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重症な心原性ショックに対する補助循環治療で、心臓や循環の回復の道筋を明らかに
― 経皮的左室補助ポンプ症例の解析 ―
★北里大学、日本医科大学、済生会熊本病院および国循の4施設共同研究
概要
心原性ショックは、心臓の働きが急に落ち、全身に十分な血液を送れなくなる命に関わる状態です。本研究では、日本の多施設データを用い、超小型経皮的左室補助ポンプ「Impella」による補助循環治療を単独で使った場合と、ImpellaとVA-ECMO(体外式膜型人工肺)と組み合わせた場合で、治療中に心臓や血流の状態がどう変わるかを詳しく調べました。その結果、どちらの治療でも心臓の負荷が軽くなり、回復過程にむけて心臓自身が血液を送り出す力の改善を認めました。特にImpellaとVA-ECMO併用例では、生存退院した患者に特徴的な変化が見られ、このような時系列を意識した循環動態の解析が治療の切り替えや補助循環治療離脱の判断に役立つ可能性が示されました。
研究のポイント
- Impella治療により、心臓にかかる負担が治療開始後の早い段階で軽くなることを、実際の患者さんにおける時系列の循環動態データで示しました。
- ImpellaとVA-ECMOを併用した患者では、生存退院できた人に特徴的な循環動態の回復パターンが見つかりました。
- 血流や圧の変化を時系列に沿って丁寧に追うことで、治療を最適化するための判断に資するエビデンスを見出すことができました。
背景
心原性ショックは、心筋梗塞などをきっかけに心臓のポンプ機能が大きく低下し、全身の臓器に血液が行き届かなくなる重い病気です。救命のためには、薬だけでなく補助循環治療が必要になることがあります。近年は、血液を送り出すのを助ける超小型ポンプ「Impella」や、全身の循環と酸素化を補う「VA-ECMO」が使われています。ただし、どの治療をどう組み合わせ、どのタイミングでそれら装置への依存度を減らしたり離脱したりするのがよいかは、必ずしも十分に分かっていませんでした。そこで本研究では、ImpellaやVA-ECMOの治療中の血流や圧のデータを詳細に解析することで、治療の特徴や回復の特徴を検証することとしました。
研究成果
本研究では、日本の多施設レジストリ(北里大学、日本医科大学、済生会熊本病院)に登録された心原性ショック患者409例を解析し、Impella単独群206例とImpella+VA-ECMO併用群203例の循環動態の時系列的推移を比較しました。Impella単独群では、導入前から抜去前までに肺動脈楔入圧(PAWP)が11.8mmHg低下、右房圧(RAP)が5.8mmHg低下し、心拍出量は1.32L/分増加しました。併用群では、右心カテーテルで測定した心拍出量が2.8L/分増加、心拍出力(CPO)が0.4W上昇していました。さらに、生存退院例ではVA-ECMO離脱後に、大動脈脈動指数(API)が1.3から4.2へ上昇し、心筋パフォーマンススコア(MPS)も0.4から1.9へ改善するなど、心機能回復を示す特徴的な変化が確認されました。これらの結果は、時系列的循環動態解析が、補助循環治療中の回復評価や離脱時期の判断に有用である可能性を示しています。
≪参考≫
発表論文情報
著者:Kanako Teramoto, Keita Saku, Yuki Ikeda, Jun Nakata, Takashi Unoki, Takeshi Yamamoto, Tomohiro Sakamoto, Junya Ako
題名:Temporal Hemodynamic Patterns in Cardiogenic Shock Treated With Isolated Percutaneous Ventricular Assist Device and Combined Therapy With Venoarterial Extracorporeal Membrane Oxygenation
掲載誌:Journal of Cardiac Failure
DOI:10.1016/j.cardfail.2026.01.012
最終更新日:2026年04月10日