HIDEO MATAMA
【専門領域】
冠動脈カテーテル治療(PCI)
循環器集中治療
高校時代に職業選択の一つの候補として医師を考えていました。高校生の私が考える就きたい職業ですので「社会的に地位があり、収入面も安定している職業」そのような安易な視点で考え、社会に対する少ない知識の中でもなんとなく、医師であれば「やりがい」を感じることができそうだし、生涯かけて探求できる職業になるのではないかと考え、医学部への進学を目指すこととしました。しかし、中高とあまり勉学に励んでこなかった私にとって医学部への入学は高いハードルとなり、2年間の浪人を経て医学部に入学することができましたが、この2年間はとにかくがむしゃらに勉強した覚えがあります。
医学部に入った後も、もとの性格が影響してしまいあまり勉強に打ち込んでいなかったのですが、5年生の時に「これではいけない」と焦りを感じ、厳しい環境で自分を追い込むことができる就職(研修)先にいくことを決めました。その後は、研修レベルが高いことで有名な病院をいくつも見学して回りました。見学を通じて自分よりも遥かにモチベーションが高い医師や医学生と出会う機会が増え、その人達の医学に対する熱い想いを聞いたことがきっかけとなり、私自身も医師として命とどのように向き合うべきなのか、どのような力を身に付けるべきなのかを真剣に考え始めました。この時期に医師は「命にたずさわる」職業であるという本当の意味での自覚が生まれたように思います。
最終的に私が研修先として選んだのは、全国でも倍率が高く、忙しいことでも有名な沖縄県立北部病院でした。沖縄県立北部病院は、一人で何でもできるようにならないと通用しないと言われている病院でして、短期間で医師に必要な技術を身に付けることができる反面、とにかく毎日が激務でした。平日はほぼ家に帰ることができず、土日のどちらかに洗濯をしに家に帰るだけ、といったような生活が5年続きました。同期には4人の研修医がいて、全員同じような生活を送っていましたが、誰一人それを苦には感じておらず、とにかく少しでも早く一人前の医師になりたいという気持ちを強く持っていました。恐らく他の病院では当直日を決める際には、決められた日数を埋めないといけないというのが一般的なやり取りになると思うのですが、私たちの場合、全員が当直の希望を出しすぎて制限がかかってしまうということが日常茶飯事でした。経験を積めば積むほど昨日よりも今日の自分が成長していることが実感できましたし、成長したことにより助けることができる患者さんが多くなることに何よりもやりがいを感じていました。非常に激務ではありましたが、優秀な同期と切磋琢磨できた日々は私の医師人生におけるかけがえのない財産になったと思います。
臨床経験を積めば積むほど「いざという時に助けられる医師でありたい」という気持ちが強くなっていきました。救急で搬送されてくる患者さんの中で、生死に関わる状態となっている人の多くは心臓に関わる病気の人でした。心筋梗塞の場合は一刻を争いますし、専門の医師にカテーテルをお願いしなければ、自分ではどうしようもできないという辛い状況を多く経験し、いざという時に循環器の知識や技術がないと命を救うことができないと考え、2年間の初期研修を終えた後は、循環器内科の専門性を高めることにしました。
循環器内科医を志した私を指導して下さった医師がとにかくスーパーマンのような方で、私たち若手医師と同じように平日には家に帰ることはなく、週末1日だけ自宅に帰るというような生活をずっと続けてらっしゃいました。地域の救急医療をその医師が支えているといっても過言ではないほど頼りにされている医師でした。その方から本当に多くことを学ばせて頂きましたが、同時にそこにずっといては超えることができない存在のようにも感じました。その医師から「別の病院で経験したことが今の自分に役立っている」という話を聞き、私も一度外に出て経験を積むことを決意しました。経験を積むなら循環器内科で最も有名な病院へ行くべきだと考え国立循環器病研究センターを選びました。それなりに臨床経験を積んできたという自負がありましたが、国立循環器病研究センターに移った当初は、専門知識の幅と奥行きが自身の想像を遥かに超えていて、何も知らない自分になってしまったような感覚に陥りショックを受ける日々が続きました。それだけ“ここ”には学ぶべきものがあると気持ちを切り替え「この病院の知識を全部手に入れるまでは辞められない」と自らを奮い立たせました。
治療技術が進んだ現在においても、超最重症のショック状態にある患者さんの救命率は50%程度です。今私はこの数値を100%に少しでも近づけるための研究に取り組んでいます。重篤な患者さんに対しては、ECMO(体外式膜型人工肺)やIMPELLA(補助循環用ポンプカテーテル)と言われるような補助循環の機器を装着することが多いのですが、どのような状態の場合にどう使用するほうが効果的なのかを、また取り付けた後の予後などを、臨床データを用いて研究しています。また補助循環装置の装着には、より正確で早い手技が求められます。正確で低侵襲な手技ができなければ、一時的な延命を図れたとしても合併症を引き起こす可能性が高くなるためです。そのため現在はデータを扱うような研究と並行して、技術指導にもかなり力を注いでいます。技術面では、沖縄県立北部病院で多くの治療経験を積んだので私でも教えられることが多くあります。一人でも多くの医師が正確で早い手技を身に付けることができれば、救命率を高めることに貢献できると思っています。
沖縄県立北部病院では、救急対応した患者さんについては、入院中も退院後もずっと主治医として担当することになっていました。ですので、一人の患者さんと必ず何年ものお付き合いになることが多くありました。救急という場面だけではなく、その後の経過についても間近で診ることができた経験は日々の診療にとても役立っています。1分1秒を争う救急治療を行う際にも、入院退院後のことまで考えた治療の選択を瞬時に行えるようになりました。日々の外来診療では慢性的な診療を行うことが多く緊急性は求められませんが、すべてにおいて「いざという時のため」という考えが根本にあるため、日々の疾患管理や患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。
人の死に対する定義はそれぞれ異なるとは思いますが、身体的所見で一番わかりやすいのは心臓が動いているか止まっているかになると思います。とにもかくにも心臓を止めないということができるのは循環器内科だけだと思います。そういったことを考えると、循環器内科は命に直結するとても重要な科であり、循環器内科を生業にしたいと考えるのであれば、その全体像を知るべきですし、知りたくなるはずだと私自身は思います。当院では一般の病院では知り得ない知識や経験を多く得ることができます。ですので、究極的には「循環器内科に関わる医師なら全員一度当院に来るべき」という気持ちさえ出てきます。それを言い切れるほど、ハードもソフトも整っている環境であることは間違いないと思います。
Doctor Profile
真玉 英生
HIDEO MATAMA
日本内科学会内科認定医
日本循環器専門医
その他疾患や実績については以下よりご確認ください。
Acsess
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6番1号
虚血性心疾患の検査として、近年ではマルチスライスCT検査での冠動脈評価の精度が向上し、外来で冠動脈の解剖学的な評価が可能になりました。
※緊急受診について
以下のような症状が出ている場合は緊急にかかりつけ医を受診ください。
医師から処方されている(ニトログリセリンなどの)舌下錠を3回舌下しても症状があるとき発作が頻回に起こるようになってきたとき
※夜中でも「朝まで・・・」と我慢する必要はありません。
※外来の日が近くても、上記のような症状があったら、すぐにかかりつけの病院に連絡して下さい。