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患者の皆様へ

脳卒中・脳血管の病気

Q. 脳卒中ってなんですか?

A.脳卒中は脳の血管の問題で症状が出る病気です。血管ですから、基本的には詰まってしまうか、破れて出血するかに区別できます。詰まって血流が途絶し、症状が出ることを脳梗塞といいます。出血の場合は、脳の外の血管が破れるくも膜下出血と、脳の中の血管が破れる脳内出血に分けられます。

Q. どのような症状で脳卒中を疑いますか?

A.脳卒中は発生した脳の場所によって様々な症状がでます。急に倒れる、意識不明になる等の症状であればすぐに救急車を呼ぶと思いますが、比較的症状が軽い場合は判断が難しいことがあります。このような場合、ご家庭でも分かりやすい症状として、片方の口が垂れ下がるなど顔の見た目にいつもはない左右の差がある、両手を前に出して目を閉じると片方だけが下がってしまう、言葉が出ない、うまく喋ることができない等の異常が急に発生していたら脳卒中の可能性が高くなります。すぐに救急車を呼んで来院してください。当院では24時間365日、専門の医師が直ちに対応いたします。

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Q. 症状が軽い場合は様子を見てもよいでしょうか?

A.症状が軽くても、その後急に悪くなる事があります。また、脳梗塞の場合は一定時間を過ぎてしまうと有効な治療ができなくなる事があります。その為、脳卒中が疑われる場合にはすぐに来院していただく事が肝要です。

脳卒中について

Q. 脳梗塞の場合はどんな治療がありますか?

A.脳梗塞に対して、以前は有効な治療がなく再発を防ぐことしかできませんでしたが、現在は出現した症状を改善させる治療があります。具体的にはtPAという点滴の薬を使って血管に詰まった血栓を溶かして再開通させる治療と、カテーテルを用いて詰まった血管を直接再開通させる血栓回収手術があります。注意する点としては、いずれの治療も時間の制限があることです。前者は発症して4.5時間以内しか治療できませんが、後者は場合によっては少し時間が経っても治療できることが有ります。いずれの治療も早ければ早いほど効果が期待でき、両方を組み合わせた治療も一般的に行っています。当院では、いずれの治療もすぐに開始できるよう院内の体制を整えております。

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Q. 脳卒中を疑って緊急で受診する際に気をつけることはありますか。

A.まずはなるべく早く受診することが大切です。また、症状が出た時間がいつであるか確認しておいてください。症状が出た時間がはっきりしない場合は、最後に確実に症状がなかった時間がいつであったかを確認してください。他に、現在内服しているお薬があればそれが分かるようにして下さい。このような情報によって治療がスムーズに進み、症状の改善や副作用の軽減につながります。

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Q. 頭の血管にコブ(未破裂脳動脈瘤)があると言われました。破裂しないか心配です。

A.脳ドックや、頭痛やめまいの原因を調べるために頭のMRI検査を受けた際に、「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」が見つかることがあります。脳動脈瘤はふつう、破裂しない限りほとんど無症状です。しかし、もしも破裂すると「くも膜下出血」という大変な事態になり、命にかかわるため、多くの方が不安になるのは当然のことです。
ただ、必ずしもすべての脳動脈瘤が破裂するわけではありません。小さな脳動脈瘤の多くが、長期にわたり問題を起こさないことが分かっています。一方で、5~7mmを超える大きさになると一定の破裂リスクが生まれ、10mmを超える大型のものは危険度が高くなります。脳動脈瘤がある場所と大きさ、形によって、今後1年間に何%の確率で破裂するのかついての、日本人のデータが明らかになっています。
破裂が心配される脳動脈瘤には、精密検査を行ったあと、治療が勧められます。治療にはクリッピング術(開頭手術)とコイル塞栓術(カテーテル治療)の2種類があり、動脈瘤の状況によって、より安全確実な方を選択します。国立循環器病研究センターにはそれぞれの治療のエキスパートが揃っており、専門的な立場から最良の選択肢をご提案することが可能です。
まれに、クリッピング術、コイル塞栓術のどちらを用いても単独では治療が難しい動脈瘤があります。このような病変に対して当センターでは、両者を組み合わせた「ハイブリッド治療」も行っています。

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Q. 頚動脈が細い(=頚動脈にプラークがある、頚動脈狭窄症)と言われました。どうすればよいのでしょうか?

A.頚動脈は脳へ血流を送る重要な血管です。年齢とともに動脈硬化が進むと、頚動脈の壁の中に「プラーク」とよばれる、「おから」のような病変ができ、それによって壁が厚くなり、血液が流れる部分が狭くなります。病気が進むと、プラークが壁を突き破って血管の中に露出し、この部分に出来た血栓やプラークの破片が血液に乗って脳へ飛んでいきます。血栓やプラークのかけらは脳血管に引っかかって血流を止め、脳梗塞をおこします。また、血管が狭くなり脳への血液量が不足することによって脳梗塞が起こることもあります。脳梗塞は、手足の麻痺や言語障害など重大な後遺症の原因となります。
「頚動脈が細い」といわれたら、まずは外来でご相談ください。病状が軽い場合は、直ちに外科治療を行う必要はなく、内服薬と頚部エコー検査で定期的に観察します。病気がかなり進行している場合には、重い脳梗塞を起こす前に外科治療が勧められます。外科治療にはプラークを摘出する手術(頚動脈内膜剥離術)と狭い部分を拡げるステント留置術(カテーテル治療)があります。プラークの状態によって、どちらの治療が適しているのかが決まります。国立循環器病研究センターにはそれぞれの治療のエキスパートが揃っており、専門的な立場からご相談に応じることが可能です。
頚動脈狭窄症の原因の多くは全身の動脈硬化です。心臓(冠動脈)や下肢など頚動脈以外の血管狭窄を合併していることがあり、全身血管の十分な検査が必要です。

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Q. 子ども(小学生)が手足の力が抜けたり、しびれると言ったりします。泣いた後に起こることが多いようです。何か大変な病気なのでしょうか?

A.もやもや病」という名の病気をご存知でしょうか?子どもや若年者に多い、脳の血管が徐々に細くなり詰まっていく病気です。日本では約1万8千人が診断されています。
脳血管が詰まって血流不足になり、片方の手や足の動きが一時的に悪くなったり、しびれを感じたり、言葉が喋りにくくなったりします。多くの場合10-20分以内におさまりますが、この発作は「脳梗塞の前兆発作」とも言われる、危険なものです。これらの発作は過換気(息が荒くなる)で誘発されやすく、「熱いもの(ラーメンやうどんなど)を食べる」「鍵盤ハーモニカやリコーダーを演奏する」「歌う」「泣く」といった場面で生じやすいのが特徴です。上記に該当するような症状があれば、頭部MRIによる検査が必要ですので、脳神経外科または神経内科を受診してください。時には、いきなり脳梗塞がおこることもあります。この場合は症状が一過性ではなく長時間続きますので、すぐに救急処置が必要です。また、必ずしも小児や若年ではなく、中年以降、高齢者におこることも少なくありません。
MRIでもやもや病が疑われたら、年齢にかかわらず精密検査が必要です。カテーテル検査で脳血管の状態を詳しく調べると共に、脳血流検査で「脳がどれくらい血液不足なのか」を正確に調べます。血液不足の程度が強い場合は、脳血管のバイパス手術が勧められます。国立循環器病研究センターは創設以来、日本におけるもやもや病バイパス手術の中心的役割を担っており、現在も国内で最も多くの手術件数を持つ病院です。
もやもや病は、脳出血の原因にもなります。ほとんどは成人におこり、脳血管に長年の負担がかかって破綻すると考えられます。私たちが中心となり13年間(2001~2013年)をかけて行った研究によって、一定の基準をみたせば「バイパス手術は脳出血の再発も予防する」ことが分かりました。そのため近年、再出血予防のためのバイパス手術も増えています。

Q. 「脳動静脈奇形」があると言われました。どうすればよいのでしょうか?

A.「脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)」とは、頭の中で「動脈」と「静脈」が直接つながり、血管がとぐろを巻いたような塊になっている病気です。正常ならば動脈が多数の毛細血管に分かれて脳に酸素や栄養分を渡し、脳から老廃物を回収して合流し静脈となって頭の外に出て行きます。ところが、脳動静脈奇形では「ナイダス」と呼ばれる異常な血管の塊を介して、動脈がいきなり静脈につながっているのです。この異常な血管が破れて脳出血を起こしたり、「てんかん発作」の原因になったりします。
出血する確率は1年間に1~2%といわれています。いったん出血がおこると、その後しばらくは再出血する確率がかなり高くなります。無症状でたまたま見つかったものは様子をみることも多いのですが、出血をおこしているような場合は、治療が勧められます。
治療方法には①手術による摘出、②ガンマナイフ(放射線治療)、③カテーテル治療があり、病変の部位や大きさによって、最良の方法を選択します。時には2つ以上の治療を組み合わせることもあります。国立循環器病研究センターには①、②、③それぞれのエキスパートがおり、診断から治療まで総合的に行うことが出来ます。「AVM(脳動静脈奇形)外来」を開設しており、専門的な立場から判断し、ご説明させて頂くことができます。

Q. 物が二重に見えて、片方の目が充血するようになりました。眼科で、眼の病気ではなく脳では?、と言われています。

A.頭の中から、眼にむかって勢いよく血液が逆流する、「海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(かいめんじょうみゃくどうぶこうまくどうじょうみゃくろう)」という、長い名前の病気があります。左右の眼の奥には海綿静脈洞という静脈血のプールがあって、通常は脳や眼からの血液が流れ込み、心臓に血液を返しています。ところが、このプールと周囲の動脈との間に異常なつながり(シャント)ができることがあり、動脈血が眼の静脈を勢いよく逆流します。すると眼に異常な充血がおこり、また眼の動きが障害されてものが二重にみえたり(複視)まぶたが開かなくなったり(眼瞼下垂)します。眼だけでなく脳にも静脈血が逆流して、脳出血の原因となることもあります。
「硬膜動静脈瘻」は頭の中の別の場所にも出来ることがあり、心臓の拍動と一致する拍動性の耳鳴りの原因になったり、脳への血液逆流で脳出血を起こしたりすることもあります。
いずれも、放っておくと症状が進むだけではなく回復もしにくくなるので、すぐに専門的な精密検査が必要です。
治療としては多くの場合血管内治療(カテーテル治療)が行われます。多くの場合、シャント部分と血液の逆流路をプラチナ(白金)製のコイルなどで遮断することによって症状を改善させ、脳への血液逆流を伴うものでは脳出血の危険をなくします。
国立循環器病研究センターはこれまで、「硬膜動静脈瘻」の治療をたくさん行ってきました。特に、「シャントの部分だけを的確に遮断する」方法を積極的に行って、安全かつ確実な治療を提供しています。当センターには脳神経血管内治療の指導医、専門医が多く在籍しており、いつでも質の高い治療を提供することが可能です。この病気が疑われたら、ぜひ外来でご相談ください。

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Q. 顔を洗ったり物をかんだりしたとき、激しい痛みが走ります。

A.三叉神経痛(さんさしんけいつう)という病気の可能性があります。三叉神経は、顔の感覚を脳に伝える神経です。三叉神経痛はいろいろな理由でおこりますが、最も多いのは頭の中で脳血管が三叉神経を圧迫することによるもので、顔ではなく脳血管の病気です。この病気の特徴は、「一瞬だけれども鋭く激しい痛み」であり、洗顔、化粧、ひげそり、ものをかむ動作などで誘発されることが多いようです。痛みの場所は片側の頬、あご、歯ぐきなどです。
治療はまず、痛みをしずめる薬(テグレトール)を使います。薬が効かない場合やふらつきや眠気などの副作用が強い場合には、脳外科手術が有効です。耳の後ろで頭蓋骨に小さな窓をあけ、顕微鏡で脳の深部を観察します。三叉神経を圧迫している血管を見つけて神経から離す手術を行うと、90%近くの患者さんは痛みがやわらぎ、あるいは消失します。心臓や他の病気で全身の状態の悪い方や、ご高齢で手術の負担が大きい患者さんには、「ガンマナイフ」という放射線治療があります。手術による改善率には及びませんが、およそ60~80%の患者さんは痛みが和らぎます。平成27年7月から、三叉神経痛に対するガンマナイフ治療が保険適応になりました。国立循環器病研究センターには開頭手術とガンマナイフの体制が整っており、患者さんの状態に応じて最良の治療を提供することができます。
また、同じような病気に顔の片側(目尻や頬、あご)がぴくぴくとけいれんする、「顔面痙攣(がんめんけいれん)」という病気があります。この病気は三叉神経の場合と同じように、頭のなかで脳血管が顔面神経という神経を圧迫しておこる病気です。薬物注射での治療が行われますが、効かない場合は、三叉神経痛と同じような脳外科手術によって症状が劇的に良くなります。

Q. 認知症の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

A.認知症を起こす病気には、たくさんの種類があります。アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、ほかにも正常圧水頭症や甲状腺の病気といった適切な治療によって治るものもあります。適切な治療で治る認知症もあること―これはぜひ覚えていてほしい大切な点です。ところが、アルツハイマー病がとくに注目された結果、認知症は神経細胞がひとりでに死んでいく難病だという認識が広まってしまいました。しかし、認知症の2番目の原因である血管性認知症であれば、脳卒中の予防が認知症の予防に直結します。また、最近の医学の進歩によって、アルツハイマー病ですら高血圧や糖尿病などの生活習慣病を治療すれば、その進行を抑制できそうだということが明らかになってきました。

Q. 血管性認知症とはどのような病気でしょうか?

A.認知症の2番目に多い原因である血管性認知症は、「血管性」の文字通り、老化や生活習慣病を背景に血管の壁がもろくなった結果、詰まって梗塞を起こしたり、破れて出血を起こしたりして、認知機能が悪くなる病気です。脳は全身の20%近い血液を必要とする臓器で、血管の老化や動脈硬化によって最も影響を受ける臓器だからです。血管性認知症の原因は、虚血性心疾患(心筋梗塞など)や脳卒中の場合と同じく動脈硬化を起こす病気そのものです。その中には高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心房細動などが含まれ、それら各疾患に対する治療を徹底することが、認知症の予防となります。「ヒトは血管とともに老いる」という事実は、脳においても例外ではないのです。

Q. 認知症の症状にはどんなものがあるでしょうか?

A.認知症の中心的な症状(中核症状)として、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などが挙げられます。記憶障害は、新しいことが記憶できなくなることです。見当識障害とは、現在の年月・時刻、自分がいる場所を把握する働きが障害される症状です。理解・判断力の低下が起こると、情報を処理するスピードが低下し、ささいな変化にも戸惑うようになります。また、物事を段取りよく行う能力が障害され、実行できなくなることを実行機能障害と呼びます。これらの中核症状はいろいろな組み合わせで出現しますが、アルツハイマー病では記憶障害や見当識障害が出現しやすく、血管性認知症では実行機能の低下が起こりやすいなどの特徴があります。

Q. 軽度認知障害(MCI)とはなんでしょうか?

A.上述した認知症の様々な症状のうち、ごく一部にだけ症状があるものの、日常生活にはまだ特段差し障りが出ていない状態を軽度認知障害(MCI)と呼んでいます。いわば、認知症の予備軍です。MCIでは社会生活を送ることも可能ですので、MCIから認知症への進行をいかに抑えるのかが重要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの循環器病をきちんと管理することでMCIから認知症への5年後の進行が4割以上予防出来た、という報告もあり、循環器病の制圧が認知症の治療に直結することが示唆されています。当センターでは、MCIに対する新たな薬物療法の研究開発(COMCID試験)も行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

Q. 医療機関に行きたがらない場合はどうしたらよいでしょうか?

A.認知症のある患者さんは、病気の認識(病識)がないように見えても、「何かがおかしい」ということには気づいておられることがほとんどです。認知症が治らない病気という認識が広まっている以上、必死にそれを否定したい、という気持ちが芽生えるのは当然のことと思います。しかし、「Q. 認知症の原因は?」で述べたように、「治る認知症」があり、早期診断が重要であることを伝え、健康診断の一環としての受診を勧めていただければ、と思います。ご家族にとっても患者さんの能力の衰えに戸惑われることが多くなると思いますが、まずは医療機関にご相談いただくことが解決の第一歩になると思います。

最終更新日:2021年09月21日

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