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血管外科

A. 大動脈手術(人工血管置換)

1. 大動脈基部置換(再建)

大動脈弁輪拡張症を代表とする大動脈基部病変に対し、自己弁温存基部再建(David法ないしはYacoub法)、あるいは人工弁を用いた基部置換(Bentall法)を施行しています。

※自己弁温存術式として変遷がありましたが、現在はValsalva-graftによるValsalva-David法を用いています。対象はMarfan症候群に代表される結合織異常疾患が中心ですが、その他、大動脈解離や上行大動脈の変性による拡張症も含まれます。手術適応に関して、結合織異常疾患症例では、自己弁温存術式の適応は45mmです。なかでもLoeys-Dietz症候群や大動脈解離の家族歴を有する場合は、40~45mmとより早期の手術が推奨されます。その他の症例では、50mmを一応の判断基準としますが、自己弁温存のためには、大動脈弁逆流(AR)が発生する前のより早期の手術が理想的です。最近では、他の遺伝性疾患も見つかっており、早期手術で良好な成績が得られています。

※Bentall手術は1967年に開発された手技ですが、依然として大動脈基部病変に対するgold standardと考えており、弁温存が不可能な症例や、炎症性疾患、高齢者を対象に施行しています。

2. 上行~部分弓部(hemiarch置換)

大動脈解離を含め、主として変性(中膜壊死を含む)を原因とし50~55mm以上の上行大動脈拡大を認める症例が適応となります。変性は上行大動脈から一部弓部大動脈まで及んでおり、ほとんどの症例でhemiarch置換を選択します。その場合、循環停止を必要とし脳合併症が発生する可能性がありますが、現在の中等度ないしは超低体温を用いた順行性脳灌流法の信頼性は高く、頻度的に多くはありません。

3. 弓部全置換

病変が弓部~近位下行大動脈(遠位弓部を含む)に存在する場合には、専用の4分枝人工血管を用いて先の低体温併用選択的順行性脳灌流下に弓部大動脈を全置換します。通常は、正面からの胸骨正中切開下に大動脈瘤に到達しますが、症例により左開胸下に到達する場合もあります。適応は紡錘状瘤では55mm以上ですが、この部位では、嚢状瘤のことがあり、その場合45mm程度から手術適応となります。

【遠位弓部大動脈瘤に対する弓部全置換】
写真

※弓部大動脈を含む広範囲大動脈病変
(1)正中+左開胸ないしは左開胸のみの一期的手術か、(2)正中到達下のエレファントトランク法(Borst、1988)を用いた弓部全置換→左開胸下の下行大動脈置換もしくは経カテーテル的ステントグラフト治療による二期的治療、のどちらかを選択します。若年例に前者を、高齢者や呼吸不全の症例を中心に後者を選択します。最近では、既成ステントグラフトの認可と患者の高齢化に伴い、後者を選択する場合が多くなっています。

【広範囲大動脈瘤に対するエレファントトランク法を併用した弓部全置換→下行大動脈置換ないしはステントグラフト治療による二期的治療】
図 図

4. 胸部下行~胸腹部大動脈置換

左開胸下に到達しますので、重度の呼吸不全の症例は適応外となります(逆に、胸骨正中切開到達の手術は、一秒量が700ml以上あれば十分可能と考えています)。また、なかでも胸腹部置換は追加で開腹(横隔膜切開)を必要とし、侵襲度も大きくリスクの高い手術です。

※脊髄障害(対麻痺)対策
最も危惧される合併症として対麻痺の問題があります。当センターでは、1998年に他に先駆けて以下の1.、2.を導入し対麻痺の防止に努めてきました。
術前のMRIやCTを用いた脊髄栄養血管(Adamkiewicz動脈)の同定、脊髄運動誘発電位(MEP)の術中モニタリング、部分体外循環を用いた遠位側灌流、肋間動脈(脊髄動脈)の再建、脳脊髄液ドレナージ、超低体温法(若年例、広範囲例、大動脈解離例が中心)などを追加し、さらに安定した成績が得られています。

【MRI、CTによるAdamkiewicz動脈の同定】
【脊髄運動誘発電位(MEP)】

【広範囲胸腹部大動脈人工血管置換(左:術前CT、中央:術中写真、右:術後CT)】

5. 腹部大動脈置換

一部の嚢状瘤を除き、通常の紡錘瘤では最大短経45mm以上を一応の手術適応としています。到達法として変遷はありましたが、現在は標準的な腹部正中切開を選択しています。可及的小さめの切開や下腸間膜動脈の再建を行い、手術の質的向上を図っています。年齢を中心にリスク評価を行い、直達手術かEVARかを選択しています。既成ステントグラフトでは解剖学的に困難なものがあり、その場合は手術の適応とします。待機手術成績は死亡率0.5%以下で、欧米(5%と報告)に比べて明らかに良好です。したがって、現在、直達手術 vs. EVARの割合は、6:4 か 7:3程度です。

6. 大動脈解離に対する外科治療

慢性期の手術適応は、非解離性瘤(真性瘤)と同等ですが、Marfan症候群などの遺伝性結合織疾患の場合は45~50mm程度で手術適応とします。

急性A型大動解離
血栓閉塞型の一部(最大短径45mm以下)を除いて、心タンポナーデ(ショック)や臓器障害(虚血)など様々な致死的続発症が発生するため、ほぼ全例が可及的早期の手術適応となります。

※エレファント・トランク(以下ET)法を併用した弓部全置換
エントリー(内膜裂孔)切徐が主たる目的であるため、上行置換ないしは部分弓部置換が標準術式となります。しかしながら、比較的若年例で、エントリーが弓部以遠にあるか、弓部の著しい解離を伴う症例、Marfan症候群症例、などでは、根治性を高めるため、ET法を併用した弓部全置換を積極的に行っています。依然として、臓器灌流を伴う症例、特に冠動脈、脳血管(弓部分枝)の灌流不全の場合に成績が不良ですが、全体では死亡率は数%以下まで改善しています。

【急性A型大動脈解離に対するET法を用いた弓部全置換術】
図

急性B型大動解離
心臓、脳血管が関係するA型解離と異なり、B型解離では致死的な続発症の発生も少なく、ほとんどが保存的治療(血管内科の管理)の対象となります。その後の成績も良好です。ただ、例外的に破裂(切迫破裂)や臓器虚血を伴う、「complicated B dissection」に対しては、下行大動脈置換(超低体温循環停止下)、腹部大動脈開窓術、各種バイパス術などの緊急外科処置を必要とします。準緊急手術の成績は良好ですが、破裂などの緊急手術成績は必ずしも良好とは言えません。最近ではこの分野においても、ステントグラフト治療や血管ステント治療などの血管内治療を積極的に行うようになってきています。

【急性B型大動脈解離に対するTEVAR】
写真

7. 感染性大動脈瘤ないしは人工血管感染に対する同種大動脈(ホモグラフト)を用いた再建術

感染性大動脈瘤や人工血管感染に対しては、通常の人工血管を用いた手術では、大網や筋肉充填を併用しても感染の再発があり成績は不良です。

※同種大動脈(ホモグラフト)
当センターには組織保存バンクがあり、感染に抵抗性のあるヒト同種大動脈を用いて、このような困難な症例にも対応しています。

【ホモグラフト】
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B. ステントグラフト治療(TEVAR・EVAR)

最近では直達手術だけではなく、低侵襲なEVAR・TEVARやハイブリッド治療(手術とEVAR・TEVARの併用)も症例に応じて行っています。2011年にはハイブリッド手術室の運用を開始し、5名の指導医(2017年10月現在のメンバー:血管外科 松田・清家・大村、放射線科 福田、堀)が中心になり週4例ペースで定例手術を行うとともに、緊急手術にも対応しております。

【ハイブリッド手術室】
写真

【大動脈ステントグラフト治療(左:腹部 EVAR、右:胸部 TEVAR)】
図

以前より、手術が困難な少数の症例を中心にオーダーメードの日本製ステントグラフトを施行してきました。大きな転換として、2007年に腹部用の、2008年には胸部用の企業製ステントグラフトの使用が認可され、最近ではその適応を広げています。信頼性の高い製品ですが、未だ長期予後が不明な点があり、解剖学的制約もあって、現段階では80歳以上の高齢者や手術のハイリスク症例を中心に本治療を進めています。

※ハイブリッド治療
特に、弓部分枝(脳血管)、腹部分枝にかかるためステントグラフト単独では困難な症例に、新しい展開として、手術(分枝バイパス)を先行させたハイブリッド手術(図)を積極的に推し進めています。今後、新しい製品が開発、認可され、この部門はますます発展し、より低侵襲で安全な治療として確立されるものと期待します。

【ハイブリッド手術(頸部動脈バイパス→ステントグラフト治療)】
図
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C. 肺動脈血栓塞栓症に対する外科治療

急性、慢性肺動脈血栓塞栓症の外科治療に関しても多くの経験を有します。特に、後者の外科治療は、米国サンディエゴ大学の術式を参考に1995年に当センターに導入し、以後、わが国の主要施設として心臓血管内科(肺循環部門)との共同で、重度の肺高血圧を伴う進行性かつ重篤な本疾患の治療に当たってきました。元々の発症数の違いで、症例数はサンディエゴ校の5%程度に過ぎませんが、手術成績は早期死亡率7%と遜色のない成績が得られています。米国の症例に比べ、末梢側病変を有する症例(手術困難例)の頻度が高く、手術適応を含め今後の検討課題と考えています。幸い、数種の血管拡張剤による内科的治療の有効性が認められ、術後遺残肺高血圧症例や手術適応外症例など、本疾患全体の予後の改善が得られています。

【急性肺動脈血栓塞栓症の摘出標本】
【慢性肺動脈血栓塞栓症の摘出標本】

D. 内臓・下肢動脈置換および末梢血管バイパス

下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)を中心に、動脈瘤に対する人工血管置換術や狭窄・閉塞血管に対するバイパス術を施行しています。放射線科との共同で治療を進めており、カテーテル治療が優先となるが、重症・困難な症例にはバイパス手術を選択している。病変によっては、手術とカテーテル治療を同時に行う「ハイブリッド治療」も施行しています。

最終更新日 2017年10月17日

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