FUJINO MASASHI
【専門領域】
虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
冠動脈カテーテル治療(PCI)
身内に医療従事者もいなかった私が医師を目指すようになったのは高校生のときです。小さな頃から四六時中ボールを蹴っているようなサッカー少年でした。怪我で腰や足を痛めることが多かったのですが、病院に行っても「骨折はしていないので、あとは自分で頑張るしかないね。」と言われるだけで、しっかり治してくれる先生に出会えませんでした。30年前ですので、スポーツ医学も今ほど発達していませんし、仕方なかったと言えばそれまでなのですが、高校生だった当時の私にとって、痛みのせいで数か月練習できないことは、青春を奪われたように感じ非常に辛い経験となりました。このような経験から進路を考えた際に、自分と同じようにスポーツで困っている人たちを助けたいと気持ちが芽生え、医師になることを決意しました。
医学部に入学した当初は、もちろん整形外科医を目指していましたが、様々な科の実習を経験するにつれて自身の視野が広がり、医師になるからには「人の命を助けられる医師」になりたいと考えるようになり、整形外科ではなく救急科や循環器内科に興味を抱くようになりました。最終的に救急科と循環器内科どちらの道に進むべきかを大変悩みましたが、私自身は外科的処置に向かないかもしれないとの自己判断と、「心臓が診ることができれば、万が一、自分の目の前で患者さんが倒れても命を救うことができる力が身に付く」と感じ、循環器内科を選びました。
大学卒業後は大阪府にある愛仁会高槻病院に勤務しました。高槻病院には優秀な医師が多数在籍しており、忙しくも学びが多い毎日を過ごしていました。臨床を経験すれば経験するほど「とにかく1日でも早く臨床において誰が見ても恥ずかしくない循環器医療ができるようになりたい。」という気持ちが高まり、その気持ちを当時高槻病院の外科部長であった高岡先生(現:高槻病院院長)に相談したところ「循環器内科の各分野のスペシャリストが集まっている国立循環器病研究センターは一つの選択肢」という助言を頂き、3年間お世話になった高槻病院を後にして国立循環器病研究センターで働くことになりました。
国立循環器病研究センターでは、一つの症例を突き詰めることを非常に大切しています。何がわかっていて、何がわかっていないのか?を、とことん突き詰め理解した上で、自分たちが最適と思える治療法を選択していきます。大変キッチリとしたカンファレンスですので、働き始めた当初は慣れないことも多く大変でしたが、このカンファレンスのおかげで一つ一つの症例を追求する力を研ぎ澄ますことができました。また、このような国立循環器病研究センターの症例を追求する文化にふれたことで、臨床医としてスペシャリストを目指していた私が徐々に臨床研究の分野にも興味を持ち始めるようになりました。
私が臨床研究に取り掛かるようになったのは、担当した心筋梗塞の患者さんがきっかけです。心筋梗塞の治療は成功し一命と取り留めることができたのですが、慢性期の経過から抗凝固療法の治療を止めても問題ないと判断しました。当時、抗凝固療法に関してはガイドラインでも定まっていなかったので、自身の判断で治療を止めてしまったのですが、その結果、左心室内血栓の合併症が原因で脳梗塞を発症してしまいました。命を救うことはできましたが後遺症が残ってしまいました。ガイドラインとそこにたどり着くまでの臨床研究の重要性をこの時に痛感し、臨床だけではなく研究にも取り組む必要があると感じました。
私が研究している分野は「狭心症・心筋梗塞」なのですが、一言で「狭心症・心筋梗塞」と言っても、治療法、エコー検査、病理などかなり細分化され、現在はカテーテル検査の研究に取り掛かろうとしています。カテーテル検査は脚の付け根を挿すアプローチ法から始まり、肘や手首の血管を利用するなど、できるだけ低侵襲な手法で実施できるように技術発展してきました。現在は親指の付け根から挿入する遠位橈骨動脈アプローチという更に低侵襲な技法が行われています。低侵襲であることは大きなメリットなのですが、手首も親指の付け根も一定数を超えると血管が閉塞してしまうことがあります。そうすると、次にその部位からのカテーテル検査ができなくなるばかりでなく、透析などの治療が必要になった場合などもシャントが造設できなくなってしまうなどのデメリットが出てきます。カテーテル検査は、当院だけでも年間1400件以上と頻繁に行われている検査です。そのため閉塞率が数%で発症するだけで、数十人の患者さんが困ってしまいます。全国レベルで考えると年間、数千人規模にもなってしまいます。この閉塞を防ぐ方法を研究によって確立し、世に広めたいと思っています。
閉塞率を1%だけでも下げることができれば、助かる患者さんが多くいます。臨床医として一人ひとりの患者さんに向き合いながら、このように多くの患者さんを救うことができる意義ある研究も続けていきたいと思っています。
医療には100%の正解はないと考えます。医師が正しいと判断した治療が、必ずしも患者さんが望む治療にならないこともあります。そのため、私は治療方針を決定する際に、まず患者さんの希望や想いを汲み取ることを大切にしています。自分がベストと判断した治療以外の選択肢についてもしっかりと説明しています。もちろん、患者さんご自身が判断できない場合もありますので、その場合は私が最適と判断した治療で最善をつくすことをお約束しています。どちらの場合においても、患者さんに病気や治療への理解を深めて頂けるように、医師から働きかけることが重要だと考えます。ですので、医療面接で説明した内容を出来る限り文面に書き起こして渡すようにしています。文章であれば後に読み返すこともできるので、面接時には言えなかったこと、考えられなかったことを、ゆっくり考えて頂くこともできるようになります。
国立循環器病研究センターの魅力は、循環器内科の各分野のスペシャリストが在籍しているため、視野が広がることにあると思います。私が臨床一本から研究に取り組むようになったように、自分がやりたいとを見つけられる機会やチャンスにも恵まれていますし、どこまでやるかも自分で決めることができます。加えて、多くの人との繋がりを持つことができることも大きな魅力です。医師だけではなく、看護師、臨床工学技士、理学療法士においてもプロフェッショナルなスタッフが多く在籍していますので、コメディカルの方から学びを得る機会も多くあります。
また、当院には「組織で患者を診る」という姿勢がありますので、カンファレンスはとてもきっちりしています。このカンファレンスは患者さんだけでなく、医師にとっても大きなメリットがあります。医師の人数が揃っていない病院などでは、医師個人が治療方針を決めなければいけないことがしばしばありますが、当院ではカンファレンスを徹底することで、病院という組織全体で納得できる治療を決めているということになります。言い換えると、組織の総意として治療方針を決めたことになりますので、医師個人だけの責任にはならないということです。自分の考えた治療方針がカンファレンスで認められれば、病院がそれをバックアップしてくれるので、安心して治療に専念することができます。このようなことから、循環器内科のスペシャリストを目指すのにも非常に良い環境が整っていると思います。
更に、臨床だけではなく研究の面においても良い経験を積むことができます。例えば今年の3月に当院の研究が新聞に掲載されました。新型コロナウイルス感染症の流行後、心筋梗塞を発症してから当院に到着するまでの時間が延びていました。心筋梗塞は、発症してから再灌流させるまでをいかに早く行うかが重要ですので、早く治るゴールデンタイムを超えて、心破裂などの合併症リスクが高い状態になってから入院してくる患者さんが多くいたのです。そのようなデータをまとめ発表したところ、新聞に掲載されました。新聞に掲載されたことで、多くの患者さんにも周知することができたと思います。このように意義のある研究が行えるということも大きな魅力の一つだと思いますし、この研究自体は専門修練医の頑張りで完遂することができましたが、その専門修練医にとっても良い経験になったと思います。
Doctor Profile
藤野 雅史
FUJINO MASASHI
日本内科学会認定医
日本循環器学会専門医
日本内科学会総合内科専門医
日本心血管インターベンション治療学会 (CVIT) 治療専門医
その他疾患や実績については以下よりご確認ください。
Acsess
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6番1号
虚血性心疾患の検査として、近年ではマルチスライスCT検査での冠動脈評価の精度が向上し、外来で冠動脈の解剖学的な評価が可能になりました。
※緊急受診について
以下のような症状が出ている場合は緊急にかかりつけ医を受診ください。
医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を3回舌下しても症状があるとき発作が頻回に起こるようになってきたとき
※夜中でも「朝まで・・・」と我慢する必要はありません。
※外来の日が近くても、上記のような症状があったら、すぐにかかりつけの病院に連絡して下さい。