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MRI適合性試験環境の整備-事故を未然に防ぐための安全確認試験の実施について-

平成28年8月29日

国立循環器病研究センター(略称:国循)研究所画像診断医学部の飯田秀博部長とバイオビュー株式会社(東京都千代田区、代表取締役:余川隆)との共同研究チームは、埋め込み型医療機器のMRI(磁気共鳴画像装置)適合試験の実施環境の整備をしました。MRI検査中の事故を回避するために事前の安全評価を実施する体制を整備したのは、国内では初めてのことです。国内企業による医療機器の開発推進に貢献できればと考えています。

背景

近年、わが国の医療機関におけるMRIの普及は目覚ましく、5,000台を超える装置が稼働しており、通常の検査のみならず人間ドックなどにも広く使用されています。画像撮影の際に使用する高周波信号は被写体にエネルギーを与え発熱させますが、条件によっては局所的に発熱が大きくなります。さらに、撮影の際に場所によって磁場の強度を変える(傾斜)ことがありますが、急に傾斜を与えた場合は金属など導電性を有する物質内で電流が発生し(渦電流)ます。これらの現象は撮影中のやけど等の事故の一因となります。

一方で、ステントやコイル、クリップ、ペースメーカなどが留置されている患者がMRI検査を受ける機会が増えています。また、一般の化粧品や衣類の繊維などにも様々な発色用金属が使用されており、これらのことから磁性や導電性をもつ材料がMRI検査の現場に存在する機会が増加しています。米国ではインプラント医療機器(埋め込み型医療機器の総称)に対してMRI検査での安全性を確認するため一定の基準で安全試験を実施することが義務付けられています。日本国内では安全試験の法制化はなされておらず、また安全試験の実施体制も未整備ですが、安全性に対する関心は徐々に高まっているといえます。

研究の成果

飯田部長らの研究チームは、米国で実施されている基準をもとに試験項目と手順を整備し、さらに独自の計測機器を開発して()、画像情報が多く診断能の高い3テスラMRI装置撮像時の安全性を確認する試験の実施環境を整備しました。既に10件を超える新規医療機器の申請の際に添付するデータの提供を行っています。

日本以外では米国とドイツで実施施設があります。ただし、日本では試験データの開示が求められる場合がありますが、海外試験センターはこれには応じない立場をとっているようです。また、海外試験所からの結果報告書は英文なので、これを日本語に翻訳する必要もあります。また、私たちは日本語で記載した試験データを依頼企業に提供しています。

今後の展望

現在の体制では1試験あたり48時間を超える計測を必要とするため、今後は計測時間の大幅な短縮を目指す計測機器の開発を急ぐ一方で、MRI装置内で利用する際に発生する渦電流を相殺する工夫など、MRI撮像に影響を与えないようにする機構の開発も視野に入れています。

(注)米国ASTM(試験材料協会)の規格に沿った、現在国循で実施可能な試験項目


磁気誘導性偏位力測定試験(ASTM 2052)


「対象物の帯磁率」、「静磁界の磁束密度の勾配」の相互作用によって、MR装置が対象物を引きつける力(磁気誘導性偏位力)を測定します。

磁気誘導性トルク測定試験(ASTM F2213)


「対象物の磁気双極性」、「静磁界の磁束密度」の相互作用により対象物を回転させる力(磁気誘導性トルク)を測定します。

発熱測定試験(ASTM F2182)


「対象物の導電率」と「RF電磁界」の相互作用による対象物への電流誘導に伴うジュール熱を測定します。

アーチファクト測定試験(ASTM F2119)


「対象物の帯磁率」と「静磁界及び勾配磁界」の相互作用による磁界の乱れ、「対象物の導電率」と「勾配磁界」の相互作用に伴う渦電流磁界、ならびに「対象物の導電率」と「RF磁界」の相互作用などの結果生じる偽像アーチファクトを測定します。

本研究に関連する部局
・国立循環器病研究センター研究所 画像診断医学部
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