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患者の皆様へ

もやもや病

 

原因不明、進行性に脳血管が狭窄・閉塞する病気です。小児や成人でも若い年代(30-40歳代)で脳梗塞や頭蓋内出血を発症することがあります。難病指定を受けている疾患です。

もやもや病について

 もやもや病は脳を栄養する脳動脈が進行性に狭窄、閉塞していく病気です。脳動脈が細くなるため、脳血流不足によるしびれや脱力、言葉がわからないといった虚血発作を生じます。重篤な場合には脳梗塞を発症することがあります。また、この病気の特徴として、不足する脳血流を補うように多数の細い血管による側副血行路が発達するという現象があります。病気の名前である「もやもや」は、側副血行路として発達した多数の血管が、煙草の煙のように「もやもや」として見えるため名付けられました。問題なのはこの側副血行路が破綻すると、脳のなかに出血することがあることです。

 脳梗塞や出血を発症してしまうと、手足が動きにくい、言葉がわからないといった後遺症がのこることもありますし、時には生命にかかわることもでてきます。脳梗塞や出血の予防のためには、しっかりと診断をして適切な治療を行っていく必要があります。手術や内服治療を行うこともありますし、病状が落ち着いている時には定期健診の通院のみということもあります。子供や若い年代での発症が多い病気ですが、健康な人々とかわらない日常生活を送ることも可能です。

 もやもや病については、知っておきたい循環器病あれこれ117「もやもや病・・・ここまできた診断・治療」にまとまっています。是非ご参照ください。

検査について

 検査の目的は①診断の確定、②手術適応の決定、③合併症の評価です。病状と画像所見に応じて検査内容を決定します。通院でできる検査と入院が必要な検査があります。主に行う検査は以下の通りです。これらの検査結果を総合して、最良の治療方針を検討します。

・頭部MRI/MRA
脳梗塞や出血の痕跡、その他の問題となる病変の有無についてチェックします。MRAでは脳血管の狭窄部位や程度、血管形態、側副血行の発達を評価します。

・脳血管撮影(カテーテル検査)
MRA等の低侵襲な検査が存在し、画像診断力は向上していますが、カテーテル検査は脳血管評価のゴールドスタンダードといえます。特にもやもや病では、MRAでは正確な評価が難しい、細い血管による側副血行路が発達します。このような側副血行路の評価や、もやもや病以外の頭蓋内血管狭窄との鑑別にはカテーテル検査が有用です。

・脳血流検査(SPECT、PET)
もやもや病は頭蓋内血管が狭窄・閉塞する病期であるため、程度の違いはありますが、血行力学的脳虚血が存在している(=脳血流が低下している)患者さんが多く存在します。脳血管が細い患者さんのすべてが手術対象になるわけではありません。現状の評価と手術適応を判断するために行う検査です。

・血液検査
治療の妨げとなる基礎疾患がないかどうかを確認します。

・心機能、呼吸機能検査
外科治療や全身麻酔の妨げとなる基礎疾患がないかどうかを確認します。

術前・術後(周術期の経過)について

 もやもや病の外科治療は血行再建術(バイパス手術)です。標準術式は「浅側頭動脈・中大脳動脈バイパス術」という、皮膚を栄養している血管と脳血管を吻合する手術になります。もちろん手術自体も重要ですが、術後急性期には様々な神経症状を生じることが珍しくありません。脳血流の不足がある患者さんがバイパス手術を受けるため、脳血流不足による脳梗塞や過灌流症候群(脳血流の流れすぎ)による脳出血を発症することがあります。このような手術合併症を防ぐために、MRIや脳血流検査を行いながら慎重に経過をみます。入院期間の目安は2週間程度です。
一般的な入院のスケジュールを以下に示します。(病状や手術日程等に応じて変更します。)

手術1-2日前
・入院
・術前検査
採血、レントゲン、頭部MRIなど、直前の最終チェックです。
・術前説明
執刀医より手術の詳細についてご説明します。日程や時間は担当医よりお伝えします。
・麻酔科診察
全身麻酔の妨げとなる問題がないかどうかの診察と麻酔についての説明を受けます。

手術当日
・手術
・集中治療室(NCU: Neurosurgical Care Unit)
術後はNCUに入室し、慎重に経過をみます。滞在日数は病状によりますが、概ね2-3日前後が目安です。

術後1-3日
・頭部CT、MRI/MRA、脳血流検査(SPECT)
術後出血や脳梗塞の有無、バイパス血管の確認などを行います。経過良好であれば、一般病棟に転棟します。

術後7-14日
・抜糸、抜鉤
創部の状態に応じて抜糸・抜鉤を行います。
・頭部CT、MRI/MRA、脳血流検査(SPECT)
症状や術後1-3日に行った検査結果に応じて、これらの画像検査を再検することがあります。
・退院
病状に応じて退院日をご提案いたします。

退院2-3週間後
・外来診察
退院後に神経症状を生じることは少ないですが、ご自宅での様子をお伺いします。あわせて創部に問題がないかどうかの確認を行います。

通院について

 外科治療の有無に関わらず、もやもや病患者さんでは頭部MRI/MRAによる経過観察を行うことが重要です。頻度は病状により異なりますが、経過が安定している患者さんでは半年から1年に1回程度の頭部MRI/MRAによる定期チェックとなります。
 診断時は無症状であったり、はじめはもやもや病と診断されなくても、脳血管の形は時間経過や年齢とともに変化することがあります。頻度は多くありませんので、継続的な通院を忘れないでください。

社会的支援

 もやもや病は厚生労働省が指定する特定疾患です。
 国と都道府県による公的な助成(公費負担医療)ほか、さまざまな社会的支援の対象となります。詳しくは下記外部リンクよりご覧ください。

特定疾患医療費助成(大阪府)
東京都難病相談・支援センター
難病情報センター モヤモヤ病 (ウィリス動脈輪閉塞症)

患者会

もやもや病の患者と家族の会(もやの会)
 1983年2月、元々は「もやもや病の子を持つ親の会」として患者会が設立されました。その後、成人例も含めた患者会として発展し、現在は日本全国に12ブロックの活動拠点があります。医療講演会、相談会、交流会などがおこなわれています。

臨床研究

 もやもや病は原因不明の病気とされてきましたが、関連する遺伝子が明らかになるなど、次々と新しい知見がえられてきています。しかし、まだ分かっていないこともたくさんあり、国内外で様々な研究がおこなわれています。当科で実施または参加している臨床研究は下記のとおりです。

脳血管障害の病因探索
倫理審査承認番号:R20126-3

国立循環器病研究センター脳神経外科疾患の治療成績と合併症の検討 (旧課題名:脳神経外科データベース研究)
倫理審査承認番号:M30-013-2

出血発症もやもや病の術後長期予後解明を目指した多施設後方視的コホート研究
倫理審査承認番号:R3267

脈絡叢型側副路を有するもやもや病の多施設共同登録研究
倫理審査承認番号:R20097

乳幼児もやもや病の病態、診断、治療に関する多施設調査(MACINTOSH study)
倫理審査承認番号:R21043

お問い合わせ

 受診のご相談などは、こちらのページをご確認ください。

 

最終更新日:2023年09月22日

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