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循環動態制御部

心臓・血管力学の研究

私たちは、臨床において遭遇する多様な循環病態を説明することができるよう、循環器系の力学的モデル化を行いました。このモデルをもとに急性心不全時の血行動態を評価し、投薬治療を最適化するための自動治療システムの開発を行っています。さらに、自動治療システムに必要な血行動態の測定を、できるだけ侵襲無く行うための超音波測定法についても開発を行っています。

(1) 循環器系全体のモデル化を用いた急性重症心不全の血行動態自動治療システムの開発

私たちはガイトンの循環平衡理論を拡張し、多様な循環病態を取り扱うことができる循環平衡モデルを確立しました。このモデルは全循環系を左右心室とそれらの後負荷からなる心臓部、全身・肺循環からなる血管部に分離し、心拍出量・左心房圧・右心房圧の3次元座標上で解析します。心臓部からの心拍出量は、左右心房圧増加により増加し(フランクスターリング法則)、座標上では統合心拍出量曲線として表されます(図1)。血管部から心臓部への静脈還流量は左右心房圧が増加すれば減少し、座標上では両心房圧に対して負の傾きを持った静脈還流平面として表されます。

急性心不全の患者救命には、複数の心血管作動薬を用いて異常な血圧・心拍出量・左心房圧を正常化する必要があります。私たちは、循環平衡モデルに基づき、心拍出量曲線、静脈還流平面、血管抵抗を正常化させる負帰還制御により、血圧・心拍出量・左心房圧を同時に自動的に正常化できるシステムを開発しました。図2は、心不全犬での自動制御中により血圧・心拍出量・左心房圧の制御目標値からの偏差が速やかにかつ高い精度・安定性で制御できることを示されています。本システムにより、循環器非専門医にも高度な循環管理が可能となることが期待されます。

図1

図1 統合的循環平衡理論:静脈還流平面と統合心拍出量曲線の交点から心拍出量と左右心房圧が決定

図2

図2 自動治療中の血圧・心拍出量・左心房圧の治療目標との誤差

関連成果等

  • Uemura K, Sugimachi M, Kawada T, Kamiya A, Jin Y, Kashihara K, Sunagawa K. A novel framework of circulatory equilibrium. Am J Physiol Heart Circ Physiol 286: H2376-2385, 2004.
  • Uemura K, Kamiya A, Hidaka I, Kawada T, Shimizu S, Shishido T, Yoshizawa M, Sugimachi M, Sunagawa K. Automated drug delivery system to control systemic arterial pressure, cardiac output, and left heart filling pressure in acute decompensated heart failure. J Appl Physiol 100: 1278-1286, 2006.
  • Uemura K, Sunagawa K, Sugimachi M. Computationally managed bradycardia improved cardiac energetics while restoring normal hemodynamics in heart failure. Ann Biomed Eng. 37: 82-93, 2009.
  • 特許登録:心疾患治療システム.
  • 特許登録:心臓酸素消費量自動最小化システムおよびこれを用いた心疾患治療システム.

(2) 血行動態自動治療システムに必要な血行動態の低侵襲測定法の開発

重症患者の循環器系作動状況を正確に把握するには血圧・心拍出量・左心房圧の3つの情報が最低限必要です。これら3つを低侵襲で正確かつ長期連続測定できる方法を開発しました。血圧は重症時には末梢動脈から観血的に連続モニタされていますが、回復期にはカフでの間欠的な測定となります。血管径の超音波測定による非侵襲な連続血圧モニタを開発しています。

また合併症の多さから近年、肺動脈カテによる必要な心拍出量・左房圧測定が控えられています。この状況を克服するため、超音波ドップラーによる心拍出量・左房圧の正確な低侵襲モニタ法を開発しています。大動脈血流のピーク値と血圧波形から得られた駆出時間、平均血圧を用いることで正確な心拍出量モニタができることが明らかになりました(図3左は心拍出量の本法での推定結果、右は従来法)。また左心房圧は右心房圧(静脈圧)と左右の心ポンプ機能比から推定できることが明らかとなり、現在臨床応用が可能かどうかを検討しています。さらにこれらの低侵襲測定法を用いた血行動態の自動治療が可能であることも明らかになりました。

図3

図3 心拍出量の低侵襲モニタ法の精度(左)と従来法との比較(右)

図4

図4 左心房圧の右心房圧からの推定精度(左)と右心房圧そのものとの比較(右)

関連成果等

  • Uemura K, Kawada T, Inagaki M, Sugimachi M. A minimally invasive monitoring system of cardiac output using aortic flow velocity and peripheral arterial pressure profile. Anesth Analg. 116: 1006-1017, 2013.
  • Uemura K, Inagaki M, Zheng C, Li M, Kawada T, Sugimachi M. A novel technique to predict pulmonary capillary wedge pressure utilizing central venous pressure and tissue Doppler tricuspid/mitral annular velocities. Heart Vessels. 30: 516-526, 2015.
  • Uemura K, Kawada T, Zheng C, Sugimachi M. Less invasive and inotrope-reduction approach to automated closed-loop control of hemodynamics in decompensated heart failure. IEEE Trans Biomed Eng. (in press) 2015.

最終更新日 2016年07月01日

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