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小児心臓外科

心内膜床欠損症、房室中隔欠損症(ECD, AVSD)

背景

心内膜床欠損症では心臓の4つの部屋を隔てる弁と壁が真ん中で十字にクロスしているところの異常があります。心房中隔と心室中隔のつなぎ目の欠損なので、房室中隔欠損とよばれたり、左右の心房と心室の間の弁である僧帽弁と三尖弁がくっついてひとつになっているので共通房室弁口とよばれることもあります。心室中隔欠損を伴う完全型と、伴わない不完全型に分けられます。不完全型心内膜床欠損は一次孔型心房中隔欠損と呼ばれることもあります。心内膜床欠損症では房室弁(心房と心室の間の弁、すなわち三尖弁と僧帽弁のこと)の形も正常と異なり、通常は前尖と後尖の2枚の弁からなる僧帽弁では、前尖に切れ込みが入って2つに分かれて3枚の弁からなるといった形の異常が見られます。完全型心内膜床欠損症の約半数~2/3にはダウン症候群(トリソミー21)を伴っています。逆にダウン症候群の患者さんの45%は完全型ないし不完全型心内膜床欠損症を合併しています。またそれ以外の染色体異常や、無脾症候群、多脾症候群などに合併することがあります。

症状、経過

心内膜床欠損症は心室中隔欠損の有無・大きさや、乳児期早期から症状を呈するものから成人期まで無症状で経過するものまで様々です。完全型では生後2、3ヶ月の間に高度の心不全状態に陥ります。すなわち安静時にも呼吸が速く、ぜろぜろといって風邪を引きやすく、体重も増えません。外科治療を受けずに経過した場合、肺高血圧症が進行してゆきます。肺の毛細血管の目詰まりを起こすと手術をしても肺動脈圧が正常化しないので、生後6ヶ月前後までの手術が推奨されます。一方、不完全型では、房室弁の逆流がなければ乳幼児期の発育発達は正常で、小児期も無症状で経過し、検診などで心雑音を指摘されて見つかる場合が多いようです。しかし不完全型であっても、僧帽弁逆流が有る症例などでは、乳児期から心不全症状、肺高血圧症を来す場合もあります。小児期を無症状で経過した後は、青年期、成人期に達してから動悸、運動時息切れといった症状が出始めます。女性の場合は妊娠を契機に症状が出現することもあります。僧帽弁逆流を来してくると急速な症状増悪を引き起こすことがあります。

血行動態(血液の流れ)

疾患の重症度は心室中隔欠損の大きさ、心房中隔欠損の大きさ、房室弁(三尖弁と僧帽弁のこと)の逆流の有無・程度により異なります。完全型では、心房中隔欠損および心室中隔欠損を通して血液が左心房から右心房・右心室に、そして左心室から右心室へと流入するため、肺を流れる血液が多い状態(高肺血流)になり、肺動脈の血圧が高くなります(肺高血圧)肺高血圧の状態が継続すると、肺動脈の壁が固く分厚く変化し、肺の毛細血管の目詰まりを来たします。目詰まりしてしまった血管は手術をして肺動脈を流れる血流が正常化しても、元にもどらないため、肺高血圧が正常化しません(肺高血圧症)。肺動脈の血圧が全身血圧と同等になる高度の肺高血圧症はアイゼンメンジャー症候群とよばれ、血液は右心室から肺動脈へと流れるため静脈血が動脈へ直接流れるチアノ-ゼが出現します。この場合は手術をすると右心室の血流の逃げ場が無くなりかえって寿命を縮めることになります。
不完全型心内膜床欠損症は一次孔型心房中隔中隔と同義で、心房中隔欠損における左心房→右心房の血流を生じます。また僧帽弁に裂隙(れつげき:cleft)と呼ばれる形態異常(前尖の割れ目)を伴っているため、僧帽弁逆流を来すことがあります。僧帽弁逆流がたいしたことがなければ、左心房→右心房の血流の増加分は右心房や右心室が拡大することによって代償されるため、小児期にはあまり症状となって現れません。長期にわたる右心房右心室の拡大は不整脈の原因となり、ひいては動悸息切れといった症状出現に関与します。

診断

聴診所見、胸部X線検査、心電図といった健康診断で通常行われる検査で心疾患が疑われた場合、循環器を専門にしている医療機関で心臓超音波検査を受ければ確定診断がつきます。超音波検査だけで治療の必要性の判断が可能ですが、合併心疾患の有無や、肺高血圧症の程度を調べるために、心臓カテーテル検査が必要となる場合もあります。

治療

完全型心内膜床欠損の赤ちゃんにはまず内科的に強心剤や利尿剤の投与による心不全の管理をします。肺高血圧症を来す前に生後6ヶ月頃を目安に手術をおこないます。手術は人工心肺装置を用いて心房中隔欠損および心室中隔欠損の閉鎖と、三尖弁・僧帽弁の形成術を行います。ただし、未熟児・低体重児で体重増加不良の患者さん、呼吸器感染症の併発などから状態の良くない患者さん、筋性部型心室中隔欠損などを伴っている患者さん、左右どちらかの心室がアンバランスに小さい患者さんなどでは最初から心臓の中を直すのではなく、肺動脈絞扼術といって、心臓の外から肺動脈の出口をテープで締めて血流を制限する処置を行い条件が整うのを待つ場合もあります。
不完全型心内膜床欠損症では人工心肺下に心房中隔欠損の閉鎖および僧帽弁裂隙の閉鎖を行います。診断がついていれば無輸血手術が可能な体重8~10kg以上、小学校就学前を目安にしますが、成人期に僧帽弁逆流や不整脈を来してから診断され手術になる場合も多いです。中等度以上の僧帽弁逆流に対しても僧帽弁人工弁置換術ではなく極力自分の弁を生かした僧帽弁修復術を選択します。また不整脈については、中年期以降に手術をした場合中隔欠損の閉鎖だけでは術後も不整脈が続くことが多いとされています。不整脈の種類によっては不整脈手術の併用が有用なことがあり手術前に十分な検討が必要です。

治療後経過

手術の後は人工心肺を使用した影響による体のむくみを取るために数日ないし数週間、利尿剤といっておしっこの出をよくする薬を用います。手術直後は、人工心肺の影響などから、一時的に肺高血圧の増悪を来す場合もあり、注意が必要です。一酸化窒素といって肺動脈の血圧を下げるガスの吸入を必要とする場合もあります。多くの場合は正常児に近い発育発達が見込まれますが、手術後に、肺高血圧継続、僧帽弁逆流の進行、左心室の出口の狭窄の進行、不整脈などを来すことがあり、定期的なフォローアップが必要です。場合によってはなんらかの内科的治療、外科的治療を必要とすることがあります。

最終更新日 2016年07月25日

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