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三叉神経痛・顔面けいれん

 

三叉神経(さんさ)痛は顔面の電撃痛、顔面けいれんはまぶたや頬がぴくぴくして日常生活に支障をきたす場合に治療の対象となる病気です。
中でも、三叉(さんさ)神経・顔面神経に脳血管が当たって起こっている場合には脳神経外科手術で治療することができます。

1. 三叉神経痛・顔面けいれんとは

三叉神経痛は、電気ショックのような、あるいは刺すような、激しい顔面の痛みが起こる病気です。通常、右または左の顔面のみで、ハミガキやひげそり、化粧などの軽い刺激で痛みが誘発されます。この症状は女性や高齢者に多くみられます。加齢とともに動脈硬化で脳血管が屈曲して神経を圧迫することで発生すると考えられています。一方、何らかの病気で二次的に起こる場合もあり、これらの原因には多発性硬化症・帯状疱疹・脳腫瘍(三叉神経鞘腫・髄膜腫・類上皮腫)があります。(図1 三叉神経痛の原因)

顔面けいれんは、顔面神経が支配している顔面の筋肉が自分の意思に反して収縮する病気です。目の周りの筋肉、頬の筋肉がピクピクとけいれんし、しばらく続きます。緊張やストレスからおこることもあります。顔面けいれんも三叉神経痛と同様に多くの場合、脳血管が顔面神経を圧迫することによって起こります。この片側顔面けいれんと鑑別が必要な疾患はチック、眼筋・眼瞼けいれんです。

2. 三叉神経痛・顔面けいれんの特徴的な症状

三叉神経痛

• 片側の顔面で発作性の痛み
• 痛みの持続時間は1秒から30秒くらいと短く、1日に数回発生することもある
• 痛みは針で刺されたような、やけつくような痛みである
• 食事や会話、歯磨きや化粧など、触ったり顔面を動かしたりすることでも誘発される
• 触れると痛みを誘発するトリガーポイント(発痛点)がある
• 数か月から数年ほど痛みが起こらないこともあるが、再発を繰り返す
• 発症初期は歯痛と間違われやすく、歯科受診し、抜歯しても痛みが治まらない
• 三叉神経第2(頬)・3(顎)枝に多い
• 50歳代以降、女性に多い

顔面けいれん

• 三叉神経痛と同様に50歳代以降、女性に多い
• 片側の目の周囲のぴくつきで発症し、だんだん増強してくると口角周辺にまで及ぶことがある
• 自分の意思とは関係なくぴくつく
• ストレスや緊張でぴくつきが誘発される
• 症状がきつくなると、軽い顔面神経麻痺を伴うことがある

3. 三叉神経痛・顔面けいれんの治療

三叉神経痛

三叉神経痛の治療には「薬物療法」「神経ブロック療法」「手術療法」「ガンマナイフ治療」などいくつかの治療法があります。患者さんの症状や年齢やご希望も考慮し、最適な治療方法を提示します。

・薬物療法
 三叉神経痛は、薬がとても良く効きます。なかでも三叉神経痛の特効薬(第一選択薬)として使用されるのはカルバマゼピンです。アレルギーやふらつき・眠気といった副作用でカルバマゼピンが使えない場合には、プレガバリン・ミロガバリンといった薬に切り替えます。
三叉神経痛は食事をしたり、口を動かしたりして痛みを生じるため、食後ではなく、食事の30分から1時間ほど前に内服することで、痛みが減ったり消失する方もおられます。漢方薬が効く場合もあります。

・神経ブロック療法
 1枝領域の痛みでは眼窩上神経ブロック、2枝領域では眼窩下神経ブロック、上顎神経ブロック、3枝領域ではオトガイ神経ブロック、下顎神経ブロック、広範囲の痛みではガッセル神経節ブロック(高周波熱凝固による)が行われます。

・手術療法 神経血管減圧術
 三叉神経痛の原因が血管による圧迫の場合は、この圧迫をとる手術を行います(図2三叉神経痛の外科手術)。腫瘍が原因の場合は、腫瘍の摘出を行います。原因自体を取り除いてしまうので、術後に痛みが完全になくなって薬が要らなくなる確率は85%と、非常に効果は高いです。また、ほとんどの場合、術直後から痛みが消失します。全身麻酔下で、耳の後ろに皮膚切開を行い、頭蓋骨を一時的に一部外します。その下の硬膜を切開した後に脳脊髄液を排出し、手術顕微鏡を用いて、三叉神経に到達します。神経から血管を離して固定するか、神経と血管の間にクッションを挟んで、血管が神経に当たらないようにします。

・ガンマナイフ治療
 放射線を1カ所に集中させて、三叉神経の脱髄を起こし、神経の伝わり方を鈍くさせる方法です。(図3ガンマナイフ治療)局所麻酔での治療のため、高齢の方など、全身麻酔のリスクが高い場合にも治療が可能です。

2015年7月に「薬物療法による疼痛管理が困難な三叉神経痛」のガンマナイフ治療が保険適応となりました。ガンマナイフの疼痛制御率80~90%で、薬がまったくいらなくなる方は30~40%程度です。(図4治療効果)

痛みはガンマナイフ照射後1-3ヶ月程度で少しずつ軽減していきます(図5症例)。

顔面けいれん

治療には「薬物療法」「ボトックス治療」「手術療法」があります。患者さんの症状や年齢やご希望も考慮し、最適な治療方法を提示します。

・薬物療法
 三叉神経痛の場合と異なり、よく効く薬はありません。クロナゼパム、バクロフェンなどが効くことがあります。

・ボトックス治療
 ぴくついている筋肉にボツリヌス毒素製剤を注射し、筋のれん縮と緊張を緩和します。ボツリヌス毒素が神経筋接合部で神経終末に作用し、アセチルコリンの放出を抑制することで、アセチルコリンを介した筋収縮が阻害されるためです。個人差はありますが、 通常1回の注射でおよそ3~4ヵ月効果が持続します。

・手術療法(神経血管減圧術)
 三叉神経痛の場合と同様に、血管による顔面神経の圧迫をとる手術を行います。手術の効果は三叉神経痛の場合と同様85-90%に認められます。手術直後に痙攣が消失する場合が多いですが、徐々に改善してくることもあります。

最終更新日:2023年12月19日

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