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冠動脈疾患を予測する新しいリスクスコアの開発

日本人の実態に則した内容で、より正確な予測が可能に

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らの研究チームは、心筋梗塞など冠動脈疾患の10年間の発症危険度を予測する新しいリスクスコアを開発しました。本研究の成果は、専門誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」オンライン版に平成26年3月25日付で掲載されました。

日本人の心筋梗塞発症リスクは欧米人に比べて極めて低いため、欧米で用いられてきた10年間の冠動脈疾患の発症を予測するスコアであるフラミンガムリスクスコア(FRS)は、日本人には不正確と考えられるもののこれまで妥当性が検討されていませんでした。一方慢性腎臓病(CKD)は近年冠動脈疾患のリスクとして注目されていますが、FRSでは検討されておらず、CKD患者にFRSを適用すると冠動脈疾患発症リスクが過少評価されることが知られています。

今回、当センターで行っている吹田研究をもとに心筋梗塞など心臓病のリスクの高い都市部住民を対象として、CKDを含む様々な危険因子を組み合わせて冠動脈疾患の10年間の発症危険度を予測するリスクスコアを開発し、その妥当性をFRSと比較検証しました。本リスクスコアは心筋梗塞および脳卒中の既往のない5,866人の健常者(男性2,788 人、女性3,078 人, 平均年齢: 54.5 歳)を平均11.8年追跡して213例の冠動脈疾患を観察した上で、実際の臨床上に使いやすいよう各リスクに割り当てられた点数を足し合わせることで、10年間の冠動脈疾患発症確率を簡単に予測できるようにしました(吹田スコア:表1)。その結果、FRSは発症確率を過大評価する傾向にありました。(最大で約14%)一方、吹田スコアは実際の発症確率とほぼ同様に冠動脈疾患の発症を予測でき(図1)、またリスクスコアにCKDを含むことでより正確な予想が可能となることが明らかになりました。また、純再分類改善度:NRIで43%の予測精度向上が認められました。

吹田スコアはNIPPON DATAなど死亡を予測する従前のスコアに比べて、都市部の住民を対象として発症を予測し、CKDなども危険因子に含む新しいリスクスコアです。現行のガイドラインにも沿った吹田スコアはより正確に冠動脈疾患の発症を予測できるので、今後は冠動脈疾患の予防に役立つと期待されます。

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【表1】吹田スコア
吹田研究により当センターが開発したスコアを、実際の臨床に使用しやすいよう各リスクに割り当てられた点数を足し合わせることで、10年間の冠動脈疾患発症リスクを予測できるようにしました。脂質カテゴリーの基準値は、動脈硬化学会のガイドライン(2012)に従い作成しました。
リスクの中ではCKDのStage4以上を最も高く、次いでLDLコレステロール高値を高く評価するように設定しました。

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【図1】吹田スコアとFRSによる、予測確率と実際の発症割合との比較

FRSは実際の発症割合と比較すると、最大14%も冠動脈疾患リスクを過大評価していたことが明らかになりました。一方、吹田スコアの予測と実際の発症割合には、有意な差は見られませんでした。

なお、表中「予測リスクの五分位」とは、予測した発症確率を低い順から5つのグループに分けたものです。

(青:実際の発症割合、赤:吹田スコアの予測値、緑:FRSの予測値、紫:吹田研究から得られた平均値により補正したFRSの予測値)

最終更新日 2014年05月09日

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