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小児循環器内科

重症心不全および小児心臓移植

当院では、小児の重症心不全治療および小児心臓移植を行っております。成人とは異なり、小児の心臓移植の対象疾患は多岐にわたります。

小児重症心不全:移植の対象となる基礎疾患

患者さんの数から言うと、心筋症と急性心筋炎が主な疾患になります。心筋症とは心臓の筋肉細胞そのものが障害される病気で、様々な種類があります。拡張型心筋症、拘束型心筋症および肥大型心筋症と大きく3つに分類できます。

1. 心筋症

拡張型心筋症は心筋の収縮力が悪くなる病気で、その結果心筋は菲薄化し心室内腔は拡張します。小児の場合は心不全の症状はわかりにくく、腹部症状(腹痛、食思不振、嘔吐など)で始まることが多く心臓の症状とは気が付きにくいものです。ひとたび発症すると急激に進行し、呼吸不全や抹消冷感を来してしまいます。点滴で心機能を補助する薬剤を使用する急性心不全治療に反応してくれる場合は、その後慢性心不全治療を導入していきます。慢性心不全治療では収縮力の悪い心臓でも生活していけるようにβ遮断薬という薬を長い時間をかけてゆっくりと導入していきます。急性心不全治療に反応が乏しい場合は補助人工心臓を必要とします。写真は現在日本で小児に対して使用可能な唯一の補助人工心臓 Berlin Heart EXCOR ®になります。2015年8月に本邦で保険償還されたばかりの機械です。この機械を装着して心機能の回復を期待したり、心臓移植を待機したりすることになります。

拘束型心筋症とは、心臓の重要な機能として収縮能および拡張能がありますが、主に拡張能に問題がある心筋症となります。心臓は収縮した後に拡張して送り出すための血液を心室内に充満させなければなりません。心筋がうまく拡張できない状態を拡張障害といいます。拘束型心筋症の場合には収縮能は保たれ、拡張障害が主体ということになります。有効な薬物治療は現在のところありません。発症年齢が早いほどその予後は悪く、心臓移植を必要とすることが知られています。

肥大型心筋症は、心室筋が肥厚して厚くなる心筋症です。家族性に発症することが多く、不整脈や突然死を引き起こすこともあることが知られています。

2. 心筋炎

多くの場合ウイルス性に急性発症する疾患です。感冒症状が先行し、2-3日の経過で急性心不全症状に発展します。初期症状は腹部症状であることが多く、続いて胸痛を訴えます。年少児ではなかなか症状がわかりづらく、前述の拡張型心筋症の初発時に似ています。ウイルスが心筋細胞に感染し、心筋に炎症を引き起こします。その間、心機能が障害されることになります。炎症を起こした心筋細胞は再生しないので炎症の波及が広ければ広いほど炎症が治まった後の心筋傷害の程度を左右します。ひどければ心筋炎後心筋症となり、心不全症状を残す可能性があります。その程度により上記心筋症に準じた対処が必要となります。急性期の心不全症状が非常に強い場合は一時的にECMOという補助循環装置を装着し、心筋の炎症からの回復を待つ必要があります。通常、数日から1週間での回復を期待します。ECMO装着期間が長くなれば、出血や血栓、または感染に伴う合併症を併発し致死的になることが考えられるのです。

治療

心不全治療には急性期治療と慢性期治療という考え方で病期により分類する場合と、薬物治療と非薬物治療と分ける分類とあります。急性期治療にも慢性期治療にも薬物・非薬物治療が存在します。

1. 急性期治療

急性期には心臓から酸素化された血液が全身にうまく回らず、全身の臓器に酸素が行きわたらない状況となります。その行きわたらない血液は心臓と、その前の肺に渋滞して滞ってしまいます。よって、考え方としては全身の血管を拡張してあげて、心臓と肺に滞った血液を全身に分布させてあげることが重要です。その後、腎臓にも血液が回ってきたら利尿薬で水分を体外に濾し出します。どうしても血圧が保てない場合や心臓の動きが著しく悪い場合は、やむを得ず強心薬を使用するしかありません。こういった薬物治療に加え、急性期は貧血の是正(輸血)や鎮静をして患児の酸素消費を抑えてあげることも重要な治療の一環となります。しかし、このような治療にうまく反応しない場合は補助循環装置を装着し、一時的に心臓と肺の役割を機会に担ってもらう必要があります。これは非薬物治療ということになります。またはBerlin Heart EXCOR ®も非薬物治療のひとつになります。

また心筋症の患児のなかでは、特殊な伝導障害を合併している患児が含まれます。このような場合は心電図で特徴的な左脚ブロック型の幅広い波形を呈し、心エコーでも特徴的な非同期運動を認めます。こういた症例の場合は急性期であっても積極的に心臓再同期療法というペースメーカー治療が奏功する場合があります。これも非薬物治療のひとつであり、劇的な心機能の回復を得られることもあり、十分にその適応があるかないかを検討する必要があります。

また心筋症の患児のなかでは、特殊な伝導障害を合併している患児が含まれます。このような場合は心電図で特徴的な左脚ブロック型の幅広い波形を呈し、心エコーでも特徴的な非同期運動を認めます。こういた症例の場合は急性期であっても積極的に心臓再同期療法というペースメーカー治療が奏功する場合があります。これも非薬物治療のひとつであり、劇的な心機能の回復を得られることもあり、十分にその適応があるかないかを検討する必要があります。

2. 慢性期治療

急性期治療にうまく反応し、徐々に心不全症状から脱したら、慢性期治療に移行していかなければなりません。心臓が一生懸命血液を全身に送り出す状況が継続すると常に心臓は緊張していますので長期的には疲れ果ててしまいます。よって、β遮断薬を使い心臓のリラックスを促していく必要があります。ただ、β遮断薬の導入はゆっくりと行わないと、急に心臓を休めることになり心不全に逆戻りすることがあります。また前述した心臓再同期療法も、慢性期に導入することがあります。心臓再同期療法と薬物療法をうまく組み合わせて管理を行っていくことが大切です。特に乳幼児の場合は慢性期には病状によって水分制限の必要性がある場合もあり、自宅での管理に大きな役割がありますので十分に担当医と日常管理について共通認識をもちましょう。

3. 心臓移植

最後に心臓移植についてお話ししたいと思います。重症心不全の管理においては、ここまでに説明したようにいろいろな治療法があります。これらの治療を十分に尽くしたうえで心不全の改善の余地がなく、心臓以外の臓器に強い障害がない場合に心臓移植を考えます。日本においては2010年に臓器移植法の改定があり、15歳未満の小児からの臓器提供が可能となりました。まだまだ臓器提供の機会は、世界の心臓移植待機患者数と比べると充足しているとは言えません。しかしながら徐々にその機会は増えてきているのが現状です。当院でも小児心臓移植施設として準備を整えています。

心臓移植とは、死亡した他の方から心臓の提供を受け、これを自分の心臓のかわりに植え込み、新しい心臓機能を維持して心不全から脱却する治療法です。心臓を提供する人をドナー、心臓移植を受ける人、つまりドナーから心臓の提供を受ける人をレシピエントといいます。心臓移植でないと助からないような重症の心機能障害に陥る病気には、例えば、重症の心筋症、高度な心筋障害を残した心筋炎後心筋症、一部の先天性心疾患などがあります。心臓移植を受けると拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤などを一生飲まなくてはなりません。また、感染症を防ぐため、生ものを食べたり、鳥や猫などのペットを飼ったりすることはできないといった生活の制限ができます。また、定期的に外来を受診したり、入院して検査を受けたりしなければなりません。これを守らないと拒絶反応、感染症や合併症にかかり生命の危険にさらされます。よって、心臓移植について、十分にご本人とご家族が理解されていることが非常に重要なのです。また、ドナーになられた方への感謝の気持ちもっていればこのような生活制限は十分に受け入れられるものと思います。

最終更新日 2019年08月29日

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