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国立循環器病研究センター 冠疾患科
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 
法人番号3120905003033
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6番1号 
電話:06-6170-1070(代)

野口 輝夫

TERUO NOGUCHI

【専門領域】

虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
心臓画像診断(MRI)

研究者を目指して医学部へ 
医学の奥深さに魅了される
反対を押し切って循環器の道へ

高校時代は理学部の生物学科に行ってバイオテクノロジー分野の研究をしたいと漠然と思っており、医者になろうとは全く考えていませんでした。両親、祖父、叔母も薬剤師で、医療系に進んで欲しかったということもあり「研究するなら幅広くできる医学部に入った方がいい」という親の勧め(誘導)もあり医学部を受験しました。実際、医学部に入ってみたら、授業が大変おもしろく医学部を選択したことは私にとって正解でした。

私は佐賀医科大学医学部に入学したのですが、当時としては大変珍しい教育方針で、座学は4年生までで、5年生からはベッドサイドでの臨床実習に専念させられました。特に循環器内科や神経内科に興味を持ち、医学部6年生の夏に小児腎臓科の医師であった叔父に「心臓がやりたい」と伝えたら、「絶対やめとけ。すぐ患者が死ぬぞ」と反対されたことを覚えています。叔父曰く「腎臓は数ヶ月かけて悪くなるが、心臓は容態が悪化したら分単位で判断しないと生き死に関係する」と。しかし、若さゆえ耳を傾けることもなく、循環器内科であれば目に見えたかたちで患者さんを救うことができるという決意を胸に循環器内科の道を突き進むことにしました。

患者さんから教えられた医師の本質
責任をもって治せる医師になることを決意

医師3年目は、内科研修システムに沿って唐津赤十字病院に勤務していました。ある日、外来で待っていた虚血性心疾患の患者さんから「体がしんどいので申し訳ないのですが繰り上げて診てもらえませんか」と走り書きした紙を看護師から受け取りました。それを見て、すぐに入院してもらい、治療したのですが心不全がなかなかよくならない。悩んだ結果、1週間後に患者さんを福岡大学病院に救急車で搬送しました。福岡大学病院では2日間程度の治療で心不全が改善したと報告を受けました。自分の非力さを痛感させられたと同時に、患者さんに対して大変申し訳ないことをしてしまったという気持ちでいっぱいになりました。医師として患者さんに対する責任を取るためには、自分が「治りません」と言ったら、どこに行っても治らない。「治せます」と言ったら責任を持って治せるように、専門性の高いところで技術を磨く必要があると痛感しました。そのため国内最高峰の施設で学ぼうと考え、国立循環器病研究センターレジデントに応募することを決意しました。あの時、患者さんから渡された紙は自分への戒めとして、長い間捨てずに持ち続けていました。

若い先生達に、平成元年~5年当時の医学部の状況をお話しましょう。当時は卒業すれば“医局”に入るのが常識でした。現在のようにマッチングシステムもありませんから、都会の有名病院で研修医の募集をしていれば応募してみる。募集を出していない病院であれば直接電話で問い合わせしていた時代です。当時の国立循環器病研究センターレジデントは医師3年目から応募できますが、倍率は常に2倍以上でした。唐津赤十字病院の循環器内科の先生に国立循環器病研究センターのレジデントに応募してみたいと言うと、「自分の先輩が国循レジデントで相当優秀な先生だった。野口先生も相当気合入れて勉強しないとついていけないよ」と言われました。大学に戻り「国循・心臓内科レジデントに応募したい」と申し出ましたが医局内で応援してくれたのは講師の先生ただ一人でした。一言で言えば医局の異端児だったと思います。レジデント試験は、学科試験(循環器内科と一般内科の問題)、英文和訳、そして面接でした。面接時、副院長先生から「患者すぐ死ぬよ。君、急変に一人で対応できるよね」と叱責にも似た言葉が印象に残っています。医局の先輩・同僚に「レジデント試験に合格して3年間大阪に行きます」と大見得を切ったわけですから、「試験に落ちました。関連病院勤務をお願いします」などと言える状況ではありませんでした。学科試験、特に循環器内科分野に関しては真剣に勉強しました。プレッシャーの点でいけば、大学受験当時の「落ちたらどこの予備校に行こうか」と友人と話していた時と比べものにならず、まさに悲壮な決意を持ってレジデント試験を受けました。試験前日、夕暮れの万博公園周囲の高速道路網やモノレールを眺めながら、「合格しなければ地元には戻れない、皆に合わせる顔が無い」と思った事を鮮明に覚えています。

自らの頑張りが結果に直結する循環器
留学先で蘇った研究者への想い

循環器内科は医師にとっていい面も悪い面もあります。冠動脈ステント治療は外科医と同じで、カテーテル室から出てきた時には治療が成功したかどうかご家族にも一目瞭然でわかるという結果に厳しい科であるからです。成功すれば大きなやりがいを感じることになりますが、合併症など患者さんの予後を悪化させてしまうこともあります。また自らが治療していなくても、担当医として治療の結果も受け止めなければいけません。努力してもどうしても助けられない患者さんもいらっしゃいます。予後に直結する循環器内科の治療はとても責任が大きい科です。30歳代前半の頃、この日々の臨床の厳しさに疲弊し、目先のことしか考えられない時期がありました。当時の上司が私のそのような状況を見かねて、アメリカにあるバーモンド大学への留学を勧めてくれました。もともと研究に興味があり医学部に進んだこともあり、上司の提案を二つ返事で受けました。基礎研究は初めてでしたがアメリカ人の上司や同僚にも恵まれて、日本に居たときは憧れていた循環器専門誌にも複数論文が掲載され望外の成果を残すことができました。しかし、米国生活が2年過ぎたころから心不全発症のメカニズムを深く研究したい思いが強くなり、臨床には戻らず基礎研究の道に進みたいと真剣に思うようになりました。そこで、縁あって東海岸の有名大学の研究室に自分の研究テーマを売り込みに行き、担当教授のインタビュー(就職面接)を受けました。しかし、研究経験も浅く、超一流誌で発表した業績もない私に主任教授は全く興味を示しませんでした。インタビューの際に言われた事が今も耳に残っています。「Circulationか、君はNatureやScienceは一本も持ってないよね・・」。そのような経験から、自身のこれまでのキャリアを活かして臨床と研究どちらもできる環境に身を置いた方が良いという結論に至り、3年間の米国生活に区切りをつけて日本に戻ってきました。若い先生たちには、私のような行き当たりばったりで、その日暮らしのような失敗をさせないためにも、自分のやりたいことは何か?それを実現する道はどれを選択すべきか?などを研修医時代から折に触れて情報を集めてしっかり自分のキャリア・アップの準備するように指導しています。

低侵襲な検査で診断を探求
最大のテーマは予兆のない心臓発作の予測

「患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない」という言葉があります。侵襲的な検査や治療には何かしらのリスクを伴いますので、できるだけ侵襲が少ない方法で実施すべきです。現在、私のライフワークは侵襲性の低い検査を用いて的確に診断できるようにする仕組みや環境づくりです。

特に注力していることは、心臓発作を予測する検査技術を確立し普及させることです。虚血性心疾患に対するバイパスやステント治療は技術的な到達点に達しています。一方、心臓発作を発症した人の半分は予兆がありません。病院では胸が痛いというような自覚症状がある人の診療は的確にできますが、予兆の無い方は病院には来ないのです。急性心筋梗塞など心臓発作を予想して発作を未然に防ぐ未来をつくりたい想い研究に取り組んでいます。

安全性の高い検査で
心臓のプラークを可視化
心臓発作を予測するMRI検査の普及させる

日本は先進国の中において最もCT検査が普及している国です。反面、世界的には医療被曝の面で問題視されています。被曝があるため定期的にといった検査は慎むべきです。さらにCT検査で使用する造影剤はアナフィラキシーや腎機能への問題もあり気軽には使えません。その点、MRI検査は電磁波を利用して撮影するため被曝の心配もなく、より安全な検査と言えます。心臓発作の原因となる冠動脈不安定プラークをMRI検査で見つけることができれば、症状がない人にも早期診断・早期治療介入ができます。もちろん定期的に検査することも可能となるため継続的に観察することができます。症状がない患者さんは、処方した薬をなかなか飲んでもらえないことがあります。そのような方に実際の画像を見て頂き、診断の根拠を示すことができれば、治療や予防に対する意識を変えることができます。

メリットが大きいMRI検査にも、撮影時間が長い、解像度が低く画像が鮮明ではないという大きな問題があります。高い精度で検査するためには検査技師の技量も求められます。これらの技術的な問題をクリアしつつ、誰を検査対象とすれば医療経済的にも効率がよいかというリサーチもしています。MRI検査の有用性は示されていますので、今後は検査の普及も検討していく必要があります。検査時間の短縮は医療機器メーカーの協力が必須ですが、需要がないと開発が進められない面もあるので、まずはMRIの有用性を示すエビデンスを積み重ねる事に集中したいと思っています。

国循では多くの選択肢を得ることができる
しかし自ら進むべき道は自分で決めるべき

しっかりとしたキャリアパスを形成する上で最も大切なことは、やはり自分が本当に好きなことは何か?ということを考えるべきです。私の場合はいくつもある選択肢の中から選んできました。国循は、さまざまな分野の専門家が集まって循環器における最先端の研究や治療を行なっています。教科書にないような知識がどんどん頭に入ってくる素晴らしい環境が用意されています。どんなに志が高くても教育を受ける場によって人は変わっていくと思います。循環器疾患には興味があるけど、不整脈・心不全・虚血性心疾患・肺循環疾患など、どの分野に最も興味が湧くか判らない?と迷っていたり悩んでいたりしたら、多くの選択肢の中から自分がやりたいことを見つけることができます。自分が寝食を忘れて没頭したい分野が判らず悩んでいる、または新しい分野にチャレンジしたいと思っている方には、国循での研修はあたらしい自分を発見できるきっかけになってくれるかもしれません。国循は皆さんの要望に応える人材・設備・そして研修環境が充分整っています。しかし、自分の道を決めるのは自分であるということを忘れないで欲しいです。また、体力・気力の充実は成功の鍵です。

現在、管理職という立場で若手医師の指導を行っています。疑問を抱いたり、新たな発想が思いついたりするような思考は40代前半ぐらいまでがピークだと感じています。その代わり年齢が上がれば上がるほど経験が活かして、道筋をつけることが上手くなります。若い医師の小さな疑問が大きな変化に結びつくことが多々あります。今は、若い医師の疑問を拾い上げて、深堀をして、道筋を形にしてあげるのが非常に楽しみでもあります。皆様と共に循環器医療を更に発展させることができれば大変嬉しく思います。

  

Doctor Profile

野口 輝夫

TERUO NOGUCHI

日本内科学会総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
心臓リハビリテーション指導士

その他疾患や実績については以下よりご確認ください。

その他病態

Actual introduction

国立循環器病研究センター

大阪府吹田市にある循環器疾患を専門に高度な治療と研究に取り組んでいる病院です。
所在地は大阪ではありますが、
全国から多くの患者様がご来院しています。

国立循環器病研究センター

Acsess

受診をご希望の方へ

受診方法については以下より詳細をご確認ください。お電話やメールフォームでもお問い合わせを受けております。

Tel : 06-6170-1070

医療機関の皆様へ

虚血性心疾患の検査として、近年ではマルチスライスCT検査での冠動脈評価の精度が向上し、外来で冠動脈の解剖学的な評価が可能になりました。

※緊急受診について

以下のような症状が出ている場合は緊急にかかりつけ医を受診ください。

  • 医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を3回舌下しても症状があるとき発作が頻回に起こるようになってきたとき

  • 医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を使うと症状が良くなるが、すぐに症状がでてくるとき
  • 夜中に苦しくなって目が覚めるようになったとき
  • 急に体重が増えたとき

※夜中でも「朝まで・・・」と我慢する必要はありません。
※外来の日が近くても、上記のような症状があったら、すぐにかかりつけの病院に連絡して下さい。

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