TAKAMASA IWAI
【専門領域】
冠動脈カテーテル治療(PCI)
循環器集中治療
漠然とではありますが、ビジネスで競争するような職業ではなく「自分が一生懸命に働ける仕事」「人のためになる仕事」が就きたいと考えていました。具体的に職業を考えていく中で、医師であればどちらも満たすことができるし、医学を学ぶことは、自分の家族や周り人たちにとってもプラスになるのではないかと感じ医学部へ進学することを決めました。医学部で実習を経験して、手技を中心に自分のキャリアを積んでいきたいと考えるようになりました。机上の勉強に得意さを感じることが少なく、手技を集中して行っている感覚が好きでしたし、体力もある方だったので、手技を軸においた方が自分には向いていると感じたからです。
循環器内科に魅力を感じたのは、診断と治療一貫の高さです。循環器内科はよく「外科的」とも言われますが、内科的要素を多く備えており、薬物治療やリハビリ、予防医療までと幅が広く関わります。外科的治療の多くは、検査を一通り行った後に治療を行うといったように段階がわかれていますが、カテーテル分野では検査をしてそのまま治療するという、正に診断と治療の一貫の極みだと思います。また比較的対応を急ぐような疾患が多く、じっくりと100点を目指すといった治療スタイルではなく、時間とリスクを考慮しながら、スピード感をもって効率よく適格に治療を実施するというスタイルも自分に合っていると思いました。
大学卒業後、研修中、研修後を含めて6年間は市中病院で臨床経験を積みました。症例数も多く非常に良い病院だったのですが、ある症例が転機となり自身のキャリアを見つめ直しました。その症例は、心筋梗塞(右冠動脈閉塞)の患者さんだったのですが、問題なく治療できたにも関わらずショック状態が遷延し、人工心肺を使うもお亡くなりになってしまいました。今振り返ると右室梗塞だったのではないかと思います。しかし、当時の私は病態の把握ができず「治したはずなのになぜ助けることができなかったのだろうか」と随分思い悩みました。もっと専門的な病院であれば助けることができたのか?とも考えるようになり、自分の診療レベルを高められる環境を探すようになりました。またこの頃は、治療だけではなく臨床研修に興味を持ちはじめたタイミングだったこともあり、臨床と研究を両立できる病院を探し回っていた時に、国立循環器病研究センターに出会いました。
循環器内科の患者さんはご高齢の方が多くなります。若い方であれば社会復帰できることも多いですが、高齢者の方の場合、中々思うように社会復帰できない方もいらっしゃいます。そうすると、退院後の受け入れや、どのように生活をしていくのかといったご本人や支えるご家族の考えがとても重要になってきます。患者さんの社会的背景などの方が、私にとっては治療方針より気になるところであったりします。できるだけ患者さん本人の意思を尊重することを心掛けていますが、ご本人とご家族の考え方が食い違うこともありますし、訴えていることが本心とも限りません。心筋梗塞や心不全は非常にストレスが大きい病気ですから、途中で考えが変わってしまう可能性があることも考慮しなければいけません。どちらの場合においても、時間をかけて話し合いながら擦り合わせていくしかありません。ですので、私はしっかり時間をかける診療を心掛けるようにしています。
現在、臨床研究に関しては「冠動脈イメージング(IVUS)を用いた動脈硬化」と「血管に狭窄がないタイプの心筋梗塞の予後」の2つに研究に主に携わっています。
冠動脈イメージングについては、血管内の脂質を見ることができるNIRS- IVUSという特殊な機器を用いて、糖尿病患者におけるスタチンの効果の違いを解析しています。日本のガイドラインで定められているLDLコレステロール値では、糖尿病患者に対する動脈硬化の予防として不十分な基準であるという結果が研究かわかり、今論文化にも取り掛かっています。この研究結果は今後ガイドライン改定にも関わってくる可能性があります。このような結果を出すことができたのは、国立循環器病研究センターにNIRS- IVUSのデーターベースが既に構築されていたことが非常に大きく、国立循環器病研究センターだからこそなし得た研究だと思っています。論文化においても、研究所の統計部の先生方の手助けや先輩医師の指導のおかげで着実に進めることができています。
血管に狭窄がないタイプの心筋梗塞の患者さんの予後については、さほどケースは多くないのですが、日々の診療の中で、狭窄が見受けられない症例にも出会うことがあり、その方々の予後が気になったことがきっかけとなり研究を開始しました。研究結果としては、予後は悪いことが明らかになりました。血管に狭窄が見受けられないが、心臓の拡張障害や心房細動による不整脈、塞栓症が多く隠れている可能性などを疑う必要があることが明らかになりました。血栓形成などいろいろな病態が関わっているため、この研究結果を治療に活かすことは難しいですが、まず何より予後が悪いということが認知されることが重要だと考えています。
診断と治療の一貫性があり、治療の守備範囲も広く、更に外科的な手技にも関わることができるのが循環器内科の魅力だと思います。予防、薬物治療、エコーや画像診断、リハビリ、ペースメーカーや人工心肺など器械を扱うものまで、非常に広い範囲に関わります。また世界的にも研究が盛んで、進捗も目まぐるしいため、常に知識のアップデートを求められます。その点においては、大変な部分もありますが、だからこそ面白みがあると思います。国立循環器病研究センターに関しては、高レベルの治療を経験できることはもちろんのこと、新しい研究にも携わることができるため循環器内科の専門性を高めることができます。
個人的な意見になりますが、当院に来る良いタイミングはある程度、臨床経験を積んだ後が良いと思います。なぜならあまりにも経験が浅いと当院の特殊性がわかりづらくなる気がします。専門を選ぶにしても経験があったほうが選びやすいですし、何が特別なのかを理解できる下地があると得られるものが大きく違ってきます。
Doctor Profile
岩井 雄大
TAKAMASA IWAI
日本内科学会内科認定医
日本内科学会総合内科専門医
日本循環器内科専門医
日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)認定医
その他疾患や実績については以下よりご確認ください。
Acsess
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6番1号
虚血性心疾患の検査として、近年ではマルチスライスCT検査での冠動脈評価の精度が向上し、外来で冠動脈の解剖学的な評価が可能になりました。
※緊急受診について
以下のような症状が出ている場合は緊急にかかりつけ医を受診ください。
医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を3回舌下しても症状があるとき発作が頻回に起こるようになってきたとき
※夜中でも「朝まで・・・」と我慢する必要はありません。
※外来の日が近くても、上記のような症状があったら、すぐにかかりつけの病院に連絡して下さい。