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小児心臓外科

対象疾患・治療法
エブスタイン奇形、エプシュタイン病(Ebstein奇形、Ebstein病)

エブスタイン奇形、エプシュタイン病(Ebstein奇形、Ebstein病)

エブスタイン奇形、エプシュタイン病

右心房と右心室の間にある弁を三尖弁といいます。エブスタイン奇形・エプシュタイン病とはこの三尖弁の弁のつけね(弁輪)が右心室側におちこんでいる先天性の心臓病です。三尖弁の弁の機能や、右心室のポンプの機能の低下を来したり、不整脈を起こしたりします。また心房中隔欠損を合併しているとチアノ-ゼを生じることがあります。


背景

右心房と右心室の間の弁を三尖弁といいます。三尖弁は名前のごとく3枚の弁の膜(弁尖)でなりたっています。弁膜の付け根部分ぐるり一周を弁輪と呼びますが、エブスタイン奇形では、この三尖弁の弁輪が、本来あるべき右心房と右心室の間のところから大きく右心室側におちこんでいる病気です。三尖弁の形態の異常を来していることから、三尖弁機能の異常、右心室のポンプ機能の異常を来たします。また心房中隔欠損を合併しているとチアノ-ゼを来たしたりします。それと、WPW症候群とよばれる不整脈(脈の乱れ、脈が速くなる)の病気を合併していることもよくあります。"Ebstein"を英語読みすればエブスタインだし、ドイツ語読みすればエプシュタインとなります。

症状、経過

エブスタイン奇形では三尖弁の弁輪の落ち込み具合、三尖弁の形の異常、右心室の壁の異常や大きさ、肺動脈弁狭窄の有無、心房中隔欠損の有無など、個々の患者さんによって病気の重症度が全く異なります。新生児期乳児期早期から発症する重症型と、小児期成人期に発症する単純型に分けられます。重症型では、生後早期からチアノ-ゼ、心不全症状(息が速い、脈が速い、冷汗、ミルクが飲めないなど)を来します。高度の三尖弁逆流のため右心房が肺を圧迫するほど著明に拡大します。最近では胎児の超音波検査でみつかる例も増えています。一方単純型では小児期、成人期に、検診でチアノ-ゼ、心雑音を指摘されたり、動悸や運動時の息切れ、胸痛などでみつかる場合があります。

血行動態(血液の流れ)

新生児期乳児期早期に発症する重症型の場合三尖弁の逆流がひどく右心室がポンプの働きができません。右心房と右心室の間で血液がいったりきたりしているため右心房が著明に拡大して、肺を圧迫して呼吸の状態も悪くなります。右心房にかえって来た静脈血は心房中隔欠損を通じて左心房へ流入するため、動脈血に静脈血が混ざり合うチアノ-ゼを来します。肺動脈には右心室からは十分血液が送り出せないので、動脈管を通じて肺の血流を維持していることが多いです。
一方、単純型では三尖弁のおちこみはあっても一応右心室が肺動脈に血液を送り出すポンプ機能は維持されています。三尖弁の逆流により右心房で血液のうっ滞をきたすと右心房の圧が高くなり、体のむくみや不整脈の原因になります。また心房中隔欠損が開いていると、右心房→左心房に血液が逃げるためチアノ-ゼを来します。

診断

心臓超音波検査で診断が確定します。胸部X線検査では通常右心房の拡大のため心臓の影が大きく写ります。いろいろな不整脈を合併していることが多いので、心電図検査、とくに24時間心電図や負荷心電図、動悸の発作が有る場合には発作を起こしているときの心電図検査などが診断上重要です。手術に際しては心臓カテーテル検査でさらに詳しく三尖弁、右心室、肺動脈弁の形態や合併疾患を調べることがあります。また不整脈に対しても電気生理検査といって心臓カテーテルでの診断や治療が有効な場合があります。

治療

新生児重症型は先天性心疾患の中でも救命が最も困難な病気のひとつです。肺への血流は動脈管に依存するため、生後よりプロスタグランディンの点滴を行います。Starnes手術(スターンズ)とよばれる三尖弁の入り口を閉じてしまう手術により救命例が報告されるようになりました。Starnes手術後は最終的にフォンタン手術をおこなえばチアノ-ゼのない状態となり成長発育が可能です。
一方、単純型エブスタイン奇形では、無症状で元気にされている場合には投薬も必要無い場合も多いです。チアノ-ゼのみられる患者さんでは脳梗塞の予防のためアスピリンないしワーファリンにより血栓症の予防をします。不整脈を合併している場合には、不整脈の診断をした上で、不整脈の種類に応じた治療を選択します。チアノ-ゼが有る場合、三尖弁の逆流が中等度以上に進行し心不全症状が出現して来た場合は、外科的治療の対象となります。術式は三尖弁の修復ないし置換術、心房中隔欠損があればその閉鎖術、また不整脈の種類によっては不整脈手術を併せて行うことが有効である場合があります。近年当センターで行われているCone(コーン)手術は三尖弁の形成術の一つですが、安定した成績が得られているため現在ではメインでおこなわれる術式となっていて、成人のEbsteinだけでなく小児、乳幼児にも応用されています。

治療後経過

病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々になります。無治療で経過している患者さんでも抜歯などの歯科治療や、心臓以外の病気でなにか手術を受ける場合、大きなけがをした際には、感染性心内膜炎を予防するために、抗生物質の投与が必要です。

最終更新日:2021年10月08日

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