メニュー

患者の皆様へ

栄養に関する基礎知識

食べ物は命のみなもと...栄養

  1. 栄養素の役割・1
  2. 栄養素の役割・2

食べ物の消化・吸収と代謝

  1. 消化・吸収の過程
  2. 代謝
  3. 過剰・不足が招くトラブル...生活習慣病との関わり

上手に食べる...食事のバランス

  1. バランスのよい食事とは
  2. ライフステージに合った食事

1. 食べ物は命のみなもと...栄養

現在の私たちの食生活は、豊富な食材に恵まれ、多様な味わいの料理を楽しむことができます。食事は家族や親しい人たちとのコミュニケーションの場であり、新しい人との出会いの場にもなります。またお正月や節句など、行事や風土と結びついた文化的な側面もあります。食事にはさまざまな機能や楽しみがありますが、その原点は、生命の維持です。自然界のあらゆる生き物と同じように、人間も食べ物に依存して生きています。従って、食事の内容は身体の機能にさまざまな影響を与えます。食事と身体の関係を、原点にかえって考えてみましょう。

生物が外界から食物を得て、成長し、活力を保ち続ける身体の営みを栄養といい、栄養の源になる物質を栄養素といいます。さまざまな研究から、栄養素の働きと身体の機能や健康との関係が明らかになってきました。その結果、食事で大切なのは、すべての栄養素をバランスよく摂取することだといえます。また、病気などで身体の機能が低下したときには、さらに食事が大切になってきます。栄養素について知ることは、日々の献立を考える助けとなり、健康を保つことや、あるいは病気の治療、回復のために役立つでしょう。

食べ物は命のみなもと...栄養 のイメージ

(1)栄養素の役割・1

栄養素の3つの働き

栄養素はその働きによって、
1)エネルギーになるもの
2)からだをつくるもの
3)からだの調子を整えるもの
の大きく3つに分けられます。

エネルギーになるものは主に糖質(炭水化物)、脂質ですが、糖質の摂取量が足りないと、たんぱく質が分解されてエネルギー源となります。安静にしていても、臓器を動かすなど、生命を維持するためにはエネルギーが必要です。また活動量が多いほど、たくさんのエネルギーが使われます。逆に、活動量で使う分より多くの糖質や脂質をとると、その分は身体に蓄積されます。

からだをつくるものは、筋肉や髪や爪などをつくるたんぱく質、骨や歯をつくるミネラルのほか、細胞膜などをつくる脂質の3つです。中でもたんぱく質は身体のすべての部分をつくることに関係しています。

からだの調子を整えるものはビタミンとミネラルです。体温を調節したり、体内で必要な物質をつくったり、神経の働きに関わるなど、身体の状態を一定に保つために大事な栄養素です。ビタミンの一部を除いては体内でつくることができない物質なので、食事からとり入れなければなりません。

バランスのよい食事とは、これらの3つの要素を必要量に見合った分だけとり入れられる食事を意味しています。

それでは個々の栄養素についてみてみましょう。

●糖質(炭水化物)

パンのイメージ

糖質はエネルギーになる栄養素の中で最も重要なものです。日本人の一般的な食事では、摂取エネルギーの60%前後を糖質で得ています。米、小麦など主食として食べられる穀類のほか、いも類、とうもろこしなどに含まれています。また、果物や砂糖に含まれる糖質もエネルギーとなります。糖質はエネルギーとして使われるほか、脂質の代謝にも関与しています。余った糖質は、グリコーゲンや中性脂肪に形を変えて体内に貯蔵されます。

●脂質

脂質は少量でも高カロリーの効率のよいエネルギー源です。1gの糖質またはたんぱく質の持つエネルギーは4kcalですが、1gの脂質は9kcalのエネルギーを発生します。また、貯蔵脂肪としてエネルギーの貯蔵にも役立っています。このほか脂質には、細胞膜を構成する、身体の機能や生理作用を一定に保つ、食品の脂質部分に含まれる脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の供給源となる、などの働きがあります。

血液中に含まれる脂質には脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4つがあります。次にそれぞれの特徴をあげます。

・脂肪酸
脂肪酸は直接エネルギー源として使われます。また、血圧調節、血液凝固、免疫機能などのさまざまな調節機能に関わる生理活性物質の材料となったり、生体膜の構成成分となります。
脂肪酸は構造の違いにより飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。食品にはこれらが混合して含まれていますが、動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く、植物油や魚類の油には不飽和脂肪酸が多く含まれています。不飽和脂肪酸のうち、リノール酸、リノレン酸は正常な発育や機能の維持に不可欠でありながら体内で合成できないため、食事から摂取しなくてはならず、必須脂肪酸と呼ばれています。
飽和脂肪酸には血中のコレステロールを増やす働きがあり、反対に不飽和脂肪酸にはコレステロールの胆汁への排出を促進して、血中のコレステロールを下げる働きがあります。しかし、不飽和脂肪酸にもとりすぎると動脈硬化やアレルギー反応などに悪影響を与えることもあることから、特定の脂肪酸に偏ることなくバランスよく摂取することが大切といえます。一般的に、脂質の摂取は飽和脂肪酸(動物性脂肪)1に対して不飽和脂肪酸(植物性油や魚類の油)2の割合が望ましいとされています。

代表的な脂肪酸とその特徴

分類脂肪酸名多く含む食品特徴
飽和脂肪酸パルミチン酸動植物油に広く分布融点が高く、常温で固体。
とりすぎると肝臓でのコレステロールの形成を促進し、血液中のコレステロール濃度を上昇させる。
ステアリン酸動植物油に広く分布
不飽和脂肪酸オレイン酸動植物油に広く分布融点が低く、常温で液体。
血液中のコレステロール濃度を低下させる働きがあり、動脈硬化の原因となる血栓の形成を防ぐ。
リノール酸植物油一般
リノレン酸植物油一般
アラキドン酸動物性油脂
エイコサペンタエン酸(EPA)魚油
ドコサヘキサエン酸(DHA)魚油

・中性脂肪
中性脂肪はエネルギー源である脂肪酸の貯蔵形態で、食事から摂取する脂質の大部分を占めます。余った脂質、糖質、タンパク質は中性脂肪となって脂肪組織や肝臓に貯蔵され、必要に応じて分解されてエネルギーとして使われます。

・コレステロール
コレステロールはホルモンや胆汁酸の材料になるほか、脳や神経などの細胞膜の構成成分となります。体内のコレステロールのうち食べ物からとり入れられたものは約3割にすぎず、残りの7割は体内で糖質や脂肪酸を材料に主として肝臓、皮膚、腸粘膜などで合成されたものです。

・リン脂質
リン脂質は細胞膜や脳の組織の構成成分となります。疎水性物質の親和性を保つ役目をしています。

●たんぱく質

肉のイメージ牛乳のイメージ

たんぱく質は多数のアミノ酸がつながったもので、生体のたんぱく質は約20種のアミノ酸からできています。そのうち、人間の身体に必要でありながら体内でつくることのできないものを必須アミノ酸といいます。

体中にとり入れられたたんぱく質はアミノ酸に分解されて、筋肉、皮膚、毛髪、爪、臓器、神経などの細胞組織の成分や、酵素、ホルモン、免疫物質、筋収縮や輸送に関与する物質など、それぞれの働きに必要なタンパク質に生合成されます。

また、糖質の摂取量が足りないときには、分解されてエネルギーとして消費されます。このため、糖質の不足はたんぱく質の本来の機能を奪うことになります。

(2)栄養素の役割・2

●ミネラル(無機質)

生がきのイメージ

人間の身体は約60種類の元素で構成されています。このうち主要元素と呼ばれる水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)が約95%を占めています。その他の元素を総称してミネラルといいます。特に栄養素として不可欠な16種類を必須ミネラルといい、骨や歯、筋肉や血液などの成分となるほか、さまざまな生理作用に関わっています。ミネラルは体内でつくることができないため、食べ物からとらなければなりません。

ミネラルの不足はさまざまな機能の障害を招き、骨粗鬆症や貧血、筋力の低下、味覚障害などの疾患を引き起こすことがありますが、反対に過剰になっても障害をもたらします。(「ミネラルの欠乏症、過剰症」参照)

私たちの食生活になじみの深い食塩(NaCl)は、必須ミネラルのうちナトリウム(Na+)と塩素(Cl-)が結びついたものです。食塩は、血液や体液、組織細胞に含まれ、浸透圧の調節に関与しています。とりすぎは高血圧の原因となることがあるので注意が必要です。(「食塩(ナトリウム)とカリウム 」参照)

次の表に必須ミネラル16種を含む代表的な食品と、その主な働きをあげます。

必須ミネラルを含む代表的な食品とその働き

分類ミネラル名多く含む食品働き
必
須
ミ
ネ
ラ
ル
主
要
元
素
*
ナトリウム食塩、みそ、しょうゆ浸透圧の維持、pHの調節、水分平衡の維持など
塩素食塩、みそ、しょうゆ浸透圧の維持、pHの調節、胃液の塩酸成分となる
カリウムいも類、野菜類、果物類エネルギー代謝、浸透圧・pHの維持、血圧調節、神経刺激の伝達、電位差の維持、水分保持など
カルシウム牛乳・乳製品、小魚、海藻類、大豆製品、野菜類骨・歯の主成分となる
血液凝固、筋肉の収縮、神経の興奮抑制などに関与
マグネシウム食品中に広く分布 特に緑黄色野菜や海藻類などの植物性食品エネルギー代謝、筋肉の収縮、神経機能、ホルモン分泌、体温調節など
リン食品中に広く分布 食品添加物など骨・歯の成分、細胞の構成成分となる
エネルギー代謝、体液の浸透圧、酸塩基平衡の調節など
イオウたんぱく質を含む食品に広く分布含硫アミノ酸の構成成分(毛髪や爪の構造たんぱく質)となる
微
量
元
素
*
鉄レバー、貝類、卵黄、緑黄色野菜、ひじき酸素の運搬・貯蔵に関与、酵素の成分となる
亜鉛かき、肉類、小麦胚芽酵素の構成成分、核酸代謝、細胞分裂に関与
銅野菜、穀物(特にピーナツ類)、肉類酵素の構成成分、鉄の吸収・貯蔵の促進、成長促進、免疫機能など
マンガン穀類、種実、野菜類、抹茶酵素の構成成分、骨形成
コバルト葉菜類、肉類、臓器類補酵素、ビタミンB12の成分となる
クロム食品中に広く分布 野菜、穀物、肉、魚など糖代謝、脂質代謝に関与
ヨウ素海藻類、貝類甲状腺ホルモンの構成成分となる
モリブデン乳製品、豆類、穀類、レバー補酵素となる
セレン魚肉、獣鳥肉、小麦、大豆酵素の構成成分となる、抗酸化作用

*食事からの摂取量が1日当たり100mg以上のものを主要元素、100mg以下のものを微量元素と分類

●ビタミン

小松菜のイメージ

ビタミンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助け、生命を維持するための生理作用に不可欠な栄養素です。ビタミンには脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類があります。脂溶性ビタミンは脂質と一緒に体内に貯蔵することができますが、水溶性ビタミンは体内に貯蔵できる日数が脂溶性ビタミンにくらべ少ないため、不足しないようこまめに摂取することが必要です。またミネラルと同様、さまざまな生体反応に関わっているため、不足や過剰摂取により多くの機能障害を起こします。(「ビタミンの欠乏症、過剰症」参照)

次に各種ビタミンを含む代表的な食品と、その主な働きをあげます。

各種ビタミンを含む代表的な食品とその働き

分類ビタミン名多く含む食品働き
脂
溶
性
ビ
タ
ミ
ン
ビタミンA
(カロチン)
レバー、卵黄、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、魚など網膜で光を関知する物質の成分となる
成長の促進、皮膚粘膜の形成など
ビタミンD卵黄、脂肪の多い魚、牛乳・乳製品、きのこ類などカルシウムの吸収・骨形成の促進
ホルモン分泌の調節、免疫の調節など
ビタミンE食品中に広く分布 特に植物油、種実類、小麦胚芽など抗酸化作用など
ビタミンK食品中に広く分布 特に緑葉野菜、植物油、豆類、海藻類など
(腸内細菌による生合成もあり)
血液凝固に必要な物質の生成に関与
骨形成の促進など
水
溶
性
ビ
タ
ミ
ン
ビタミンB1豚肉、玄米、豆類、内臓類など糖質の代謝などに関与
ビタミンB2レバー、卵、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類など
(腸内細菌による生合成もあり)
糖質、たんぱく質、脂質の代謝のほか、さまざまな酸化・還元作用に関与
ナイアシン食品中に広く分布 特に魚介類、肉類、藻類、種実類など多くの酸化・還元作用に関与
ビタミンB6食品中に広く分布 特に種実類、穀類、肉類など
(腸内細菌による生合成もあり)
たんぱく質の代謝に関与
ビタミンB12レバー、肉類、魚肉、貝類、卵、牛乳・乳製品など
(腸内細菌による生合成もあり)
核酸の合成などに関与
葉酸豆類、緑黄色野菜、レバーなど核酸合成、たんぱく質代謝、赤血球の生成に関与
パントテン酸食品中に広く分布 特にレバー、酵母、卵黄、豆類など 
(腸内細菌による生合成もあり)
糖質、脂質、たんぱく質代謝に関与
コレステロール、免疫抗体などの生成に関与
ビオチン食品中に広く分布 特にレバー、豆類、穀類、卵黄、ローヤルゼリーなど
(腸内細菌による生合成もあり)
脂質の代謝などに関与
皮膚や神経組織、甲状腺などの機能を正常に保つなど
ビタミンC柑橘類、緑葉野菜、いも類酸化・還元反応、代謝などに関与、抗酸化作用
※最も多く必要とされるビタミン

●食物繊維

海藻のイメージ

食物繊維は、人の消化酵素で消化されない食物中の成分の総称です。食物繊維は主に穀類、野菜、果物、いも類、海藻、甲殻類などに含まれています。

食物繊維の多い食べ物は自然とかむ回数を増やし唾液の分泌をうながすほか、少量で満腹感が得られ、食べすぎの防止に役立ちます。同時に、小腸での糖質の消化吸収をゆるやかにするため、血糖の上昇が抑えられて糖尿病の予防につながります。また、コレステロールや胆汁酸を吸着するものもあり、血中コレステロール値も抑えることができます。大腸では腸内細菌による発酵を受けてエネルギー源(短鎖脂肪酸)を生成するほか、腸内の発がん性物質などの有害物を抑える有効な菌を増やします。また便容量が増えることや、腸内細菌が生成したガスの刺激を受けることで、排便がうながされて便秘が予防されます。

水について

水が体重に占める割合は成人で平均60%~66%です。その3分の2は細胞内液で、残りが血漿、組織間液などの細胞外液となっています。
水は短時間で体内に吸収されて、酸素や吸収された栄養素を血液などに溶かし、すべての細胞に運びます。また老廃物を体外に運ぶことも重要な役目です。汗などでの体温の調節、体液の成分のバランスを保つ役割も担っています。

2. 食べ物の消化・吸収と代謝

摂取した食べ物は、そのままの形では身体のために働くことができません。食べ物を身体にとり入れられるように消化器官で分解することを消化といい、消化器官から体液中にとり込まれることを吸収といいます。

各消化器官は動きながら、消化液の働きによって栄養素を吸収しやすい大きさに分解していきます。消化された栄養素は主に小腸から吸収されます。栄養素の多くは毛細血管から肝臓に集められ、必要に応じて静脈から心臓を通って全身へ運ばれます。一方、脂質はリンパ管から静脈を通って同様に全身へ運ばれます。

吸収された栄養素をエネルギーや身体に必要な物質に生成することを代謝といいます。吸収・代謝の後に残った物質は、便や尿として排泄されます。

次にそれぞれの過程を詳しく述べます。

(1)消化・吸収の過程

消化器官の位置と名称の模式図
吸収の経路の模式図

 

消化器官は、それぞれに運動しながら消化液の働きによって、摂取した食べ物を小さい分子に分解します。大部分の栄養素が小腸で吸収されます。では、口から始まる消化の過程をみていきましょう。

1)口...食べ物をとり入れ(摂取)、かみ(咀嚼)、唾液と混ぜて飲み込む

口では食べ物をかみ砕いて細かくし、唾液と混ぜて飲み込みます。唾液には糖質を分解する酵素が含まれていて、食べ物と一緒に飲み下されて胃に入った後も、胃液が働くまで作用し続けます。唾液の分泌をうながすためには、よくかむことが大切です。また、かむ回数が多いほど満腹感が得られ、脳もリラックスすると考えられています。唾液と混ぜられた食べ物は食道に送られます。

2)胃...摂取した食べ物をかゆ状に消化、胃液によってたんぱく質を分解

胃は、食道から送られてきた食べ物を一時ためて、胃の運動によって食べ物を胃液と混ぜ合わせてかゆ状にします。胃液にはたんぱく質分解酵素のペプシンや、塩酸、粘液などが含まれます。塩酸にはカルシウムを水溶性にして小腸での吸収を助けたり、細菌の繁殖を防ぐなどの働きがあります。胃の内容物が十二指腸に入ると、胃液の分泌は抑えられます。

3)十二指腸...膵液、胆汁を混ぜる

胃の内容物が十二指腸へ送られると、膵臓から膵液、胆のうから胆汁が分泌されます。膵液は糖質、脂質、たんぱく質を分解する消化液です。また胆汁は脂肪の乳化を行い、吸収を助けます。十二指腸でこれらの消化液と混ぜ合わされた内容物は、小腸に送り込まれます。

4)小腸...大部分の栄養素を吸収

小腸ではさらに腸液が分泌され、ほとんどの栄養素が分解、吸収されます。吸収された栄養素は、下の2つの経路を通って全身へ運ばれ、さまざまな器官で利用されたり、貯蔵されます。

  1. 腸の毛細血管→門脈→肝臓→静脈→心臓→全身へ
    糖質、一部の脂肪酸、たんぱく質、ミネラル、水溶性ビタミン、水
  2. リンパ管→胸管→静脈→心臓→全身へ
    脂質、脂溶性ビタミン

5)大腸...未消化物(主に食物繊維)を微生物によって分解し、排泄

大腸では小腸で吸収されなかった水分とミネラルが吸収されます。また、さまざまな腸内細菌が常に活動していて、食物繊維などの未消化物を発酵によって分解し、排泄しやすいようにします。また、その分解産物の一部が吸収されます。消化されずに最後まで残ったものは、便として体外に排泄されます。

(2)代謝

消化器官から吸収した栄養素、またはいったん体内に貯蔵した栄養素を、エネルギーや生命の維持に必要な物質に変える作用を、代謝といいます。

代謝で大きな役割を担っている臓器が肝臓です。エネルギー源となるグリコーゲンを貯えて必要に応じてエネルギーを生成するほか、身体の作用に必要なたんぱく質の生成および分解、コレステロールの生成、アルコールや身体に有害な物質の分解や解毒などの働きがあります。ビタミンやミネラルの一部は、肝臓で行われる代謝に利用されます。
また、エネルギーの生成、たんぱく質の生成および分解は筋肉組織など身体のさまざまな細胞によっても行われています。

代謝の中でも、身体的・精神的な安静の状態での呼吸、血液の循環、排泄、体温の維持など、生きるために最低限必要なエネルギーの生成のことを基礎代謝といいます。

●糖質(炭水化物)

糖質の代謝の模式図

消化によってグルコース(ブドウ糖)などに分解された糖質は、小腸粘膜から吸収された後、肝臓に運ばれます。肝臓に運ばれたグルコースは、そのまま血液中に運ばれて、各組識でエネルギー源として利用されるほか、肝臓や筋肉ではグリコーゲンとして蓄えられます。グリコーゲンは再びグルコースに転換されてエネルギーの生成に使われます。糖質からエネルギーをつくった後に残るものは、二酸化炭素と水だけです。残った二酸化炭素は吐き出す息から排泄され、水は尿や汗となって排泄され、身体には残りません。

グリコーゲンの貯蔵量には限界があり、余分なグルコースは脂質となって肝臓や脂肪組織に貯蔵されます。そのため、糖質をとりすぎると肝臓や脂肪組織に脂質がたまり、肥満や脂肪肝につながります。

肝臓の役割

必要に応じてグリコーゲンからグルコースを遊離して血液中に送り出し、身体の各組織にエネルギー源として供給します。脳および神経細胞も、この血液中のグルコースを分解してエネルギーを得ています。血液中に送り出されたグルコースの量が、血糖値です。

●脂質

脂質の代謝の模式図

消化作用を受けて分解された脂質は、小腸から吸収され、血液によって皮下、腹腔、筋肉の間などにある脂肪組織に運ばれて体脂肪として貯蔵されます。それは、エネルギーが不足すると必要に応じてエネルギー源として消費されます。

糖質と同様にエネルギーをつくった後に残るものは、二酸化炭素と水だけです。残った二酸化炭素は吐き出す息から排泄され、水は尿や汗となって排泄されます。

肝臓に貯えられた脂質からはコレステロールがつくられます。その大部分が胆汁の成分として使われますが、そのほか細胞膜や神経の成分となったり、ステロイドホルモンの原料になります。

肝臓の役割

脂質を貯蔵してエネルギーとして利用します。また脂質を分解して、それらを身体に必要な物質に生成したり、細胞膜やステロイドホルモンをつくるために必要なコレステロールを生成しています。

●たんぱく質

たんぱく質の代謝の模式図

食物中のたんぱく質はアミノ酸に分解され、小腸から吸収されます。そして肝臓に運ばれたアミノ酸は一部がたんぱく質に合成され、その他のアミノ酸は血液によって身体の各組織に運ばれ、組織たんぱく質に合成されます。いったん合成されたたんぱく質は一定の割合でアミノ酸に分解され、絶えず新しく合成されるたんぱく質と入れ替わっています。また、ホルモン、血球、免疫物質の形成などにも使われます。

不要になったアミノ酸から出る窒素化合物は肝臓で尿素に変えられ、腎臓を経て尿中に排泄されます。

また、たんぱく質を構成する炭素、水素、酸素はエネルギーとしても利用され、その後に二酸化炭素、水となって排出されます。

肝臓の役割

アミノ酸の分解、体たんぱく質や免疫物質の生成を行います。また、アミノ酸の分解によって生じる窒素化合物の大部分を無毒の尿素に変換して、尿中に排泄する役目も果たしています。

(3)栄養素の過剰・不足が招くトラブル

食事で大切なことは、それぞれの栄養素を過不足なくとることです。食べ物が豊かになったことから、私たちは好きなものをいつでも食べられるようになりました。

そうした食生活から、栄養素のバランスがくずれると、身体の消化・吸収・代謝にも影響が出てきます。また過食による肥満は、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の原因やさらなる悪化にもつながるので注意が必要です。バランスのよい食事は生活習慣病の予防になるのです。

●糖質

過剰にとった糖質は肝臓や脂肪細胞で脂肪に生成されて貯蔵され、肥満の原因になります。糖質が不足すると、脂質より先にたんぱく質がエネルギー源として消費され、たんぱく質本来の働きを妨げることになります。また、糖質は脂質の代謝にも関わっているため、脂質の代謝がスムーズに行われなくなります。

●脂質

魚のイメージ

また、とりすぎて問題となるのがコレステロールと中性脂肪です。コレステロールのとりすぎは動脈硬化を招き、心臓疾患や脳梗塞につながります。牛肉や豚肉に多く含まれる飽和脂肪酸には、血中のコレステロールを増やす働きがありますので、とりすぎないよう注意が必要です。これに対して、魚油や植物油に含まれる不飽和脂肪酸には血中コレステロールを下げる働きがあるので、比較的安心してとることができます。日本人が欧米人に比べて心筋梗塞が少ないのは、この不飽和脂肪酸を多くとることも関係するといわれていますが、近年では日本人のコレステロール値も高くなっており、問題とされています。

一方、コレステロールにはホルモンや細胞膜の成分となる重要な働きがありますので、少なくなりすぎると細胞膜や血管壁がもろくなるなどの異常があらわれます。(「代表的な脂肪酸とその特徴」参照)

●たんぱく質

身体の組織をつくるたんぱく質は、特に発育期、妊娠期には十分に摂取する必要があります。食品によってたんぱく質に含まれるアミノ酸の種類が異なるため、必須アミノ酸(身体に必要で体内では合成できないアミノ酸)をたくさん含んでいる卵、肉類、魚、大豆食品、米をバランスよく組み合わせることで、より栄養価の高いたんぱく質を得ることが大切です。ただし、肉類の場合は同時に飽和脂肪酸も摂取することになる点を考慮して、食事にとり入れる割合を考えましょう。

また、たんぱく質の過剰な摂取は老廃物である窒素化合物を増やし、腎臓に負担をかけることになるので、腎臓病の人は注意が必要となります。

●ミネラル(無機質)

干ししいたけのイメージ

ミネラルは身体のさまざまな作用に関係していますが、身体の中でつくることができないため必要量を食事からとらなければなりません。中でも、食生活の変化によって、日本人はカルシウム不足が問題となっています。骨粗鬆症の防止のためにも、意識的にカルシウムを摂取しましょう。

また、リンはカルシウムが骨になるのを助ける働きをしますが、とりすぎると骨から血液中に溶け出すカルシウムの量を増やしてしまい、反対にカルシウム不足になってしまいます。リンは多くの食品に含まれている上に加工食品や清涼飲料の保存料にも使われているため、現代の食生活では過剰摂取気味です。摂取量に気をつけるとともに、一緒にカルシウムを多く含む食品をとるようにしましょう。

現在の食生活では鉄の不足も問題となっています。鉄は主に赤血球の成分として、酸素や二酸化炭素の運搬などに関わっており、不足すると鉄欠乏性貧血を起こします。特に思春期の女性には、貧血は起こさないものの体内の貯蔵鉄が減少している潜在性鉄欠乏者が多くみられます。閉経前の女性は男性より2割ほど鉄を多く必要としますので、積極的に摂取しましょう。

そのほかにも、亜鉛の欠乏による味覚異常、ヨウ素の欠乏による甲状腺腫などが問題となっています。

近年、ミネラルの補給源としてサプリメントを使う人が増えていますが、過剰摂取による障害を招くことがありますので、食事の内容と必要量を考えて服用することが必要です。

食塩(ナトリウム)とカリウム

1日の食塩摂取量は男性8g、女性7gが望ましいとされていますが、日本人の食生活では平均9.9g(平成28年国民健康・栄養調査)と多めです。食塩に含まれるナトリウムには血圧を上げる作用があるため、高血圧を招き、動脈硬化を促進してしまいます。また、体内のナトリウムが多くなると、その濃度を下げるために水を多く飲んだり、尿の排泄が少なくなったりして、体内の水分量が増えてむくみの原因になることもあります。体内水分量の増加は心臓に負担をかけ、血圧も上昇するという悪循環にもなります。食塩の摂取を控えめにすることを日常的に心がけましょう。

また、ナトリウムとカリウムは腎臓で排泄量を調整していますが、カリウムはナトリウムの排泄をうながして血圧を下げる働きがあるので、健康な人はナトリウムと同量程度とるように心がけましょう。慢性腎不全などで腎臓の機能が低下している方は、腎臓に負担のかからない摂取量について、医師・栄養士の指導を受けてください。

以下に必須ミネラル16種の代表的な欠乏症、過剰症をあげます。

ミネラルの欠乏症、過剰症

分類ミネラル名欠乏症過剰症
必
須
ミ
ネ
ラ
ル
主
要
元
素
ナトリウム倦怠感、食欲不振、嘔吐、意識障害など、筋肉痛、熱けいれんなど高血圧、胃がんの促進など
塩素食欲不振、消化不良特になし
カリウム脱力感、食欲不振、不整脈など高カリウム血症
カルシウム骨の発育障害、骨粗しょう症、テタニー(血清カルシウム低下によって起こるけいれん症状)、てんかんなど泌尿器系結石、他のミネラルの吸収阻害など
マグネシウム循環器疾患(特に虚血性心疾患)軟便、下痢など
リン副甲状腺機能亢進症、骨疾患などカルシウム吸収阻害
イオウ特になし(可能性としては皮膚炎、爪や髪の発育障害、解毒力の低下など)特になし
微
量
元
素
鉄鉄欠乏性貧血鉄沈着症
亜鉛成長障害、食欲不振、皮疹、創傷治癒障害、うつ状態、免疫能低下、味覚異常、生殖能異常、催奇形性など胃腸の刺激、血清アミラーゼ値の上昇、膵臓の異常、LDLの増加、HDLの低下、免疫能の低下など
銅貧血、毛髪異常、白血球減少、骨異常、成長障害などウイルソン病(銅蓄積による肝・脳の機能的・形態学的変化)
マンガン骨病変、成長障害など運動失調、パーキンソン病など
コバルト悪性貧血特になし
クロム耐糖能低下、糖尿病、高コレステロール血症、動脈硬化、角膜疾患など腎不全、呼吸障害など
ヨウ素甲状腺腫甲状腺腫、甲状腺機能亢進症の悪化
モリブデン成長遅延銅の排出促進による銅欠乏症
セレン心筋障害など疲労感、焦燥感、毛髪の脱落、爪の変化、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、末梢神経障害など

※赤い文字で示した欠乏症、過剰症は、現在日本人が特に気をつけなくてはならないと指摘されているものです。この他のミネラルの多くは、通常の食生活をしている人、通常の健康状態の人では、欠乏や過剰の心配はほとんどありません。ただし、非経口栄養を行っている人、代謝異常がある人、激しい下痢や嘔吐などによる栄養素の損失がある人、抗生物質などの薬剤を服用している人は注意が必要となります。また、大量摂取により急性中毒症状があらわれるものがありますので、サプリメントや錠剤等の誤飲、安易な服用には注意が必要です。

●ビタミン

水溶性ビタミンは身体に貯蔵される量が少ないので、不足とならないよう、常に摂取することを心がけましょう。脂溶性ビタミンは体内に蓄積されますから、とりすぎると頭痛、吐き気などの過剰症が出る場合があります。近年では栄養補助食品でビタミンを補充することもできますが、この場合にも過剰摂取にならないように注意が必要です。以下に各種ビタミンの代表的な欠乏症、過剰症をあげます。

ビタミンの欠乏症、過剰症

分類ビタミン名欠乏症過剰症
脂
溶
性
ビ
タ
ミ
ン
ビタミンA夜盲症、皮膚乾燥症、細菌への抵抗力の低下、成長障害など脱毛、皮膚の剥離、食欲不振、肝障害、胎児催奇形など
ビタミンD骨や歯の成長障害、骨粗しょう症、骨軟化症高カルシウム血症、軟組織の石灰化、腎障害、胎児催奇形など
ビタミンE溶血性貧血、神経障害など下痢など*
ビタミンK乳児の出血症1)、出血傾向、血液凝固遅延など高ビリルビン血症など*
水
溶
性
ビ
タ
ミ
ン
ビタミンB1脚気(主に心臓と神経系の障害)、ウェルニッケ脳症(中枢神経障害)など-
ビタミンB2成長障害、口唇炎、舌炎、皮膚炎など-
ナイアシンペラグラ(皮膚炎、下痢、精神障害など)皮膚発赤作用、消化管・肝臓の障害など*
ビタミンB6皮膚炎、神経障害、成長停止、体重減少、けいれんなど神経障害、シュウ酸腎臓結石など*
ビタミンB12悪性貧血、末梢神経障害など-
葉酸悪性貧血、妊娠中の欠乏で出産児に神経管閉鎖障害2)-
パントテン酸成長停止、皮膚・毛髪の障害、末梢神経障害など*-
ビオチン皮膚炎、脱毛、けいれんなど 
ビタミンC皮下出血、歯肉からの出血、壊血病など-

*報告はあるが症例が少ない、または関係が明確ではないもの。実験報告のみのもの。
1)最近では予防のために新生児に対してビタミンKの投与が行われている。
2)欧米においては妊娠を予定している女性に対する葉酸の補給が予防に有効と指摘されている。

●食物繊維

食物繊維はその働きによって大腸がんの発生率を低下させるほか、肥満予防、血圧の低下にも有効です。近年の食生活で不足しがちであることが指摘されているものの1つですので、積極的にとるようにしましょう。ただし、食物繊維の多い食品の中でも果物は果糖が多く、食べすぎは糖質の過剰摂取につながります。また、とりすぎて下痢症状を起こしてしまうと、身体に必要なミネラルなどの成分を排出してしまいますので注意が必要です。

●水

成人は1日に食事その他から1.3~1.5リットル、飲む水分として1.2~1.5リットルの計2.5~3リットルの水分を摂取し、ほぼ同量を排泄します。通常、排泄量の約3分の1が汗や吐く息から自然に排泄され、残りは尿として排泄されています。体内の水分は飲水や排尿などによって一定に保たれていますが、体内の水分の10%が失われると身体機能に異常があらわれ、20%が失われると死に至ることもあります。このように水分の摂取は大切ですが、糖質やナトリウムを含む清涼飲料は飲みすぎに注意しなければなりません。

3. 上手に食べる...食事のバランス

(1)バランスのよい食事とは

食べ物から得られる栄養素には、体を健康な状態に保つための重要な働きがあります。それぞれの栄養素の働きが複雑に関わることで体の状態が健康に保たれているので、食事の内容に偏りがあると、せっかくとり入れた栄養素が十分に働くことができなかったり、余分な栄養素が蓄積されて肥満となり、やがては生活習慣病を招くことにもなります。バランスのよい食事を、決まった時間に必要な量だけとることは、健康を維持する基本となります。

1)献立のたて方

主食・主菜・副菜のイメージ

献立を考える上で大事なポイントは、

  1. エネルギーになるもの
  2. からだをつくるもの
  3. からだの調子を整えるもの

の3つの要素を毎食とり入れることです。それには、

  1. 主食(炭水化物などによるエネルギー源)
  2. 主菜(主要なたんぱく質・脂質源)
  3. 副菜(ビタミン・ミネラル源)

の組み合わせが基本となります。

エネルギーになるものには糖質(炭水化物)、脂質、たんぱく質があり、そのバランスも重要です。全エネルギーを100とした場合、理想的なバランスとされるのは糖質50~65%、脂質20~30%、たんぱく質13~20%です。(くわしくは、日本人の食事摂取基準(2020年版)を参考にしてください。)

近年、減塩に配慮した日本型の食生活が理想的な献立として見直されていますが、そのすぐれている点に、主食をご飯として、主菜、副菜がよいバランスになっていることや、それぞれの食品の相互関係のよさがあげられます。

また、盛り付けたときに彩りのよい食卓は、緑黄色野菜や、栄養的に必要とされているものが上手に組み合わされている結果ともいえますので、色彩も献立を考える上での助けにしましょう。

2)調理のポイント

バランスのよい食事をおいしく食べるためには、調理に気を配ることも大切です。
食塩、脂質のとりすぎにならない調理を日ごろから心がけましょう。

  1. 素材の持ち味をいかす
    食材にはそれ自体が持っている味わいがあります。旬の新鮮な材料をとり入れて、季節感のある食卓にしましょう。
  2. 切り方にも工夫を
    家族の年齢や状態を考えて、切り方や食品の大きさも工夫して調理するとよいでしょう。
  3. いろいろな味を食卓に
    こんぶのイメージ にぼしのイメージ
    味覚には甘味・酸味・塩味・苦味・旨味といったものがあります。献立が1つの味だけに偏らないように、バリエーションのある豊かな献立にしましょう。一品は味のはっきりしたものにして、ほかを薄味にするなどメリハリをつけてもよいでしょう。
    酸味を上手に使って、献立の味付けに変化をつけると、食塩も減らすことができます。
    "だし"など旨味をきかせた調理法は、食品の味を引き立てます。こんぶ、かつお節、干ししいたけのもどし汁のほか、魚介類、肉から出るスープを上手に使いましょう。
  4. 香りや香ばしさをいかして
    しそ、みょうが、三つ葉、柚子など、香りのよい食品も薬味などに積極的に使いましょう。こしょう、カレー粉など香辛料も効果的に使いましょう。最近は洋食で利用されるハーブも手に入りやすくなっています。また、きのこ類なども食卓に香りを添えてくれる食品です。焼き物にしたり、炒った胡麻でつくる和え物などは、香ばしさを楽しむことができます。
    揚げ物、油炒め、ドレッシングなど、油を使っての調理法は、満腹感を得ることができ、エネルギーの必要な人にはよいでしょう。ただし、脂質のとりすぎにならないように、十分気をつけましょう。
    しそのイメージ
  5. 温度や歯ごたえを考える
    温かい食べ物を温かく、冷たいものを冷たく適切な温度で食べることも食事をおいしくいただくコツです。また、軟らかいものばかりや硬いものばかりにならないように、おいしく満足できる歯ごたえも考えて調理するとよいでしょう。
  6. 盛り付けに工夫を
    盛り付けや彩りのきれいな食卓は、食欲をうながし、満足感を与えます。
  7. 加工食品を利用するとき
    忙しいときには加工食品を利用することもよいでしょう。加工の過程で栄養分が失われることもありますので、加工の内容に気をつけて、多すぎない程度に賢く使いましょう。調理済みの加工食品は比較的食塩が多めですので注意が必要です。栄養成分やエネルギーの表示を参考にしましょう。
    主菜に加工食品を利用する場合は、副菜に野菜や海藻などの料理を添えるとよいでしょう。(「加工食品の栄養表示の例」参照)

3) 食べるときのポイント

実際に食べるときに気をつけることを次にあげてみました。

  1. 食事と時間
    朝食、昼食、夕食と、規則正しく食べましょう。間食は菓子など嗜好品は控え、牛乳や果物などにするとよいでしょう。夜9時以降または、寝る3時間前以降の夜食は控えましょう。
  2. 薄味に慣れましょう
    薄味に慣れ、濃すぎない味付けを習慣にしましょう。
  3. よくかんで食べよう
    よくかんで食べましょう。よくかむことは消化を助け、食べすぎを防ぐことにもつながります。
  4. 食塩摂取量に気をつけて
    食塩をとりすぎない工夫を日ごろから心がけましょう。漬け物や汁物の量と回数を減らすと効果的です。麺類の汁は全部飲まないで残すとよいでしょう。刺身のしょうゆや、トンカツのソースなどは、かけて食べるより、つけて食べると食塩摂取量を少なくすることができます。(「減塩について」のページ参照)
  5. 食べすぎにならないように
    腹八分目のイメージ
    食べすぎないように気をつけましょう。早食いは胃などに負担をかけ、食べすぎの原因になります。昔から言われている「腹八分目」になるよう、心がけましょう。

4) 外食のポイント

現代人の忙しい生活では、外食をまったく利用しない食生活は考えにくくなっています。外食での問題点は、脂質、糖質や食塩の摂取量が多くなり、ビタミン、ミネラル、食物繊維が少なくなることです。

外食でも、ちょっとした心がけでバランスをよくすることができます。次のようなことに気をつけて、上手に外食を利用してください。

  1. メニューで工夫を
    単品のメニューより主食、主菜、副菜のそろった定食スタイルのメニューのほうが、栄養のバランスよく食べることができます。主食どうしの組合せの、ラーメンとチャーハンやめんとごはんなどのセットメニューは控えましょう。また、たんぱく質と主食が中心のメニューであれば副菜となるものを足すなどの工夫をしましょう。
  2. 1食・1日・1週間単位でバランスを
    1日の合計エネルギーが同じでも、1食に集中して食事をすることは、好ましくありません。3食均等ぐらいを心がけ、揚げ物を続けて食べない、外食で不足した栄養素は家で補う、同じメニューにかたよらないなど、1日あるいは1週間単位のバランスを考えることも必要です。
  3. 脂質の多いものに注意
    ファーストフードなどの場合は特に、エネルギー量に対して脂質が多く含まれているので気をつけましょう。また、ファミリーレストランではメニューにエネルギーが表示されていることが多くなりました。こうした表示も参考にしましょう。

(2)ライフステージに合った食事

私たちの身体は、体内に生命として宿ったときから、生まれて成長していく過程、その後の年代ごとにふさわしい栄養のとり方があります。その人の年代や生活形態に合った食事を知ることも、健全な毎日を送る上で大切なことです。それぞれのライフステージの問題点と食事のポイントをあげてみましょう。

妊婦・授乳婦と乳児

乳児のイメージ

新しい生命は母体から栄養を得て成長しますから、妊婦が十分な栄養をとることは、妊婦自身の健康を維持し、胎児を健やかに育てる基本です。妊娠前期はつわりなどで思うように食べられないこともあります。この時期は胎児が栄養不足になることはありませんので、少しずつ食べられる物を食べるようにしましょう。妊婦のエネルギー所要量は通常より高くなりますが、食べすぎは肥満による妊娠高血圧症候群(HDP)や難産の要因にもなりますので注意しましょう。安定したら、適度な運動も心がけるとよいでしょう。

妊婦、授乳婦は特にたんぱく質、カルシウム、カリウム、ビタミンA・C・D・E・K、葉酸、鉄が通常より多く必要になります。必要量を上手にとれるよう食事に気をつけましょう。

母乳には免疫物質が含まれていて、身体の機能が未発達な乳児の健康に重要な役割を果たしています。ただし、新生児期の母乳にはビタミンKの含有量が少なく、乳児の腸内での生産量も低いため、ときにより欠乏症予防のために誕生時にビタミンKを投与することもあります。

乳児期は体重の約75%が水分で、成人より脱水症になりやすい傾向があるため、水分の補給も大切です(妊婦や乳児の食事については各自治体の保健所で指導してくれますので、必要な場合は問い合わせてください)。

小児、青少年

高校生のイメージ

成長期の小児、青少年は体組織を構成するたんぱく質、ミネラルを十分にとる必要があります。特に小児、青少年は筋肉や血液をつくり、内臓が発育する時期なので、一生で最もたんぱく質を必要とします。乳製品はこの時期に重要な栄養源となります。脳の成長のためにもバランスのとれた食事がとても大切になります。

小児は成人より汗が多く出るので、大量に汗をかいたときなどは十分な水分補給をして脱水症の予防が必要です。

近年は偏食、不規則な食事、運動不足などから小児の肥満、骨折、むし歯、青少年期の女子の貧血が多くみられるようになりました。子供のころの食生活はその人の一生の健康に大きく影響します。周りの大人が気をつけて、楽しくバランスよい食事ができるようにしていきたいものです。

成人

身体的な成長、発達は20歳前後でほぼ完成されます。身体が完成した成人の食生活では、生活に応じたエネルギー量を過不足なくとれるバランスよい食事が求められます。

生命を維持するための必要最小のエネルギーを基礎代謝といいます。これに身体活動レベルを掛けたものをエネルギー必要量といいます。必要量にくらべてエネルギー量が多すぎる食事を続けることは肥満を招き、生活習慣病の第一歩となります。適正なエネルギー量の食事と、適度な運動を行ない、生活活動を向上させ、生活習慣病をよせつけないようにしましょう。

成人期の食事は量より質を考えましょう。良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを含む食品、特に緑黄色野菜の積極的な摂取は、生活習慣病の予防にも役立ちます。食塩のとりすぎにも要注意です。

更年期障害

更年期の女性のイメージ

女性は50歳前後に閉経します。閉経によって女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急速に低下します。エストロゲンは、カルシウムの骨から血液への溶出をうながす副甲状腺ホルモンの働きを抑制しますが、閉経によって骨からカルシウムの溶出が増え、骨がスカスカの骨粗鬆症になる人が多くいます。骨粗鬆症になると骨折しやすくなり、寝たきりの原因となることもあります。骨粗鬆症にならないために閉経期前よりカルシウムを意識的にとることと適度な運動を心がけましょう。また閉経期は身体の代謝のバランスが大きく変化するために、動悸、めまい、のぼせ、吐き気など更年期障害と呼ばれる症状が出る場合もあります。症状が重い場合は、婦人科の診断を受けるとよいでしょう。

近年は、女性より程度は軽いものの男性の更年期障害も問題視されるようになりました。男性の場合は、加齢による身体機能の低下により、体調がくずれてしまいます。身体の調子を整えるビタミン、ミネラルを豊富に含む食品を積極的にとり、適度な運動で気分をリフレッシュしましょう。症状が重い場合は医師に相談しましょう。

老年

おじいさんのイメージ

一般に体の機能が低下し、栄養素の貯蔵能力も低くなります。適正なエネルギー、低塩を心がけ、ビタミンやミネラルを多く含む食事をしましょう。老年期になるとカルシウム吸収力の低下、ビタミンDの合成力の低下などから、男女を問わず骨が弱り、骨折しやすくなります。骨折の予防のためにはたんぱく質、カルシウム、ビタミンD、リンを積極的にとり入れるだけでなく、軽い運動や作業をするとよいでしょう。

老年期には味覚が低下することから、塩味のつよい味付けを好むようになる場合もあります。こうした食塩のとりすぎは高血圧、さらには動脈硬化の原因となることがあります。調理の際には「減塩について」のページを参照してください。

平均80年といわれる長い人生の最後を寝たきりや病気ではなく、健康に生きるためには、バランスのよい食事が一番身近な健康法です。自分に合ったバランスのよい食事を考える機会を一度持ってみてはいかがでしょうか。
1日に必要なエネルギーの摂取量は、年齢だけでなく、仕事や運動など個人個人で違います。以下の表を参考に、ライフスタイル、年代に合った食事の内容を考えてみてください。

対照体重における基礎代謝量

性別男性女性
年齢
(歳)
基礎代謝基準値
(kcal/kg体重/日)
参照体重
(kg)
基礎代謝量
(kcal/日)
基礎代謝基準値
(kcal/kg体重/日)
参照体重
(kg)
基礎代謝量
(kcal/日)
1~26111.570059.711660
3~554.816.590052.216.1840
6~744.322.298041.921.9920
8~940.828114038.327.41050
10~1137.435.6133034.836.31260
12~143149152029.647.51410
15~172759.7161025.351.91310
18~2923.764.5153022.150.31110
30~4922.568.1153021.953.01160
50~6421.868.0148020.753.81110
65~7421.665140020.752.11080
75以上21.559.6128020.748.81010

(日本人の食事摂取基準(2020年版)による)

●1日のエネルギー必要量の求め方

1日の推定エネルギー必要量は次の式から求めることができます。

1日の基礎代謝量×身体活動レベル

[計算例]女子16歳 体重50kg 身体活動レベルⅢの場合
1日の基礎代謝量 =25.3(kcal/kg/日)×50(kg) =1265(kcal/日)
1日のエネルギー所要量=1265×2.0=2530(kcal/日)

性別男性女性
身体活動レベル1ⅠⅡⅢⅠⅡⅢ
0~5(月) 550  500 
6~8(月) 650  600 
9~11(月) 700  650 
1~2(歳) 950  900 
3~5(歳) 1300  1250 
6~7(歳)135015501750125014501650
8~9(歳)160018502100150017001900
10~11(歳)195022502500185021002350
12~14(歳)230026002900215024002700
15~17(歳)250028003150205023002550
18~29(歳)230026503050170020002300
30~49(歳)230027003050175020502350
50~64(歳)220026002950165019502250
65~74(歳)205024002750155018502100
75以上(歳)218002100ー14001650ー
妊婦(付加量)3初期 +50+50+50
中期+250+250+250
後期+450+450+450
授乳婦(付加量)+350+350+350
  1. 身体活動レベルは、低い、ふつう、高いの三つのレベルとし、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲで示した。
  2. レベルⅡは自立している者、レベルⅠは自宅にいてほとんど外出しない者に相当する。
    レベルⅠは高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている者にも適用できる値である。
  3. 妊婦個々の体格や妊娠中の体重増加量、胎児の発育状況の評価を行うことが必要である。
  • 注1: 活用に当たっては、食事摂取状況のアセスメント、体重及びBMIの把握を行い、エネルギーの過不足は、体重の変化又はBMIを用いて評価すること。
  • 注2: 身体活動レベルⅠの場合、少ないエネルギー消費量に見合った少ないエネルギー摂取量を維持することになるため、健康の保持・増進の観点からは、身体活動を増加させる必要があること。

(日本人の食事摂取基準(2020年版)による)

身体活動レベル1低い(Ⅰ)
1.50
(1.40~1.60)
普通(Ⅱ)
1.75
(1.60~1.90)
高い(Ⅲ)
2.00
(1.90~2.20)
日常生活の内容生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客など、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合
  1. 代表値。( )内はおよその範囲

(日本人の食事摂取基準(2015年版)による)

健康づくりのための適当な運動の例

(毎日行う場合の1日の運動時間)

運動の種類時間
速歩(100m/分)25分
エアロビックダンス(軽く)25分
自転車(18km/時)25分
水泳(脚の推進力に頼らないゆくりした速さ)25分
ジョギング(120m/分)20分

注:この数字は、おおむね30歳代の健康な人を対象としたもの。
(健康づくりのための運動所要量策定検討会報告書 による)

最終更新日:2025年08月06日

設定メニュー