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細胞生物学部

部の業績
2014年業績

2014年の業績

研究活動の概要

循環器疾患の病態解明から、疾患予防と心臓再生・血管新生による循環調節の再構築を目指した新たな治療を目指す研究を展開している。「病態(pathobiology)は、分子の機能異常と細胞・組織間・臓器連関の制御異常、つまり細胞間・細胞内情報伝達破綻のために生じる」「再生は発生過程の情報伝達系を利用している」という考え方に立脚した病態の解明と再生メカニズムの解明を目指している。

このためには、生体内での心臓・血管の臓器全体の変化とともにと成細胞の形態変化を捉え、さらに、情報伝達の変化を生きたまま捉えることで病態の本質解明に迫りたい。したがって、生体の情報伝達と形態変化を同時に観察することができるイメージングを駆使した研究により「見ることから知ること」「さらに治療にまで発展させるべく」研究を行っている。

主な研究テーマは

  • 血管新生における細胞骨格・形態変化を調節する情報伝達の解明(血管と臓器との相互作用も含む)
  • 血管新生におけるCa2+ シグナル活性化の異議の解明
  • 細胞間接着機構の解明と血管安定化機構の解明
  • 心筋細胞の増殖メカニズムの解明
  • 内胚葉による心臓前駆細胞の移動を原始心筒形成のメカニズムの解明
  • Shear stressによるYap1の転写調節機構の解明
  • 心臓-骨―腎臓の臓器連関による恒常性維持機構の解明
  • 血管の動脈・静脈の維持と特性決定機構の解明
である。

2014年の主な研究成果

  1. 血心筋細胞特異的に細胞周期を生体で可視化するゼブラフィッシュを作製し、発生段階における心筋細胞増殖因子(Heart-derived cardiogenesis-inducer; HDCI)を同定した。本分子のを哺乳類で検討するために、ノックアウトマウスとトランスジェニックマウスを作製して解析を始めた。ノックアウトマウスでは、心重量が減少していることから、哺乳類でも心筋細胞数の調節に関わる分子であることを突き止めた。
  2. 心臓の発生過程でゼブラフィッシュもスフィンゴシン1-燐酸(S1P)シグナルが重要であると報告した。S1PトランスポーターのSpns2を通して内胚葉に向かうS1Pが内胚葉細胞に発現するS1P2受容体を活性化して、さらに転写共役因子のYap1を核内移行させ、内胚葉を維持する情報伝達を活性化することがわかった。この内胚葉の維持により、内胚葉が足場となって心臓前駆細胞の正中への移動を誘導させることを明らかにした。
  3. 血管新生を可視化するためのトランスジェニックゼブラフィッシュの一つとして、Cdc42,の活性化を可視化する個体を作製した。アクチン重合の可視化フィッシュと交配することでCdc42の活性化によるfilopodia 形成を促進して、尾側静脈が形成されるメカニズムを解明した。このシグナルには、尾側でのBone morphogenetic proteinの発現がきっかけとなり静脈の内皮細胞で発現する受容体を介してCdc42 の活性化が起きることを示した。
  4. 臓器サイズ決定に関わる転写因子Yap1が核内移行して転写が活性化することを可視化できる個体を作製した。血管、心臓でYap1の活性化がいつ、どこで生じるのかを詳細に検討可能となった。
  5. 転写共役因子Yap1が血管内のshear stress依存性に内皮細胞の核内へと移動することが解った。これは、これまでYap1はメカノセンシング機構の下流で機能する分子として同定されてきたことと矛盾しない。Yap1の核内移行には、S1Pシグナル伝達機構の活性化が関わることを示唆する知見を得た。
  6. Yap1のタンパク質修飾としてSer/Thrのリン酸化が核内外シャトルの決定に重要であることが報告されていたが、この修飾だけではなくArg methylationが生じること、さらにそのmethyl 化酵素を同定した。

研究業績

  1. Arita Y, Nakaoka Y, Matsunaga T, Kidoya H, Yamamizu K, Arima Y, Kataoka-Hashimoto T, Ikeoka K, Yasui T, Masaki T, Yamamoto K, Higuchi K, Park JS, Shirai M, Nishiyama K, Yamagishi H, Otsu K, Kurihara H, Minami T, Yamauchi-Takihara K, Koh GY, Mochizuki N, Takakura N, Sakata Y, Yamashita JK and Komuro I. Myocardium-derived angiopoietin-1 is essential for coronary vein formation in the developing heart. Nature Communications. 5, , 2014.
  2. Fukui H, Terai K, Nakajima H, Chiba A, Fukuhara S and Mochizuki N*. S1P-Yap1 signaling regulates endoderm formation required for cardiac precursor cell migration in zebrafish. Developmental Cell . 31, 128-136, 2014.
  3. Odagiri H, Kadomatsu T, Endo M, Masuda T, Morioka MS, Fukuhara S, Miyamoto T, Kobayashi E, Miyata K, Aoi J, Horiguchi H, Nishimura N, Terada K, Yakushiji T, Manabe I, Mochizuki N, Mizuta H and Oike Y. The Secreted Protein ANGPTL2 Promotes Metastasis of Osteosarcoma Cells Through Integrin alpha 5 beta 1, p38 MAPK, and Matrix Metalloproteinases. Science Signaling. 7, , 2014.
  4. Fukuhara S, Zhang JH, Yuge S, Ando K, Wakayama Y, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A and Mochizuki N. Visualizing the cell-cycle progression of endothelial cells in zebrafish. Developmental Biology. 393, 10-23, 2014.

最終更新日:2021年10月01日

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