メニュー

分子薬理部

部の業績
2015年業績

2015年の業績

研究活動の概要

分子薬理部では、循環器病の発症機序の解明、診断・治療法の開発と予防法の確立をめざして、心血管系の情報伝達や制御に重要なペプチド、タンパク質と脂質を主たる研究対象に、生理活性ペプチドの発見、ペプチドや脂質の作用機序、疾患関連タンパク質の探索、これらの病態生理的意義の解明に関する研究を実施している。研究成果の臨床応用を進めるため、臨床試料の収集、測定や診断法の開発などに重点をおいている。

構造機能研究室では、心疾患などの原因となる高トリグリセリド血症の個々人にみあった予防法確立のため、開発した脂質代謝酵素リポ蛋白リパーゼ(LPL)、肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)活性および蛋白測定法と遺伝子解析法を用い、LPL変異症例の集積を継続している。また、共同研究者の平野賢一らにより見出された中性脂肪蓄積心筋血管症の早期発見をめざし、本症の原因である新規リパーゼadipose triglyceride lipase (ATGL)活性測定系の開発とその臨床応用のための研究を実施した。

薬効代謝研究室では、循環器病を制御する特異的な標的として、ヒト血管血球細胞の細胞周期に着目し、疾患発症・病態進展に直接関与する増殖性細胞を特異的に狙って細胞死を誘導する新規制御法、および制御に用いる新規物質の探索を進めた。また、循環器病を克服する根本的な新しい方法として、ヒト単球系細胞が平滑筋層へ遊走するメカニズムと制御法の解明を進めており、ヒト冠動脈平滑筋細胞の完全無血清培養上清が含む、強いヒト単球遊走活性についての解析を継続して進めた。

情報制御研究室では、質量分析を活用して生体内ペプチドを体系的に解析(ペプチドミクス)しており、新規生理活性ペプチドの探索ならびに発見されたペプチドの心臓における機能解析を続けている。新規分子の発見のみならず、ペプチドミクス解析の過程で、分泌タンパク質(細胞外マトリックス、ペプチドホルモン前駆体など)や膜タンパク質の細胞外プロセシング部位が確実に同定できることが判明し、研究を継続している。

2015年の主な研究成果

  • 共同研究者の平野賢一らにより見出された中性脂肪蓄積心筋血管症の早期発見をめざし、本症の原因である新規リパーゼadipose triglyceride lipase (ATGL)の活性測定系の開発に成功し、治験検体等の臨床検体の測定を開始した。
  • 増殖性ヒト単球由来細胞において、未だ役割に不明な点が多い核内受容体PPARδのアゴニストが新しい細胞死ネクロトーシス(制御型ネクローシス)を誘導する現象を見出しており、本現象の再現性を詳細に確認した。また、PPARδ欠損ヒト細胞を作製し、本新規細胞死を誘導する現象との関係について厳密な解析を進めた。
  • 循環器病を制御する根本的な新しい標的として、ヒト単球系細胞が平滑筋層へ遊走するメカニズムと制御法の解明を推進している。ヒト冠動脈平滑筋細胞の完全無血清培養上清が含む、強いヒト単球遊走活性について解析を継続して進めた。
  • 細胞外マトリックス、膜型プロテアーゼ、ペプチドホルモン前駆体等の細胞外プロセシング部位について、in silicoでの予測との相違が、かなりの頻度で認められることをラット心臓線維芽細胞で明らかにした。典型例として、血圧調節ホルモンPAMPは予想されていた20アミノ酸ではなく、23アミノ酸が主要な分子型であることを明らかにした。
  • ラット初代培養のランゲルハンス島をNERP-1,NERP-2存在下に3日間培養すると、グルコースで誘導されるインスリン分泌が抑制されること、ならびに糖尿病の症例でNERP-2の発現が増加することを宮崎大学医学部との共同研究で明らかにした。
  • ラット心臓線維芽細胞より膜タンパク質から生成する新たな生理活性ペプチドを見出し、心臓における機能を解明した。

研究業績

  1. Kim JW, Rhee M, Park JH, Yamaguchi H, Sasaki K, Minamino N, Nakazato M, Song DK, Yoon KH. Chronic effects of neuroendocrine regulatory peptide (NERP-1 and-2) on insulin secretion and gene expression in pancreatic beta-cells. Biochemical and Biophysical Research Communications. 457, 148-153, 2015.
  2. Tsuchiya T, Osaki T, Minamino N, Sasaki K. Peptidomics for Studying Limited Proteolysis. Journal of Radiation Research. 14, 4921-4931, 2015.

最終更新日:2021年10月01日

各部の紹介About

設定メニュー