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循環動態制御部

心磁図に関する研究

心臓から発生する磁場を多チャンネルの磁場センサーで計測し2次元マッピング解析を行う心磁図検査は、心電図同様に非侵襲でありながら、原理的に心電図法よりも高い空間分解能・高い感度で心臓電気活動を評価できると期待されています。本検査は、先進的診断法として循環器診療に大きく貢献できる可能性があり、2007年に当病院の生理機能検査部門に導入されました。

心磁図法でしかなしえない固有の利点としては、致死的不整脈の器質や電気的同期不全の原因となる電気的異常を検出できることであることが明らかになってきました。これまで限定的にしか成功していない、突然死など予後不良例の予測や心臓再同期療法の応答例予測などが心磁図によりはじめて可能となってきました。

心磁図は有用性が高い機器ですが高価な装置であるために全国には普及していません。これらの有用性をもとに、心磁図検査の普及を目指しています。

(1) 肥大型心筋症における予後予測

肥大型心筋症では長期間にわたり左室機能は正常近くに保たれることもあり、致死的不整脈発生の有無が予後を左右します。高リスクの患者には植込み型除細動器が必要ですが、致死的不整脈リスクの判定は必ずしも容易ではありません。そこで心磁図による検討を行いました。

左室機能が正常であり、QRS幅も正常な肥大型心筋症患者で心磁図を記録しました。脱分極過程、再分極過程の両方において電流マップが多方向性を示す例が見られました(図1)。そのうち多方向性脱分極が致死的不整脈の発生に関係していました。多方向脱分極は28%に認められましたが、2.5年間の致死的不整脈発生率は、多方向脱分極の場合には28%であり、多方向脱分極がない場合(3%)よりも有意(p<0.001)により大きいことが示されました。

図1

図1 肥大型心筋症でみられる多方向再分極を示す症例

関連成果等

  • Moribayashi K, Takaki H, Okamura H, Noda T, Aiba T, Kamakura S, Yasuda S, Ogawa H, Kusano K, Sugimach M. Magnetocardiographic analysis of ventricular repolarization in hypertrophic cardiomyopathy:the role of heterogeneous repolarization on the occurrence of lethal ventricular tachyarrhythmias. Eur Heart J. 35: 931, 2014 (ESC2014, Abstract)
  • Sakane K, Takaki H, Hashimoto S, Nakajima I, Miyamoto K, Yamada Y, Okamura H, Noda T, Satomi K, Aiba T, Kamakura S, Shimizu W, Sugimachi M. Abnormal ventricular conduction sequence on magnetocardiography is useful for predicting lethal arrhythmic events in patients with hypertrophic cardiomyopathy and preserved systolic function. Circulation 126: A14162, 2012 (AHA 2012, Abstract).

(2) 非虚血性拡張型心筋症における予後予測

わが国では拡張型心筋症において非虚血性の症例が多いことが知られています。その予後には、左室機能低下と致死的不整脈が相互に関連して影響しています。そのため、心磁図によって致死的不整脈基質の有無を検討することは、左室機能低下・致死的不整脈双方に起因した予後に関連すると考えられます。

また、非虚血性拡張型心筋症の症例ではQRS幅の延長は予後不良のひとつのマーカですが、正常QRS幅でも必ずしも予後は良好ではないことも知られています。

そこで正常QRS幅の非虚血性拡張型心筋症の症例の心磁図を検討したところ、多方向脱分極(致死的不整脈の基質)によって、心臓死・致死的不整脈・左室補助装置装着をすべて含むMACE(主要有害心イベント)の最も強い独立した予測因子であることが明らかになりました(図2)。

図2

図2 正常QRS幅の非虚血性拡張型心筋症における多方向脱分極(LiDC)の有無によるMACE(主要有害心イベント)の発生率の差

関連成果等

  • Kawakami S, Takaki H, Hashimoto S, Aiba T, Kusano K, Ogawa H, Yasuda S, Kamakura S, Sugimachi M. Multi-channel magnetocardiography can disclose left intraventricular disorganized conduction and can predict cardiac events in non-ischemic dilated cardiomyopathy patients with narrow QRS. Eur Heart J. 36: 49-50, 2015 (ESC2015, Abstract)
  • Moribayashi K, Takaki H, Okamura H, Noda T, Aiba T, Kamakura S, Yasuda S, Ogawa H, Kusano K, Sugimachi M. Heterogeneous repolarization on magnetocardiography predicts adverse outcomes in patients with dilated cardiomyopathy. Eur Heart J. 35: 608, 2014 (ESC2014, Abstract)
  • Kawakami S, Takaki H, Hashimoto S, Yamada Y, Okamura H, Noda T, Satomi K, Aiba T, Shimizu W, Kamakura S, Fragmented left ventricular activation on magnetocardiography can predict adverse cardiac events in dilated cardiomyopathy patients with narrow QRS Duration. Circulation 126: A12431, 2012 (AHA 2012, Abstract).

(3) 不整脈源性右室心筋症における予後予測

右室心筋の脂肪変性・線維化を特徴とする不整脈源性右室心筋症(ARVC)は、右室起源の心室頻拍、心不全、突然死の原因になります。本疾患では右室内の局所的な伝導遅延が心室頻拍発生に深く関わっており、その一部は心電図上でQRSの直後の結節(ε波)として観察されますが、微小で判別困難な場合もあります。心磁図ではQRS後半からST部分にかけて不規則な棘状の磁場信号が明瞭に観察可能であり、右室内の著明な末梢性伝導異常と伝導遅延を明確に検出することが可能でした。さらに、2次元マッピング解析により伝導異常・遅延の部位同定が可能となり、その同定部位は侵襲的電気生理学的検査(CARTO)の結果とよく一致していました。異常電位の部位を正確に同定できることは、加算平均心電図(遅延電位の検出)には不可能であり、心磁図法独自の利点と言えます。

さらに右室の主興奮から50msec以上遅れて起こる右室心筋の再興奮(図3)が主要不整脈イベント(心臓死・致死的不整脈・ICD適切作動)の唯一の独立した予測因子であることも示されました(図4)。

図3

図3 右室の主興奮から50msec以上遅れて起こる右室心筋の再興奮(ILA)の定義

図4

図4 50msec以上遅れて起こるILAの有無による主要不整脈イベントの差

関連成果等

  • Kimura Y, Takaki H, Miyamoto K, Okamura H, Noda T, Aiba T, Kamakura S, Yasuda S, Kusano K, Sugimachi M. Isolated late RV activation revealed by magnetocardiography predicts future lethal ventricular arrhythmic events in patients with arrhythmorenic right ventricular cardiomyopathy. Eur Heart J. 36: 48, 2015 (ESC2015, Abstract).
  • Kimura Y, Yamada Y, Takaki H, Hashimoto S, Nakajima I, Miyamoto K, Okamura H, Noda T, Satomi K, Aiba T, Shimizu W, Kamakura S, Sugimachi M. Utility of magnetocardiography for evaluating arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy. Circulation 126: A17124, 2012 (AHA 2012, Abstract).

(4) 左心室内の電気的同期不全の評価と心室再同期療法効果の予測

心室同期不全は、心不全例の血行動態を増悪させるため、同期の改善を目指して心室再同期療法(CRT)が行われています。しかしCRTの有効例と無効例を事前に予測することは困難でした。CRT治療を必要とした重症心不全例で心磁図解析を行ったところ、左室興奮伝搬(電流)が右から左へ一様に進行する一方向伝導パターン(図5A)とQRS中期の電流が同時に別々の方向に向かう多方向伝導パターン(図5B)に分類され、その分類はCRT有効・無効の予測に極めて有用でした(一方向伝導パターンは8例中7例が有効、多方向伝導パターンは7例中1例が有効)。

図5

図5 一方向伝導パターン(A)と多方向伝導パターン(B)

関連成果等

  • Nakashima T, Takaki H, Okamura H, Noda T, Aiba T, Kamakura S, Ogawa H, Yasuda S, Kusano K, Sugimachi M. Homogeneous LV conduction sequence on MCG predicts an excellent long-term prognosis in narrow QRS patients after cardiac resynchronization therapy. Eur Heart J. 35: 459-460, 2014 (ESC2014, Abstract)

最終更新日 2016年07月01日

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