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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2012年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2012年 研究活動概要

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・画像診断学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。

2012年は豊田部長体制での3年目を迎え、横田外来医長、上原脳血管リハビリテーション医長(病棟医長兼務)、古賀脳卒中集中治療科医長の3名が脳血管内科、Stroke Care Unit (SCU)、脳血管リハビリテーションの運営を牽引した。前部長である峰松副院長や、研究開発基盤センター先進医療・治験推進部の山本部長の、多大な助言、後援を受けた。スタッフ医師として、2009年8月より3年間にわたって当科のムードメーカーで在り続けた宮下が7月より聖マリアンナ医科大学東横病院脳卒中センターに転出し、後任として10月に、当科としては初めての日本脳神経血管内治療学会指導医である早川を虎の門病院脳神経血管内治療科から迎え、脳梗塞急性期血管内治療の充実を図った。3月に6名のレジデント(石上・井上・遠藤・佐藤・藤並・宮城)が3年間の研修を終えたが、このうち石上、宮城の2名が専門修練医として留まり、さらに4月より2名の専門修練医(奥村・西村)と3名のレジデント(板垣・大山・徳永)を迎え、9名の指導医と20名の修練医から成る大所帯となった。このうち専門修練医の天野が、10月に早川の後任として虎の門病院脳神経血管内治療科へ転出した。また国内外から多くの短期・長期研修生を受け入れた。とくに北京の中日友好病院からは昨年に続き、張 志勇医師が3か月間の研修を行った。

施設内での診療に関して、2012年は電子カルテによる新医療情報システムJUNHISの導入、脳梗塞超急性期治療体制の刷新、入院・外来診療実績の好転が特筆される。JUNHIS導入は年初の大仕事であったが、レジデントを中心に事前準備を整え、大過なく新システムへ移行できた。脳梗塞超急性期治療として、遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)静注治療を行うための初期対応手順を見直し、来院から治療開始までの大幅な時間短縮を得た。rt-PA静注療法、脳血管部門合同で行う脳梗塞超急性期の血管内治療ともに、2011年に比べて施行件数が伸びた。脳内科全体の診療実績として、新入院患者数、診療点数が増加し、平均在院日数が短縮した。とくに急患受入れ件数が従来より大きく伸び、当施設の救急医療を支えた。

国内レベルでの活動として、rt-PA静注治療の治療開始可能時間延長に伴う日本脳卒中学会主導の指針改訂を、実質的に当科を事務局として行った。すなわち峰松を指針改訂部会の部会長に、豊田を事務局代表とし、8月に「発症3時間超4.5時間以内の虚血性脳血管障害患者に対するrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の適正な施行に関する緊急声明」を、10月に「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針 第二版」を公表し、同治療の安全な適応拡大に貢献した。

多施設共同研究は、脳血管内科が長年とくに重視してきた、研究の主軸である。2011年は、峰松が主宰する厚生労働科学研究「一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究」が満了し、この研究活動の継続を一部含めた「脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究」が新たに始まった。豊田が主宰する厚生労働科学研究「急性期脳卒中への内科複合治療の確立に関する研究」が第二年度を迎え、前向き多施設共同SAMURAI-ICH観察研究を完遂し、その主論文、サブ解析論文を発表した。循環器病研究開発費の助成を受けて峰松が主宰する「新しい脳卒中医療の開拓と均てん化のためのシステム構築に関する研究」が第三年度を、豊田が主宰する「脳血管領域における国際共同臨床試験の企画・運営のための基盤整備」が第二年度を迎えた。後者はNIH助成を受けた国際多施設共同第Ⅲ相試験Antihypertensive Treatment for Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH) IIでの国内多施設の円滑な研究遂行をモデル事業として活動し、同試験では世界での患者登録件数の1/4強を日本が占め、また当施設が全世界の参加施設中最多の件数を登録して、進行中である。他にも多くの研究に主要分担研究者として参加した。

新規診断・治療法への取り組みとして、東京慈恵会医科大学等と共同での超音波血栓溶解療法の開発、当施設研究所と共同での超迅速PET撮影、新規抗凝固薬薬効評価指標の開発などを進めた。

学会活動では、9月に東京で開かれたAsia Pacific Stroke Conference 2012に峰松が代表幹事として運営に加わり、多くの参会者を得た。科内の多くのメンバーが、招請講演やシンポジウム発表をはじめ、国内外の多くの学会で研究成果を発表した。また研究成果の速やかな英語論文化を全員に課し、皆が良く対応した。

2012年の脳血管リハビリテーション科は、上原医長が2年目を迎え、尾谷が理学療法士長、碇山が主任理学療法士に昇任し、昨年同様に理学療法士8名、作業療法士3名、言語聴覚士3名で臨床業務に携わった。早期リハビリテーションの有効性を踏まえた上で、上原医長主導により発症後早期のリハビリテーションオーダーの推進、早期介入を実践することによりその治療成績向上に努めた。脳血管部門において多職種合同リハビリテーションカンファレンスを毎週開催し、チーム医療を実践してきた。その結果、リハビリテーション対象患者の在院日数は昨年より約4日短縮し23.3日となった。また、「新しい脳卒中均てん化班」の班員として協力し、医療・介護周辺サービス産業創出調査事業(経済産業省)「めまい対策教室」の実務者としてデータ計測、解析を行った。

最終更新日:2021年10月08日

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