経症候と画像診断に基づいて、治療が有効と判断できれば、血管内治療を行うことが勧められています。当院では、造影剤を使用した頭部CTやMRI検査により、脳梗塞部位や急性期治療により救済可能な部位を自動読影するシステム(RAPIDシステム)を用いることで、適切に治療適応を判断し、早期に治療を行うよう努めています。

また、起床した時に脳梗塞を発症している場合や、倒れているところを発見される場合など(発症時刻が断定できない)脳梗塞患者さんでは、発見から早期に来院してもt-PA静注療法が行えない場合がありましたが、2019年3月からは、頭部MRI検査で「発症から時間があまり経過していない可能性が高い所見」を示す場合にはt-PA療法を考慮できるようになりました。当センターを中心に日本全国の多くの施設と協力してTHAWSという臨床研究を行い、同治療の安全性が示しました。

また脳卒中専門の病棟であるSCU(脳卒中ケアユニット)で従来薬を用いた治療や急性期リハビリテーションを積極的に行うことで、発症4.5時間を過ぎて来院された脳梗塞患者さんでも、良い治療効果が表れることが少なくありません。

このように、脳梗塞発症4.5時間を過ぎても、専門施設でしっかりとした初期治療を始めることが重要と考えます。当科では、「断らない救急医療」を実践すべく、日々努めています。


最終更新日:2021年10月08日

設定メニュー