ST上昇のない急性冠症候群は、持続する胸痛とST低下を認める非ST上昇型心筋梗塞からはっきりした心電図変化のない不安定狭心症まで、幅広いスペクトラムを含みますが、心筋梗塞や突然死など重篤な転帰を招く可能性が高く、リスク評価が重要です。急性冠症候群が疑われた場合には、夜間休日を問いませんので、時機を逸することなく速やかにご紹介ください。専門医が適切に診断し、必要に応じて入院、カテーテル検査などを行います。
Patient Referral
特定機能病院としての役割を果たすために、医療連携の強化・推進に努力しています。
関連医療機関の皆様と、循環器病疾患の診断・治療等に関する
医療機能連携を推進するために、連携医制度も設けております。
虚血性心疾患は「安定狭心症」 と「急性冠症候群」に分類されます。
長期的に注意が必要。一度は専門的評価を患者さんにご案内ください。
安定狭心症は、例えば「1年前から、この坂を上ると胸が痛くなる。」というようなもので、今日明日にも心筋梗塞や突然死を生じる危険は少なく緊急性はありません。
しかし長期的には注意が必要ですので、一度は専門的に評価する必要があります。ご都合の良い時に専門医療連携室を通してご紹介下さい。心エコー検査やトレッドミル運動負荷心電図検査に加え、最近では冠動脈CTを用いることで、外来でも比較的容易に診断することができるようになっています。
時間との勝負。30分程度でより早期の再灌流が重要となります。
急性冠症候群ではタイミングが重要です。特に心電図でSTが上昇している「ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)」の診断と治療は時間との勝負といっても過言ではありません。
STEMIは動脈硬化で狭窄した冠動脈が血栓によって閉塞することによって生じます。30年前まではSTEMIの院内死亡率は25%以上と高率でしたが、現在ではカテーテル治療を用いた早期の再灌流療法によって院内死亡率は5%未満と、その予後は劇的に改善しました。しかし、その効果は時間に依存しており、例えば発症から1時間以内にカテーテル治療を行い再灌流に成功すると、CKなどの心筋逸脱酵素も上昇せず、慢性期には心電図や心機能が完全に正常化する症例も見られます。
STEMI:初回造影
冠動脈造影にて左前下行枝近位部に完全閉塞を認めた
STEMI:ステント留置
カテーテル治療(ステント中)
STEMI:再灌流療
病変が拡張され、良好な再灌流が得られた。
その一方で、遅れて来院したものでは何とか救命できても、心機能は改善せず、退院後も心不全を繰り返すことにもなりかねません。
早期再灌流を得るため、国立循環器病研究センターでは、必要があれば救急外来からCCUを経ることなく直接カテーテル室に移動するなど、来院からカテーテル治療までの時間を30分程度にまで短縮し、より早期の再灌流を得るように務めています。
ST上昇のない急性冠症候群は、持続する胸痛とST低下を認める非ST上昇型心筋梗塞からはっきりした心電図変化のない不安定狭心症まで、幅広いスペクトラムを含みますが、心筋梗塞や突然死など重篤な転帰を招く可能性が高く、リスク評価が重要です。急性冠症候群が疑われた場合には、夜間休日を問いませんので、時機を逸することなく速やかにご紹介ください。専門医が適切に診断し、必要に応じて入院、カテーテル検査などを行います。
心臓に血液を供給する動脈を冠動脈と言います。狭心症は、この冠動脈に動脈硬化による狭窄が起こり血液の流れが妨げられることで起こります。従来、狭心症が疑われた場合は心臓カテーテル検査が勧めていましたが、検査に対する恐怖心からカテーテル検査をためらう患者さんもいらっしゃいました。冠動脈CTの登場は、このような方々への朗報となりました。
国循の冠動脈CT年間1500人以上が検査
冠動脈CT検査は、基本的には外来で行います。検査室では、ヨード造影剤を点滴するための静脈確保や脈拍測定などに20分程度要しますが、検査そのものは5分程度で終了します。
図1は、代表的な冠動脈CT画像です。冠動脈CT検査では、心臓カテーテル検査で評価していた冠動脈の狭窄の程度(血管がどの程度狭くなっているか)や、図2のような、冠動脈バイパス術を受けた方のバイパスされた血管の狭窄の評価ばかりでなく、動脈硬化の進行の程度も評価できるようになってきました(狭窄の軽い部分でも動脈硬化が意外に進んでいる場合があります)。
国立循環器病研究センターには世界最新式のCT装置が導入されており、年間1500人以上の方が冠動脈CT検査を受けられています。