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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2010年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2010年 研究活動概要

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。

2010年4月の独立行政法人化と同時に、15年間にわたって部長を務めた峰松が副院長に昇任し、8月より豊田が後任部長に就いた。また10月に山本が研究開発基盤センター先進医療・治験推進部長に昇任した。横田・上原両医長をそれぞれ外来医長、病棟医長として職域を明確化し、9月より古賀が脳卒中集中治療科医長に昇任した。スタッフ医師として宮下に加えて4月に有廣が着任、11月に鈴木が昇任した。スタッフ医師の中島が4月に国立病院機構鹿児島医療センターへ転任した。4月に5名の新人レジデントを迎えた。

当科の主要な研究主題である超急性期脳梗塞治療法に関して、rt-PA静注療法の治療効果改善や新規治療であるMERCIの導入を脳神経内科・脳神経外科と協力して行い、新たな血栓溶解薬の開発にも治験の中核施設として加わった。rt-PAに関する全国規模の共同研究(J-MARS, J-ACT2)の研究成果を公表した。

多施設共同研究として、2010年には前年度から引き続いて二つの厚生労働科学研究を主宰した。(「一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究」、主任研究者峰松、第二年度;「わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究(The Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement Study: SAMURAI)」、主任研究者豊田、第三年度)。また新たに循環器病研究開発費「新しい脳卒中医療の開拓と均てん化のためのシステム構築に関する研究」(主任研究者峰松)を始めた。産官学連携の国家研究プロジェクト先端医療開発特区(スーパー特区)の「急性期脳梗塞早期系統的治療のための分野横断的診断治療統合化低侵襲システムの開発」をはじめとする多くの研究に主要分担研究者として参加し、基礎医学、医工学との橋渡し研究にも積極的に関わった。

海外との研究協力、海外への情報発信にも努めた。脳卒中関連の日米研究者会合US-Japan Brain Research Cooperative Program(6月、桑港)を山本が米国研究者と企画し、当施設からも多く出席した。脳出血超急性期の適切な降圧療法を探究する多施設共同第Ⅲ相試験ATACH-IIをNIHの助成を受けて米国と共同で、また脳梗塞超急性期の血栓溶解療法の治療可能時間の延長を目指す多施設共同第Ⅲ相試験EXTENDを豪州・アジアと共同で行うべく、日本側窓口として交渉を重ねた。国際学会の招請講演も多く行い、また豊田がAmerican Heart Association機関誌Strokeの編集長補佐に就いた。

脳血管リハビリテーションの依頼件数は年間で1400件を超え、過去最多であった。脳血管部門の他職種と連携しながら脳卒中超早期から介入し、リハビリテーション治療成績向上に努めた。脳卒中均てん化班のリハビリテーションスタッフを対象とした全国意識調査の解析を行った。経済産業省「平成23年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業(維持期リハビリサービス)」の企画立案に協力した。

11月に山口武典名誉総長が瑞宝中綬賞を受勲され、また脳卒中研究への国際的功績に対してKarolinska Stroke Awardをアジアの研究者で初めて受賞された。脳血管内科の誇りであり、皆で喜び合った。

【主な研究成果】

  • 超急性期脳梗塞へのrt-PA静注療法に関する市販後全国全例調査(J-MARS: Stroke 2010)や多施設共同試験(J-ACT2: Stroke 2010)の成果を、峰松が主要著者として発表した。
  • 厚生労働科学研究TIA研究班で多施設共同後ろ向き研究や一般開業医への啓発活動に積極的に取り組んだ。国際共同研究TIA Registryに参加した。
  • 厚生労働科学研究SAMURAI研究班で、rt-PA静注療法多施設共同登録研究のサブ解析を国内外の学会で多く発表し論文化した(Nezu: Neurology 2010)。
  • 循環器病研究開発費脳卒中均てん化班で中学生を対象とした脳卒中啓発活動を推進し、啓発のための資料を多く開発した。
  • 循環器病研究委託BAT研究での抗血栓服用者の血圧経過と出血イベント発症の関連を発表し(Toyoda: Stroke 2010)、抗血栓者への降圧の必要性を喚起した。
  • 多くの修練医が、当施設臨床データに基づく英語原著論文を発表した。また日常診療での臨床的発見を症例報告として論文発表することに努めた。
  • 峰松・豊田が複数の国際学会に招請され、特別講演やシンポジウム発表を行った。

最終更新日:2021年10月08日

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