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患者の皆様へ

心不全

1. 心不全は、どういう病気ですか?

心臓は全身に血液を送り出すポンプとして一日中、休むことなく働いています。心不全とは、『心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』と定義されています。一概に心不全と言っても、原因や自覚症状は人によって様々です。

2. 心不全は、どういう原因で起きますか?

心臓の筋肉を養っている血管(冠動脈)が詰まってしまう心筋梗塞や狭心症、動脈硬化や塩分の摂り過ぎなどが原因の高血圧、心臓の部屋を分けている逆流防止弁が障害される弁膜症、心臓の筋肉に異常が起こる心筋症、拍動のリズムが異常になる不整脈、先天的な心臓の病気など様々な疾患が原因となって生じます。

3. 心不全になったら、どのような症状が出ますか?

心不全になると、心臓から十分な血液を送り出せなくなり、体に必要な酸素や栄養が足りなくなるので、坂道や階段で息切れがしたり、疲れやすくなります。腎臓に流れる血液が少なくなって尿の量が減り、水分が体内に貯留してくると、足の甲やすねのあたりがむくんだり、体重が1週間で2~3キロ増加したりします。やがて、体の中で血液が滞る「うっ血」が進むと、腹部膨満や、さらに呼吸が苦しくて横になって眠れない「起坐呼吸」といったような状態になることもあります。

息切れや足のむくみは、心不全の患者さんで頻度の多い初期症状ですので、これらの症状が出現した際には、一度専門の医療機関の受診をお勧め致します。

4. 心不全の検査は、どのようなものがありますか?

心不全の患者さんは診療の中で複数の検査を組み合わせて受けて頂くことになります。検査には心不全の原因を評価する検査と、病状を評価するための検査があり、これらを組み合わせて最適な治療を選択します。

・採血検査
心不全のリスクとなる糖尿病や高脂血症などの有無が評価できます。また、心不全が悪くなると腎臓や肝臓の機能を示す値が上昇します。その他に、心不全の際に心臓から産生が増えることが知られているBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の濃度を測定することで、心不全の有無や程度を評価することができます。

・胸部レントゲン検査 
心不全によって体に水分が貯留すると、心臓の拡大や肺への水分貯留(肺水腫)、肺の周囲のスペースへの水分貯留(胸水)などが生じます。胸部レントゲン検査ではこれらを観察することができます。

    
正常のレントゲン画像心不全患者さんのレントゲン画像

 

・心電図検査
心不全の原因となる不整脈の有無や、心筋梗塞・狭心症などの検出に役立ちます。また、心臓の筋肉の障害や肥大が検出されることもあります。

・心臓超音波検査
超音波を利用して心臓の形や動き、血液の流れを評価します。これにより心臓の動きの低下や、壁の厚さ、心臓の各部屋の大きさなどが分かります。また、血液の流れを見ることで、心臓の弁が開きにくくなっていたり、逆流していたりする弁膜症も発見することができます。心臓超音波検査は胸の表面から心臓を観察する経胸壁心臓超音波検査が一般的ですが、更に詳細な評価が必要な場合には胃カメラのように口から超音波の管を飲み込み、食道を介して心臓を観察する経食道心臓超音波検査もあります。当院では経食道心臓超音波検査の際には苦しくないように一時的な麻酔を用いて実施することも可能です。

  
経胸壁心臓超音波画像

・心臓MRI検査
磁力を利用して心臓の形や動き、心臓の筋肉の性質や障害の程度を評価することができます。強力な磁石を用いて検査するため、体に金属が入っているかたは事前に検査が可能であるか確認が必要です。

・心臓カテーテル検査
手首や足の付根、首などの血管からカテーテルという細い管を入れ、心臓まで到達させて様々な評価を行います。心不全の状態を評価するために心臓の中の圧力を測定したり、心臓が全身に血液を送る量を計測したりします。また、心臓に血液を送り届ける冠動脈という血管が狭くなったり詰まったりしていないかを確認し、心不全の原因となっていないかを調べます。その他にも心筋生検という検査もカテーテルで行います。心筋生研ではカテーテルの先端に取り付けた小さなピンセットにより心臓の筋肉をつまんで採取し、実際に心臓の筋肉にどのような異常が起きているかを顕微鏡などを用いて詳細に評価し、心不全の原因を判断します。


心筋生検検査:心臓の細胞の形の異常や配列の乱れ、炎症の有無、心筋の障害などが分かります。

5. 心不全には、どのような治療法がありますか?

まずは、心不全そのものに対する薬物治療を行います。体内に貯留した水分を抜くために利尿薬を用いたり、低下した心臓の機能を回復させるために心臓を休める薬を用いたりします。このように、数種類のお薬を患者さんの状態に応じて調整します。薬の調整の際には副作用などに注意して、外来や入院で複数回に分けて慎重に薬の量や種類を変更していきます。その他、多くの場合は生活習慣の見直しや、食事療法も必要です。当院では心不全に対する薬物治療に豊富な経験があり、生活習慣や食事の指導にも力を入れています。

心不全の原因と解決方法がはっきりしている場合、例えば、心筋梗塞や狭心症に対しては冠動脈に対する治療が行われます。弁膜症に対しては、弁置換術や弁形成術などの開胸手術が効果的です。一方で、ご高齢の弁膜症のかたには、開胸手術が困難な場合も少なくありません。近年では、そのような患者さんにも、より低負荷なカテーテル治療が行えるようになっています。大動脈弁狭窄症という弁膜症に対しては、カテーテルを用いて弁置換術を行う経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVIと言います)、僧帽弁逆流症という弁膜症に対しては、カテーテルを用いて弁を修復して逆流を制御する経カテーテル的僧帽弁修復術などの治療が可能な場合があります。

心筋症、特に拡張型心筋症においては、標準的な内服治療以外にも、両心室ペースメーカー治療(心室再同期治療;CRTと言います)が著効する場合があります。一方で、それらの治療でも改善しない場合には、補助人工心臓や心臓移植といった治療が必要になる場合もあります。また肥大型心筋症においては、薬物治療に加えて、心筋切除術や経カテーテル的中隔心筋焼灼術(PTSMAと言います)が必要になる場合もあります。

当センターでは心不全に対する薬物治療、経カテーテル的大動脈弁置換術経カテーテル的僧帽弁修復術などのカテーテル治療、ペースメーカー治療、補助人工心臓・心臓移植などいずれの治療に対しても豊富な経験を有しており、専門的な外来診療も行っております。お困りの方は、弁膜症に関しては弁膜症クリニックへ、心不全や心筋症に対する、薬物治療や両心室ペースメーカー・補助人工心臓、経カテーテル的中隔心筋焼灼術等の適応等に関してなどいつでも気軽にお問合せ下さい。

6. 心不全になったら、どのような事に気を付ける必要がありますか?

心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら経過する病気であり、上手に付き合っていく必要があります。そのためには大きく分けて、① 内服を必ず継続する事② 食生活に気を付ける事③ 自己管理を行う事の3つが重要です。

① 内服に関しては、調子が良くなるとついつい内服を忘れたり、やめてしまったりしがちになってしまいます。ただし、心不全悪化の原因として、内服の中断は最も多い原因の一つです。最新の研究では、心機能を改善させる薬をやめた患者さんではせっかく良くなった心臓の動きが短期間のうちに元通り悪くなってしまうことが証明されています。そのため、心不全に対しての薬は種類が多いですが、必ず継続して内服してください。薬が合わないと感じた場合でもご自身の判断で薬を中止することは避けていただき、必ず主治医の先生に相談してください。

② 食生活に関しては、塩分の制限が最も重要になります。塩分を取り過ぎると、体の中に水分を溜め込むようになってしまい、心臓に負担がかかって心不全になりやすいです。1日6g未満を目途に、塩分を取り過ぎないことを心掛けて下さい。

③ 自己管理に関してですが、心不全は風邪のように治療によって完治する病気ではなく、長く付き合っていく病気です。そのため、内服の継続、塩分制限に加えて、日々の状態をご自身で管理していく必要があります。血圧や体重を毎日記録し、体重増加などの心不全の症状が出ていないか、血圧が高すぎたり低すぎたりしないか、日々チェックするようにしましょう。

 

最終更新日:2023年09月29日

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