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循環動態制御部

不整脈・呼吸異常に関する研究

重症の不整脈(心室細動など)は命に関わる不整脈ですが、その診断や治療にはまだ改善すべき問題が残されています。循環動態制御部ではその数理工学的基盤を生かし、コンピュータシミュレ-ションや光マッピング法を用い、多様な病態における不整脈の発生機序解明を目指しています。また循環器疾患診療において呼吸機能異常は極めて重要な位置を占めるようになってきています。このような背景をもとに、呼吸調節異常と心不全進展に関する研究も行っています。

(1) 計算機シミュレーションによる不整脈発生機序の解明と治療法の開発

心臓の細胞の電気的および機械的な性質を再現した電子細胞をコンピュータ上に作成し、電子細胞を組み合わせて心臓全体の電気現象や機械現象が再現できるシミュレ-タを開発しました。シミュレータには肺や大動脈などの胸郭全体もモデル化されており、体表面心電図や心エコーなど臨床で行なわれている検査をシミュレータ上で再現することができます。

実際の検査ではできないような詳しい検査もシミュレータ上では可能なため、不整脈の発生機序を詳しく検討することも可能です。また、様々な治療をシミュレータ上で行ないその効果を詳しく検討することによって、効率的な電気的除細動法などの新しい治療法を開発することも可能となってきました。(東京大学との共同研究)

図1

図1 シミュレータ上に再現された心臓の電気および機械現象

(2) 機械的負荷が不整脈の発生に及ぼす影響の検討

心臓への機械的負荷によって電気的活動が変化することが知られており機械電気帰還現象と呼ばれています。この現象は心筋梗塞後の不整脈や胸部打撲による突然死(心臓震とう)の発生に関係していると考えられています。

摘出潅流心臓を用いて心臓に機械的刺激を加えて不整脈の発生様式を検討した結果、中等度の機械刺激を先行興奮の再分極相に加えた場合にのみ心室細動が発生することが明らかになりました。また、コンピュータシミュレーションを用いて機械的負荷が心室細動の挙動に及ぼす影響を検討した結果、機械的負荷により細動波が不安定化して分裂を繰り返し心室細動が維持されやすくなることが明らかになりました。

図2

図2 機械的刺激により誘発された心室細動(A)と誘発条件(B)

Video (mpg形式:2.5MB)

関連成果等

  • Seo K, Inagaki M, Nishimura S, Hidaka I, Sugimachi M, Hisada T, Sugiura S. Structural heterogeneity in the ventricular wall plays a significant role in the initiation of stretch-induced arrhythmias in perfused rabbit right ventricular tissues and whole heart preparations. Circ Res 106: 176-184, 2010.
  • Relevance of cardiomyocyte mechano-electric coupling to stretch-induced arrhythmias: Seo K, Inagaki M, Hidaka I, Fukano H, Sugimachi M, Hisada T, Nishimura S, Sugiura S. Optical voltage/calcium measurement in mechanically stimulated cells, tissues and organs. Prog Biophys Mol Biol. pii: S0079-6107(14)00071-6, 2014.

(3) 呼吸異常(周期性呼吸)と心不全の経過との関係

心不全患者では周期的に呼吸が大きくなる、あるいは小さくなる異常が現れることがあります。この周期性呼吸は心不全が重症の際に、軽い運動をしてもらうとよく出現します。この兆候が心不全の経過とどう関係しているか調べました。

その結果、周期性呼吸がある場合には3年間に58%の患者が入院などを必要としたのに対し、周期性呼吸がない場合にはわずか8%の患者で入院などが必要となりました。心不全の重症度を事前に知ることができるようになり、よりきめ細かい治療ができるようになりました。

またこのような周期性呼吸は定量的に求めた呼吸制御系の静的特性および動的特性によって説明ができることが明らかになりました。

図3

図3 周期性呼吸の有無と心不全の経過との関係

関連成果等

  • Miyamoto T, Nakahara H, Ueda S, Manabe K, Kawai E, Inagaki M, Kawada T, Sugimachi M. Periodic breathing in heart failure explained by dynamic and static properties of respiratory control. Clin Med Insights Cardiol. 9(Suppl 1): 133-142, 2015

(4) 心不全患者の呼吸調節を定量的に検査する方法の開発

心不全患者では不必要に呼吸が激しくなることがあります。呼吸の調節は生体が血液中の二酸化炭素濃度を感知して行われていることが知られています。不必要に呼吸が激しくなるのは、心不全患者の呼吸調節に異常があるためと考えられていますので、異常を検査する方法を開発しなければなりません。まず健常者で高い二酸化炭素濃度を吸入して、血液中二酸化炭素濃度の増加に対する呼吸の増加の程度を調べました。次に、深呼吸をしてもらったときの血液中の二酸化炭素濃度の減少の程度を調べました。これらのデータを組み合わせて呼吸調節を説明する平衡線図を作ることができました。今後、この検査を簡略化して心不全患者でも簡便に行えるように改良する予定です。

心不全ラットでは中枢の二酸化炭素感受性が亢進し、アスリートでは逆に減弱していることがこの解析方法によって明らかになりました。

図4

図4 二酸化炭素吸入による呼吸増加(左)と深呼吸による血液中二酸化炭素減少(右)2つの線の交差したところが普段の状態になります(下)

関連成果等

  • Miyamoto T, Inagaki M, Takaki H, Kawada T, Yanagiya Y, Sugimachi M, Sunagawa K. Integrated characterization of the human chemoreflex system controlling ventilation, using an equilibrium diagram. Eur J Appl Physiol 93: 340-346, 2004.
  • Miyamoto T, Inagaki M, Takaki H, Kamiya A, Kawada T, Shishido T, Sugimachi M, Sunagawa K. Sensitized central controller of ventilation in rats with chronic heart failure contributes to hyperpnea little at rest but more during exercise. Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 1: 4627-30, 2006.
  • Miyamoto T, Inagaki M, Takaki H, Kawada T, Shishido T, Kamiya A, Sugimachi M. Adaptation of the respiratory controller contributes to the attenuation of exercise hyperpnea in endurance-trained athletes. Eur J Appl Physiol. 112: 237-251, 2012.

最終更新日 2016年07月01日

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