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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2016年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2016年 研究活動概要

(研究活動の概要)脳血管内科

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・リハビリテーション医学・救急医学・画像診断学・血栓止血学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評 価され、脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。
2016年は豊田が部長として 7 年目を迎えた。4月に上原が兵庫県立姫路循環器病センターの神経内科部長・脳卒中センター長として、宮崎が国立病院機構九州医療センター脳血管内治療科、泊が今村病院分院神経内科のスタッフとしてそれぞれ転任した。4月よりスタッフ医師として井上を昭和大学藤が丘病院脳神経内科から採用し、山口は専門修練医からスタッフ医師に昇任した。横田は脳血管リハビリテーション科医長併任(医療安全対策室長兼務)、佐藤は外来医長となった。古賀脳卒中集中治療科医長、早川病棟医長、吉村医師、福田医師(臨床試験推進センターとの併任)を含めた体制で、OB/OGである峰松副院長、山本臨床試験推進センター長(理事長特任補佐兼任)の協力を得て、科を運営した。吉村は11月より豪州シドニー大学ジョージ国際保健研究所神経学・精神保健部門(Craig Anderson教授)へ研究留学した。また宮田敏行先生には引き続き当科の特別研究員として研究活動のご指導をいただいた。3月末に専門修練医の徳田、レジデントの松木、関が研修を終え、4月より専門修練医の園田、蒔田、レジデントの安藤、熊本、中村祐、岩崎、藤田が研修を始めた。10月には船津が研修を終え、園田は専門修練医からスタッフ医師に昇任した。施設間交換研修制度を用いて、レジデントの有水が兵庫医科大学脳神経外科、菊野が虎の門病院脳神経血管内治療科で診断的脳血管撮影・脳血管内治療の研修、森が宇多野病院神経内科で神経内科疾患の研修、松原が朝霞台中央病院脳神経外科でてんかんの研修を、それぞれ行った。
診療面では、脳神経内科や脳神経外科と連携して、脳血管部門全体でチーム診療に取り組んだ。とくにこれまで構築してきた静注血栓溶解療法と急性期血管内治療を組み合わせた脳梗塞超急性期再開通治療では、特に治療開始までに時間短縮に注力し、静注血栓溶解療法は2年連続で施行件数が100 件を超え(124件)、急性期血管内治療も78件に達した。急性期診療の詳細は、SCU の活動概要に詳述した。脳血管リハビリテーション科とはリハビリテーションロボットHALを導入し臨床研究を開始した。また再発予防治療、家庭・社会復帰、無症候性脳血管障害診療などの診療にも、力を注いだ。
国際的研究活動として、峰松がexecutive committeeを努めた企業主導治験である脳梗塞急性期抗血小板療法開発のための SOCRATES 試験の主論文がN Engl J Medに掲載された。米国 NIH の助成を受けた研究者主導国際多施設共同第III相試験 Antihypertensive Treatment for Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH) II の主論文もN Eng J Medに掲載された。この試験の運営では、先進医療・治験推進部や循環器病研究振興財団と連携して国内調整施設を務めた。世界全体での登録数 1000 例のうち、国内から 288 例が登録され、また施設毎の登録では当院(脳血管内科・脳神経内科)が 79 例と世界最多であった。また塞栓源不明脳梗塞患者への抗血栓療法開発のための RESPECT-ESUS 試験の国内調整委員を豊田が務めている。
豊田が主宰する循環器病研究開発費助成「国際連携による脳卒中臨床試験推進と脳卒中教育強化を目指した研究」では国内脳卒中臨床試験研究者ネットワーク Network for Clinical Stroke Trials(NECST)の構築を進め、実際に、NECSTを用いた新たな研究として、AMED助成による国内多施設共同前向き観察研究 The Bleeding with Antithrombotic Therapy 2 (BAT2)の登録を10月から開始した。また脳血管内科が事務局(峰松副会長、豊田事務局長、森悦朗会長)となり国内外の急性期脳卒中再開通療法および急性期治療に関わる専門家が神戸に集まり13th International Symposium on Thrombolysis Thrombectomy and Acute Stroke Therapy (TTST 2016)を開催した。
国内での医療政策に関わる活動として、峰松・ 豊田をはじめ多くの医師が、「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針第二班」一部改訂、「脳卒中治療ガイドライン 2015」改訂作業などに中核的に携わり、 同じく峰松・豊田がPMDA専門委員として新規薬剤・医療機器承認に関わった。
多施設共同研究は、脳血管内科が長年とくに重視してきた、研究の主軸である。峰松が2016年3月まで主宰した厚生労働科学研究「脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究」班で組織された一過性脳虚血発作の国内多施 設共同前向き観察研究 PROspective Multicenter registry to Identify Subsequent cardiovascular Events after TIA(PROMISE-TIA)から多くの研究成果を国内外の学会で発表した。豊田が主宰した厚生労働科学研究(平成26年3月助成期間満了)にて組織した非弁膜症性心房細動を有した脳梗塞患者を対象とする国内多施設共同前向き観察研究 Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement - nonvalvular atrial fibrillation(SAMURAI-NVAF)研究も、登録患者の追跡調査を終了し、多くの成果発表を行った。同研究は現在、海外の同種研究との統合解析を準備している。AMED 委託研究の「発症時刻不明の脳梗塞患者に対する静注血栓溶解療法の適応拡大を目指した臨床研究」を豊田が主宰し、研究者主導国内多施設共同第III相試験としてTHrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes with alteplase at 0.6 mg/kg (THAWS) 試験の患者登録を推進した。峰松が主宰しバイエル薬品株式会社の資金提供を受けて行われた、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞発症後抗凝固療法開始時期を調べる医師主導国内多施設共同前向き観察研究 RELAXED の患者登録を行ってきた他、山口名誉総長が主宰し大塚製薬株式会社の資金提供を受けて行われる、脳梗塞再発高リスク患者への抗血小板薬併用検討国内多施設共同前向き臨床試験 CSPS.comにも峰松・ 豊田がコアメンバーで参加し、患者登録を進めた。
峰松が主宰するAMED委託研究「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発に関する研究」により当院へ運営管理が移管された脳卒中データバンク事業の推進を行うとともに現在の医療事情に合致した新しい全国版データベースを構築し、登録を開始した。峰松が主宰する循環器病研究開発費助成「義務教育年代への効果的な脳卒中啓発法の確立に関する研究」では先行研究から継続して横田の企画のもとに、小中学生を対象とした脳卒中啓発研究(Tochigi Projectなど)、救急隊員と連携した啓発研究(Akashi Project)を遂行し、成果を発表した。豊田が主宰し、古賀が実質的に企画遂行する循環器病研究開発費助成「急性大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針検討」研究では、単施設後ろ向き研究や国内施設アンケート調査を行い、診療指針案を作成した。日本脳神経血管内治療学会主導で頸動脈ステント留置術に伴う過灌流症候群を調べる STOP CHS研究に、早川が中核的に関与し、国内アンケート調査に引き続き、多施設共同研究の最終結果を纏めた。佐藤は、World Stroke Organization Young Stroke Professionals Committeeメンバーとして、世界の脳卒中診療体制の調査を行った。また、脳梗塞急性期の降圧療法に関する国際共同無作為化比較試験STAY-ENCHANTED、脳出血後の降圧療法に関する国際共同無作為化比較試験TRIDENTの運営委員として患者登録を推進した。
単施設研究の充実にも努めた。脳神経内科と合同で運営している急性期患者連続登録 NCVC Stroke Registry のデータベースを用いた若手研究が、多く結実した。他にも、移植部や放射線部など院内他科、研究所と連携した研究も行われた。
学会活動では米国 Los Angelesでの International Stroke Conference、スペイン Barcelonaでの European Stroke Organization Conference をはじめとする多くの国際学会、国内学会に、当科メンバーが運営委員ないし発表者として参加した。峰松が2017年に主宰する第42回日本脳卒中学会総会、第29回日本脳循環代謝学会総会の準備を進めた。
研究成果の速やかな英語論文化を全員に課し、多くの英語論文が、peer review を受けて N Eng J Med, Lancet Neurology, Strokeをはじめとする英文誌に採択された。峰松が Stroke, International Journal of Stroke 等の、豊田が Stroke, PLoS One 等の editorial board member を務め、多くの当科メンバーが英語論文査読業務に携わった。

(研究活動の概要)脳卒中集中治療室 SCU

古賀が SCU 医長として7年目を迎え、4月より高尾師長から坂口師長に交替した。SCU 病棟は、主に内科系の脳卒中診療を行う脳血管内科と脳神経内科の医師、専門修練医、レジデント約40人(ローテーションや異動による変動あり)が緊急で入院する脳血管障害患者の急性期治療および管理を行 病棟として機能を果たした。これまで集中治療病床8床を含む全20床で運用してきたが、平成28年度の特定集中治療室の診療報酬基準改定に伴い7月より脳卒中ケアユニット入院医療管理料21床での運用に変更した。看護師は日勤帯約15人、 夜勤帯6人が勤務した。医師と看護師を中心に放射線科や検査科と協力して多くの緊急入院受け入れを行い、適応例に対しては積極的に血栓溶解療法および血管内治療などの最先端の急性期治療を行った。日勤帯、夜間帯、土日祝日を問わず24時間体制でスタッフ医師(専門修練医)とレジデント(専門修練医)2-3名の緊急当番医や当直医が救急隊や近隣の医療施設と直接通話が出来るホットラインを使用して断らない脳卒中急性期医療を実践した。当院への患者搬送を促進するため脳神経内科が中心となって救急隊への 啓発活動を行っている。脳神経外科と緊密に連携し、適切な血管内治療や開頭手術を行った。2016年は約1300例の緊急入院を受け入れ、時間外緊急入院(土日祝日もしくは平日夜間の入院)が半数以上であった。そのうち TIA 105例、急性期脳梗塞 579例、急性期脳出血 183例であった。アルテプラーゼによる静注血栓溶解療法は 124例(前年107例)、緊急血管内治療は75 例(前年69例)に行った。急性期脳出血では診断後の可及的早期からニカルジピン静注薬を使用して収縮期血圧 140mmHg 前後を目標に厳格な血圧管理をおこなった。急性期入院症例を複数の臨床研究や治験(THAWS 試験、RESCUE-JAPAN Registry 2、急性期血管内治療デバイス治験、その他)に多く登録した。指導医師1名と専門修練医もしくはレジデント2-3 名の計3-4 名からなる 診療チームが入院時から診療を担当し、全例の診療内容を毎日確認し治療方針を検討した。日勤帯の緊急入院では担当になる診療チームが可能な限り初期からの対応に加わることで、緊急当番医の次の緊急対応を容易にしている。さらに、毎朝の全員SCUカンファレンス、火曜午後のSCU回診、木曜午後の脳血管内科回診と脳神経内科回診で、個々の症例の診断や治療方針、問題点などをディスカッションし、診療レベルの維持・向上に努めた。このシステムは、脳血管障害を診療する医師を育成するための教育に役立っている。看護師、リハビリテーション科スタッフ、放射線科、検査科、栄養科などと協力して多職種による脳卒中診療を行っている。脳卒中患者が入院した場合には入院日にリハビリテーションをオーダーし、入院当日もしくは翌日からリハビリテーションを受ける体制をとった。脳卒中に関連するてんかん診療にも力をいれSCUに長時間脳波モニター2台を設置し本格的な脳卒中関連てんかん診療を行っている。2011年から開始している SCU 入院例を中心とした脳血管内科、脳神経内科の脳卒中合同 データベース(NCVC Stroke Registry)を維持・継続して運用しており登録症例数が10000例を超えた。このデータベースが多くの研究や試験の基盤となっている。心臓内科、血管外科、放射線科と協力してStanford A 型急性期大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針を検討するための共同臨床研究や、移植部と人工心臓患者に合併する脳血管障害に関する共同臨床研究を行っている。 

(2016年の主な研究成果)

  • 脳血管部門としての脳梗塞超急性期再開通治療実績が更に増加
  • 脳卒中データバンク事業の管理運営
  • 国内脳卒中臨床試験研究者ネットワークNECSTの構築および運営
  • 国内ガイドライン作成作成への貢献
  • PROMISE-TIA、SAMURAI-NVAF研究の研究成果の公表
  • 研究者主導国内多施設共同第III相試験THAWSの試験継続
  • 義務教育年代への効果的な脳卒中啓発法の確立に関する研究
  • 研究者主導国内多施設共同前向き観察研究BAT2の開始
  • スタンフォードA型急性期大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針を検討
  • 急性期患者連続登録NCVC Stroke Registryを用いた単施設研究の推進
  • 国際シンポジウムTTST 
2016 開催
  • 第42回日本脳卒中学会総会、第29回日本脳循環代謝学会総会準備
  • 海外施設(豪州ジョージ国際保健研究所)への長期医師派遣

最終更新日:2021年10月08日

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