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循環動態制御部

業績

2018年の業績

研究活動の概要

 循環動態制御部の研究基本理念は、統合的な枠組みによる循環器系の生理的・病態生理的な機能の解明である。生体システムの統合された複雑な状態での重要な特性の解明をめざして以下の方針で研究を構築している。循環動態制御部の研究分野の2つの柱は、「循環器系そのものの力学特性の解明」と「循環調節特性の解明」であり、両分野について基礎研究、応用研究および臨床に資する医療機器としての実用化の各階層にわたる研究を展開している(図)。特に、その結果としての最終目標として急性および慢性心不全の診断・治療の革新をめざした研究に焦点を当てている。さらに心不全の主たる死因である致死性不整脈の克服をめざし、基盤技術として心臓シミュレータを開発している。

 本年度、特に注力した研究分野は、1. 包括的な循環器系(心臓・血管)特性解析(心不全の自動診断)に関する研究(図では「低侵襲モニタの開発」、「急性心不全自動治療装置の開発」)、2. 慢性心不全治療のための循環系の神経性・体液性の制御の基礎研究(図では「循環調節特性の解明」)、3. 循環バイオニック医学:循環系の制御機構への介入による心不全治療の開発(図では「循環バイオニック研究」)、4. 循環器疾患の克服に貢献する新しい医療機器の開発(図では「迷走神経刺激による梗塞縮小装置の開発」)の4つである。

 以下に各項目について、その意義を記し、次項に本年度の成果の概要を列挙する。

  1. 包括的な循環器系(心臓・血管)特性解析(心不全の自動診断)に関する研究:
     心不全などの循環管理では心臓・血管の特性を定量的に把握する必要があり、これが臨床的に可能となれば、急性心不全の自動診断・自動治療が可能となる。これまでに開発した自動治療システムを心機能の保護の観点から改良する研究やショックの初期蘇生に応用する研究を行っている。また、無侵襲的に血圧をモニターできるシステムや血圧脈波から動脈血管特性を推定する研究を行っている。心臓特性の解析については、単心室血行動態のシミュレーションなどを行っている。
  2. 慢性心不全治療のための循環系の神経性・体液性の制御の基礎研究:
     循環器疾患では心臓や血管系自体の異常に加え、これらの恒常性を維持する制御機構にも破綻をきたしている。このような病態を理解するために、循環制御系がどのような原理で心臓や血管系を制御しているのかを解明する研究を行っている。循環器疾患の新しい診断・治療法(動脈圧反射刺激治療など)の開発に資するため、病態や治療法による循環調節機構の変調、心不全に対する新しい薬物療法の開発、糖尿病や腎不全などを合併した心不全の病態解明に関する研究にも取り組んでいる。
  3. 循環バイオニック医学:循環系の制御機構への介入による心不全治療の開発:
     生体の循環調節機構に外部より介入することにより、生体自身の調節を超える制御が可能であり、各種循環器疾患の予後を改善できることが明らかとなった。この原理(循環バイオニック医学)をもとにした治療法の開発を推進している。特に、迷走神経の電気刺激や薬物による刺激により重症慢性心不全の予後が改善することが明らかになったが、迷走神経刺激による心保護の機序解明、心筋再生の効果増強に関する研究、自動制御による飲水量調節による心不全治療の研究を行っている。
  4. 循環器疾患の克服に貢献する新しい医療機器の開発:
     新規医療機器の開発に関して、心筋梗塞後の心不全発症を予防するカテーテル型治療装置の開発に取り組んでいる。

2018年の主な研究成果

  1. 包括的な循環器系(心臓・血管)特性解析(心不全の自動診断)に関する研究:
     低侵襲血行動態連続モニターに関し、急性心不全時に循環破綻を回避し安全にβ遮断薬を投与する自動循環管理システムの開発、血圧脈波検査装置TM-2772(ヘルスクロノス)により計測される動脈の弾性特性(管法則)の生理学的意義の検討を開始した。前年から継続していた、敗血症性ショックの初期蘇生における各種徐脈薬の有用性・有効性の比較検討、無侵襲血圧モニターシステム(ストレスフリーABPM)の開発についての検証を完了した。また、成人先天性心疾患患者の不整脈発生メカニズムの解明に関して、単心室症における心室非同期の評価法確立と再同期療法の適応評価、単心室血行動態の心室内機械的非同期のシミュレーションの研究を行った。
  2. 慢性心不全治療のための循環系の神経性・体液性の制御の基礎研究:
     慢性心不全の薬物治療に関して、代表的β遮断薬が血圧調節機構に及ぼす影響のシステム解析、選択的徐脈薬イバブラジンが交感神経性心拍数調節に及ぼす影響に関する研究を行った。他疾患を合併する循環器疾患の病態を解明するために、1型糖尿病モデルラットにおける動脈圧受容器反射のシステム解析、SGLT2阻害薬が1型糖尿病モデルラットの尿量調節に及ぼす影響、腎神経を温存した腎虚血再潅流による急性腎機能障害モデルの作成の研究を行った。循環系の神経性・体液性の制御に関して、心臓支配神経の切断と再生が成人早期心不全病態形成に及ぼす影響の研究を継続し、虚血骨格筋における微小血管再生能を持つ細胞群の同定・解析、マクロファージ由来エクソソームの虚血骨格筋における組織保護作用を検討した。
  3. 循環バイオニック医学:循環系の制御機構への介入による心不全治療の開発:
     循環系の制御機構への介入による心不全治療の開発に関して、迷走神経刺激とβ遮断薬の併用治療による心筋梗塞後重症心不全ラットの心機能・長期生存率の改善作用を明らかにした。他疾患を合併した循環器疾患の制御系への介入に関して、ドネペジル投与による薬理的迷走神経刺激が高血圧を合併した重症心不全ラットの心血管リモデリングと生存率に及ぼす影響、1型糖尿病モデルラットにおける中枢性迷走神経活性化機構の障害についての研究を実施した。また、再潅流心筋梗塞縮小薬の研究開発、虚血性心不全モデルにおける飲水行動制御と薬理的迷走神経刺激の併用治療効果の検討に関する研究を継続した。
  4. 循環器疾患の克服に貢献する新しい医療機器の開発:
     新しい治療機器の開発に関して、心筋梗塞後の心不全発症を予防するカテーテル型治療装置の開発を継続して実施した。

研究業績

  1. Kawada T, Turner MJ, Shimizu S, Kamiya A, Shishido T, Sugimachi M. Tonic aortic depressor nerve stimulation does not impede baroreflex dynamic characteristics concomitantly mediated by the stimulated nerve. American Journal of Physiology-Regulatory Integrative and Comparative Physiology. 314, R459-R467, 2018.
  2. Kawada T, Shimizu S, Hayama Y, Yamamoto H, Saku K, Shishido T, Sugimachi M. Derangement of open-loop static and dynamic characteristics of the carotid sinus baroreflex in streptozotocin-induced type 1 diabetic rats. American Journal of Physiology-Regulatory Integrative and Comparative Physiology. 315, R553-R567, 2018.
  3. Kimura Y, Takaki H, Inoue YY, Oguchi Y, Nagayama T, Nakashima T, Kawakami S, Nagase S, Noda T, Aiba T, Shimizu W, Kamakura S, Sugimachi M, Yasuda S, Shimokawa H, Kusano K. Isolated Late Activation Detected by Magnetocardiography Predicts Future Lethal Ventricular Arrhythmic Events in Patients With Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy. Circulation Journal. 82, 78-86, 2018.
  4. Miyamoto T, Manabe K, Ueda S, Nakahara H. Development of an anaesthetized-rat model of exercise hyperpnoea: an integrative model of respiratory control using an equilibrium diagram. Experimental Physiology. 103, 748-760, 2018.
  5. Yamamoto H, Kawada T, Shimizu S, Uemura K, Inagaki M, Kakehi K, Iwanaga Y, Fukuda K, Miyamoto T, Miyazaki S, Sugimachi M. Ivabradine does not acutely affect open-loop baroreflex static characteristics and spares sympathetic heart rate control in rats. International Journal of Cardiology. 257, 255-261, 2018.
  6. Nishikawa T, Saku K, Kishi T, Tohyama T, Abe K, Oga Y, Arimura T, Sakamoto T, Yoshida K, Sunagawa K, Tsutsui H. Pulmonary arterial input impedance reflects the mechanical properties of pulmonary arterial remodeling in rats with pulmonary hypertension. Life Sciences. 212, 225-232, 2018.
  7. Tohyama T, Saku K, Kawada T, Kishi T, Yoshida K, Nishikawa T, Mannoji H, Kamada K, Sunagawa K, Tsutsui H. Impact of lipopolysaccharide-induced acute inflammation on baroreflex-controlled sympathetic arterial pressure regulation. PLOS ONE. 13, e0190830, 2018.
  8. Otani K, Nishimura H, Kamiya A, Harada-Shiba M. Simplified Preparation of αvβ3 Integrin-Targeted Microbubbles Based on a Clinically Available Ultrasound Contrast Agent: Validation in a Tumor-Bearing Mouse Model. Ultrasound in Medicine and Biology. 44, 1063-1073, 2018.
  9. Fukumitsu M, Kawada T, Shimizu S, Sugimachi M. The pulsatile component of left atrial pressure has little effect on pulmonary artery impedance estimation in normal rats. Physiological Reports. 6, e13946, 2018.
  10. Shimizu S, Une D, Kawada T, Hayama Y, Kamiya A, Shishido T, Sugimachi M. Lumped parameter model for hemodynamic simulation of congenital heart diseases. The Journal of Physiological Sciences. 68, 103-111, 2018.
  11. 川田 徹, 杉町 勝. 神経刺激による循環制御 ―その利点と欠点―. 日本臨床麻酔学会誌. 38, 213-222, 2018.

過去の業績

最終更新日:2021年10月01日

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