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脳梗塞患者への抗凝固療法:2年間の追跡結果を公表
~SAMURAI-NVAF研究~

平成30年6月1日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)の豊田一則副院長(脳血管部門長)を研究代表者とする、国内18施設の合同研究チームによる前向き観察研究、SAMURAI-NVAF研究(Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement-NonValvular Atrial Fibrillation研究)における、2年間の患者追跡結果が明らかになり、国循脳血管内科の吉村壮平医師、古賀政利部長らが纏めた研究成果が、平成30年6月1日に日本循環器学会の英文機関誌「Circulation Journal」に電子掲載されました。直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)が汎用される現在の、わが国の臨床現場における実態を反映した報告です。

SAMURAI-NVAF研究の紹介

心房細動が脳梗塞発症の大きな危険因子であることは、広く知られています。その発症予防には抗凝固薬(血液が固まる作用を抑制する薬)が使われます。従来からのワルファリンに加えて、2011年以降に国内ではダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンの4つのDOACが、次々と承認されました。脳梗塞を起こした心房細動患者に、これらの薬を発症後比較的早期から用いた場合にどの程度有効かは、国際的な大型試験でも明らかになっていません。

SAMURAI-NVAF研究では、2011年9月から2014年3月までの31か月間に、国内18施設に急性脳梗塞や一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)で緊急入院し、非弁膜症性心房細動を有していた1192例を登録しました。このうち退院時に経口抗凝固薬が処方された1116例(ワルファリン 650例、DOAC 466例)に、今回の追跡研究を行いました。

研究成果

この研究では、担当医師が各患者の病状を考慮して、抗凝固薬を選んでいます。したがってワルファリン患者群とDOAC患者群とでは、特徴が大きく異なります。DOAC群の方がより男性が多く、若くて、脳梗塞が軽症です。とくに退院時点での日常生活能力に群間差が大きく、車椅子を常に要するレベル以上の重い後遺症を有する割合が、ワルファリン群で53%に対して、DOAC群で19%です。この研究における他の大きな特徴として、DOAC開始日(中央値)が脳梗塞発症4日後と、従来の国内外の治療推奨よりもかなり早めに処方され始めている点が挙げられます。

脳梗塞発症2年後までに、脳卒中ないし全身塞栓症をおこした割合は、ワルファリン群で10.5%、DOAC群で8.4%です。患者のもともとの特徴を補正する統計解析を行った後に、DOAC群はワルファリン群に対して1.07倍(95%信頼区間0.66~1.72倍)の危険を有していることが分かります。同じように大出血(国際血栓止血学会分類)の危険は0.51倍(0.22~1.08倍)、頭蓋内出血の危険は0.32倍(0.09~0.97倍)になります。主だったイベントの2群での結果を、下表に示します。

表:2年後までのイベント発生状況

ワルファリン群の発生率DOAC群の発生率調整ハザード比
主要イベント
脳卒中ないし全身塞栓症 10.50% (8.07-13.55) 8.40% (6.06-11.52) 1.07 (0.66-1.72)
大出血 5.70% (3.94-8.19) 2.55% (1.38-4.67) 0.51 (0.22-1.08)
その他の重要なイベント
虚血イベント全体 11.66% (9.10-14.81) 9.81% (7.28-13.09) 1.13 (0.72-1.75)
脳梗塞またはTIA 8.33% (6.17-11.16) 8.40% (6.06-11.52) 1.58 (0.95-2.62)
頭蓋内出血 2.79% (1.63-4.74) 1.03% (0.39-2.70) 0.32 (0.09-0.97)
死 亡 28.36% (24.85-32.15) 6.38% (4.41-9.15) 0.41 (0.26-0.63)

括弧内は95%信頼区間を示す。調整要因に性別、年齢、CHADS2スコア、NIH Stroke Scale値、クレアチニンクリアランス値を用いる。

表中の項目で群間差が目立つのは2年後までの死亡率で、DOAC群が補正後も0.41倍(95%信頼区間0.26~0.63倍)、逆に言えばワルファリン群の死亡率が2.4倍高くなります。ワルファリン群で死因の明らかな例の約半数は感染症で、なかでも肺炎が多く見られます。既に書きましたように、今回の2群は退院時点での重症例の割合が大きく異なりますので、統計学的処理では補正できない大きな差が現れたようです。

この研究成果から分かること

DOACが開発された際に行われた国際無作為化比較試験からは、DOACは概してワルファリンと同程度(またはそれ以上)に有効で、ワルファリンよりも安全という結果が報告されてきました。今回の脳梗塞/TIA患者を対象とした国内観察研究も、国際試験の成績と同じ傾向を示しました。

心房細動を持つ脳梗塞患者へのDOACの効果について、世界中が注目しています。現在SAMURAI-NVAF研究と海外のいくつかの同種観察研究を組み合わせた統合解析も行われ、その結果が間もなく公表されます。またSAMURAI-NVAF研究からのサブ研究も、逐次公表されています。この研究成果が、脳梗塞患者のより良い治療法の開発に繋がることを、願っています。

最終更新日 2018年06月01日

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