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腎臓・高血圧内科

対象疾患・治療法

対象疾患

腎臓病

  1. 慢性腎臓病
    慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全に至るリスク因子で、患者数は増加しています。2011年現在、日本では成人人口の約13%、1,330万人がCKD患者と言われております。CKD発症の背景因子として、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が挙げられます。CKDは末期腎不全や心血管疾患、脳血管疾患のリスク因子となり、国民の健康を脅かしています。
  2. 急性腎傷害(AKI)
    急性腎傷害(AKI)は数時間から数日という短期間で急激に腎機能が低下する病態です。尿から老廃物を排泄できなくなったり、溢水になったりします。透析が必要になる場合があります。
  3. 急性糸球体腎炎
    急性に血尿、蛋白尿、乏尿、浮腫、高血圧などを発症する腎炎です。溶連菌感染後に発症することが多いです。抗生物質の使用により、発症頻度は急激に減少しています。通常は自然治癒しますが、腎不全が著明な場合は透析を行うこともあります。
  4. IgA腎症
    血尿・蛋白尿を呈する慢性糸球体腎炎で最も頻度が高い疾患です。扁桃腺などで産生された正常構造をしていないIgAが腎臓に沈着し、炎症を起こすことにより、血尿や蛋白尿が出現します。腎生検にて診断します。治療はステロイド剤を使用します。
  5. ネフローゼ症候群
    尿から蛋白が多量に漏れ、低蛋白血症が引き起こされる病態です。浮腫が出現することが多いです。糖尿病などの原因が明らかなもの以外は、腎生検で確定診断をする必要となることがほとんどです。治療はステロイド剤を中心とし、免疫抑制剤を併用することもあります。
  6. 腎硬化症
    高血圧が長期間続くと、腎臓の細動脈レベルの血管に動脈硬化が起こり、腎障害をきたす疾患です。進行すると、糸球体への血流が乏しくなり、腎機能は低下し、腎不全に陥ります。高齢者に多く、2019年以降慢性糸球体腎炎に代わり透析導入の原疾患の第2位を占め、増加傾向です。
  7. 糖尿病性腎症
    1998年以降、糖尿病性腎症は透析導入原疾患の第1位です。糖尿病の増加に伴い、糖尿病性腎症は増加しておりました。しかし、糖尿病性腎症に対する集学的治療の進歩により、ここ数年は透析導入原疾患に占める割合は減少傾向です。
  8. ループス腎炎(全身性エリテマトーデス)
    全身性エリテマトーデス(SLE)によって引き起こされる腎障害です。SLEは腎障害を合併しやすく、生命予後の規定因子となります。尿潜血・尿蛋白が陽性の場合、SLEの診断や病勢の評価のため、腎生検を行うことがあります。治療はステロイド剤を中心とし、免疫抑制剤の併用が必要なことが多いです。
  9. ANCA関連血管炎
    ANCAは抗好中球細胞質抗体の略で、好中球細胞質に対する抗体を持つ疾患の総称です。顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に分類されます。特に、顕微鏡的多発血管炎は腎障害を発症しやすく、腎不全に陥りやすい疾患です。腎生検にて診断します。治療はステロイド剤を主に使用します。
  10. 抗糸球体基底膜抗体型糸球体腎炎(Goodpasture症候群)
    急速進行性糸球体腎炎を呈する疾患のうち、抗糸球体基底膜抗体が陽性となる疾患です。肺にも肺胞出血を呈することがあります。腎機能は急激に悪化し、短期間に末期腎不全に至ることが多いです。確定診断には腎生検が必須です。治療は血漿交換療法とステロイド剤を併用します。
  11. 紫斑病性腎炎
    IgA血管炎の腎障害で、血尿、蛋白尿を伴います。IgA血管炎の症状は、紫斑が必ず出現し、腹痛や関節痛を伴うことがあります。診断には腎生検が必要です。組織所見として、IgA腎症と同様の所見を呈します。ステロイド剤を使用することが多いです。
  12. コレステロール塞栓症
    動脈硬化が強い症例で、血管内カテーテルの操作や血管手術により、動脈壁にあるプラークの成分であるコレステロール結晶がはがれ、末梢の小動脈に塞栓症を引き起こす病態です。腎臓に障害がきますと、腎機能が比較的急速に悪化することがあります。抗凝固療法の中止を行う場合もあります。状況によりステロイド剤を使用する場合もあります。
  13. 多発性嚢胞腎
    PKD遺伝子の変異により、尿細管由来の嚢胞が両腎に多発し増大することで、進行性に腎機能が低下し60歳代までに約半数が末期腎不全に至る疾患で、常染色体優性遺伝の形式をとります。2014年にトルバプタン(サムスカ)が保険適応となり、積極的な治療が始まりました。
  14. 尿細管間質性腎炎
    尿細管は糸球体から濾過された尿のうち、必要な成分を再吸収し、不要な成分を分泌し、尿として排泄します。間質は糸球体と尿細管以外の腎組織です。これらに炎症がおこると尿細管間質性腎炎となります。薬剤性が多いです。その他の原因として、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、IgG4関連疾患などの自己免疫性疾患が隠れていることもあります。腎生検が必要なことがあります。病勢が強い場合、ステロイド剤を使用することがあります。
  15. IgG4関連腎臓病
    IgG4関連疾患に伴い発症する腎障害です。尿細管間質にIgG4陽性の形質細胞が著明に浸潤し、特徴的な線維化を起こします。比較的高齢者に多く、ステロイド剤が著効することが多いです。

高血圧/低血圧

  1. 本態性高血圧
    高血圧は大きく分けて、本態性高血圧と二次性高血圧の2つに分けられます。原因を特定できない高血圧は本態性高血圧とされ、遺伝やさまざまな生活習慣の要因が重なって起こります。高血圧は生活習慣病の一つとされています。
  2. 二次性高血圧(腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、など)
    二次性高血圧は原因となる病気などがあり、そのために血圧が高くなるもので、腎性、腎血管性、内分泌性(とくに副腎性)高血圧などがあります。適切に診断ならびに治療することで、高血圧の治癒が期待できる場合もあります。
  3. 高血圧緊急症(悪性高血圧など)
    単に血圧が異常に高い状態だけではなく、血圧の高度の上昇(多くは180/120mmHg以上)が続くことで、脳、心臓、腎臓、大血管などに急性の障害が生じている状態です。
  4. 起立性低血圧
    立ち上がったときに血圧が過度に低下することで、脳への血流が減少して、めまいや失神が起こります。血圧の変化に代償機序が即座に反応できなくなることで起こります。
  5. 神経調節性失神
    長時間の立位姿勢、痛み、排尿・排便、精神的・肉体的ストレスなど、さまざまな原因で起こる失神を総称した概念です。原因を明らかにして適切に対処することが重要です。

診断法

腎臓病の診断

  1. 尿検査
    腎疾患を診療するにあたり、尿検査は必須の検査です。尿所見のなかで、尿蛋白と尿潜血が特に大切です。尿定性試験は安価な検査ですので、腎疾患を疑われた場合は、必ず施行をお願いします。尿蛋白単独で2+以上、または尿蛋白・尿潜血とも陽性の場合はご紹介ください。
  2. 腎機能検査
    腎機能をみるにあたり、eGFRやBUN・血清クレアチニン値などは必須の検査になります。これによりCKDの重症度や透析導入のタイミングがある程度わかります。腎機能が増悪傾向である場合は、ご紹介ください。上記の1、に該当する場合は、腎機能に関わらずご紹介ください。
  3. 画像診断
    腎疾患を診療するにあたり、腎臓の大きさは非常に大切です。単純CTや腎エコーなどを行い、評価します。腎生検の適応を決定する場合もあります。これらの画像検査により、多発性嚢胞腎を考慮する場合や、腎後性腎不全を除外できます。
  4. 腎生検
    腎疾患を確定診断するにあたり、必要な検査になります。正確な組織診断を得ることで、治療方針を決定することが可能になるとともに、腎機能予後の評価も行えます。また、治療効果判定が必要な場合に、再生検することもあります。当院では年間20例程度の腎生検を行っております。

血圧測定

  1. 診察室血圧
    病院や診療所の診察室で、水銀血圧計か、それと同じ程度に正確な自動血圧計で正しく測った数値(診察室血圧)が診察室血圧となります。
  2. 診察室外血圧
    診察室血圧の他の血圧測定方法には、家庭血圧や24時間自由行動下血圧(ABPM)などがあります。緊張などのために、病院や診療所では本来よりも血圧値が高くなる方では、家庭血圧やABPMのほうがより本来の血圧値が測定できると考えられています。

高血圧臓器障害・合併症の診断

高血圧にともなう臓器障害や合併症の有無、程度を把握するために、当院では以下のような検査を行っています。

  1. 心臓超音波検査(心エコー)
    心臓の動きや心肥大、弁膜症の有無などを調べます。
  2. 頸動脈超音波検査(頸部エコー)
    頸動脈肥厚の程度やプラークの有無を調べます。
  3. 腎血流超音波検査(腎ドプラー)
    腎動脈狭窄の有無や腎臓の中の血流などを調べます。
  4. 脈波速度検査(PWV)
    血流の速度から血管壁の硬さ(動脈硬化の程度)を評価します。
  5. 血管内皮機能検査(FMD)
    リアルタイムで、非侵襲的に、血管が健康な状態にあるのか否か調べます。
  6. ラジオアイソトープ(RI)検査
    心臓では負荷時の冠血流変化を、腎臓では左右の腎の形態・機能を調べます。
  7. コンピュータ断層撮影(CT)検査
    頭部では無症候性脳梗塞の有無などを、胸・腹部では大動脈瘤の有無、腎臓や副腎の形態などを調べます。
  8. 眼底検査
    眼底血管の高血圧、動脈硬化および糖尿病による変化を調べます。
  9. 24時間血圧測定
    携帯型自動血圧計にて、一日の血圧の平均値や変動を調べます。

二次性高血圧の診断

二次性高血圧にはさまざまな原因となる疾患がありますので、病歴・症状・身体・検査所見などから原因疾患を推測して、鑑別・診断確定に必要な検査を適宜行います。

起立性低血圧の診断

失神前後での病歴が重要になります。起き上がる前後での血圧を測定することで診断されます。

神経調節性失神の診断

失神前後での病歴の聞き取りが重要になります。必要な場合にはHead-up tilt(ティルト)検査を行います。ティルト試験では、受動的に体位を起こして前後での血圧測定や症状の変化を観察します。

治療法

腎臓病の治療

  1. 腎不全教育
    腎不全の治療には食事療法と薬物療法の両方がうまくかみ合うことが重要です。塩分制限、蛋白制限、カリウム制限などの食事療法の習得と内服薬の調節を行うため、1-2週間の教育入院を行っております。
  2. 慢性腎不全の薬物療法
    慢性腎不全は様々な併存症を呈してきます。高血圧、腎性貧血、溢水、高カリウム血症、代謝性アシドーシス、カルシウム・リン代謝異常などです。これらの病態に併せ、降圧薬の処方、エリスロポエチン製剤の投与、利尿剤の処方、カリウム吸着薬の処方、重曹の処方、リン吸着薬の処方を行っています。
  3. 免疫抑制療法
    IgA腎症、ネフローゼ症候群、膠原病合併腎疾患などは、副腎皮質ステロイド剤を中心とした免疫抑制療法が必要になることが多いです。病態により、シクロスポリン、タクロリムス、エンドキサン、ブレディニン、セルセプトなどの免疫抑制剤を併用することがあります。
  4. トルバプタン(サムスカ)の導入
    多発性嚢胞腎に対し、バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタン(商品名:サムスカ)が保険適応拡大となりました。また、多発性嚢胞腎に対する難病認定が拡大されました。これらにより、多発性嚢胞腎に対するトルバプタン(サムスカ)の導入が可能となりました。
  5. 血液透析療法
    末期腎不全に至った場合、透析導入が必要となります。当科では血液透析の導入を行っております。年間透析導入症例は30例程度です。また、心疾患・脳卒中を発症した維持透析症例を積極的に受け入れ、透析を行っております。透析室はベッド数13床で、腎臓・高血圧内科医師3名、看護師4名、臨床工学技士3名で運用しております。年間のべ透析回数は2,000-2,200件程度となっております。
  6. 特殊血液浄化療法
    病態に応じ、血漿交換、二重膜濾過血漿交換、血漿吸着療法を適宜施行しております。

高血圧の治療

主に、薬(降圧薬)による薬物療法と、生活習慣の修正による非薬物療法の2つがあります。

  1. 生活習慣の修正(非薬物療法)

    日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(2014年度版)では、高血圧の人に推奨される生活習慣の修正項目として、①塩分制限、②野菜や果物の摂取とコレステロールや飽和脂肪酸の制限、③減量、④運動、⑤アルコール制限、⑥禁煙、を挙げています。これらの生活習慣の修正は、複合的に行うことがより効果的とされています。

  2. 薬物療法

    降圧薬にはいくつかの種類がありますが、合併する疾患に応じて選択されます。一般に、降圧薬は単剤を少量から開始して、降圧効果が十分でない場合には増量するか、もしくは他の種類の降圧薬を少量で併用したりします。

  3. 腎血管性高血圧へのカテーテル治療(放射線部との連携)

    腎動脈の狭窄や閉塞によりもたらされる高血圧(腎血管性高血圧)では、必要に応じてカテーテルを用いた治療を行います。

 

最終更新日:2024年01月09日

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