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脳血管研究グループ

脳梗塞予防薬が認知症予防に有効

脳神経内科 猪原匡史

もの忘れなどを特徴とする認知症の原因にはいろいろあり、アルツハイマー病と血管性認知症がその代表格で、その二つを合わせると認知症全体の8割を占めると考えられています。アルツハイマー病は脳に有害タンパク質が蓄積して神経細胞が死んでいく(変性する)病気、一方、血管性認知症は脳梗塞によって起こる病気です。しかし、その2つの病気の境界は実はあいまいで、アルツハイマー病でも脳梗塞が一定の原因になると考えられています(図1)。したがって、脳梗塞を予防することは、血管性認知症だけでなく、アルツハイマー病の予防にもなるのです。


脳梗塞を予防することは、血管性認知症だけでなくアルツハイマー病の予防にも重要

そこで、脳梗塞の予防に用いられる血液サラサラ薬「シロスタゾール」に着目し、アルツハイマー病のためにドネペジル塩酸塩を内服している患者を、シロスタゾールも服用しているかどうかで分け、記憶力などを測るテストで、症状の進み具合を比較しました。その結果、シロスタゾールを6カ月以上飲んだ34人は、飲まなかった36人に比べ、認知機能の下がり方が平均で約8割遅くなることがわかりました(図2)。ただし、認知症の症状が進んでしまうと効果は確認できませんでした。

アルツハイマー病のためにドネペジル塩酸塩を服用していた認知症患者のうち、シロスタゾールを服用していなかった36人の平均点は、1年後に2・2点下がったが、服用していた34人は0・5点の低下にとどまった。

このことから、シロスタゾールが認知症の進行予防薬としても使えるよう、国の薬事承認を目指す臨床試験(治験)を今秋にも始めることとなりました。認知症の予備軍とされる「軽度認知障害」の方が対象になり、認知症の早期治療として確立したいと考えています。

最終更新日:2021年09月21日

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