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二尖弁大動脈弁狭窄症の進展メカニズムについての病理学的検討

平成28年8月18日

国立循環器病研究センター(略称:国循)心不全科の濱谷康弘医師、安斉俊久部長、臨床病理科の植田初江部長らの合同研究チームは、二尖弁大動脈弁狭窄症(注1)の進展に、線維化が関与している可能性を初めて報告しました。本研究の成果は科学誌「PLoS ONE」に平成28年8月1日(日本時間)に掲載されました。

背景

先天性の大動脈弁二尖弁(注2)は、全人口の約0.5-2.0%に合併する先天的な異常と言われており、大動脈弁狭窄症を来す主要な原因の一つです。二尖弁大動脈弁狭窄症は、三尖弁大動脈弁狭窄症と比較して、年齢がより若いうちから弁の狭窄が進行すると言われており、若年者の中では大動脈弁狭窄症の最も多い原因です。しかし、大動脈弁二尖弁における、大動脈弁狭窄症進展のメカニズムは不明な点が多いのが現状でした。

研究手法と成果

本研究では、当センターで大動脈弁二尖弁による重症大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術を行った24例の大動脈弁検体と、三尖弁による大動脈弁狭窄症で大動脈弁置換術を行った24例、二尖弁による大動脈弁逆流症で大動脈弁置換術を行った24例の大動脈弁検体の病理標本を用いて、3群間での病理組織像の比較検討を行いました。3群の肉眼組織像を図1に示しています。
病理学的検討の結果、二尖弁大動脈弁逆流症(注3)と比較して、炎症や血管新生、石灰化の程度は二尖弁大動脈弁狭窄症で多く、二尖弁大動脈弁狭窄症と三尖弁大動脈弁狭窄症においては同程度でした(図2)。
一方、線維化(注4)の程度は三尖弁大動脈弁狭窄症や二尖弁大動脈弁逆流症の患者と比較し、二尖弁大動脈狭窄症の患者で有意に多いことが分かりました(図3)。

今後の展望

これらの結果から、二尖弁患者においては、弁の線維化が狭窄に関与していることが示唆されました。病状が無くても進行が速いと言われており、注意を要します。二尖弁大動脈弁狭窄症のメカニズムの解明、治療法の開発につながると期待されます。多数の症例において、より詳細にメカニズムに迫る研究を行う事が今後の課題です。

(注1)二尖弁大動脈弁狭窄症
大動脈弁二尖弁(下記注2参照)により、大動脈弁が硬くなったり肥厚したりすることにより、血液の通り道が狭くなること。

(注2)大動脈弁二尖弁
大動脈弁には通常開閉する部分(弁尖)が3つある(=三尖弁)が、そのうち2つが分離発育せず、結果として開閉部分(弁尖)が2つになっている状態。
二尖弁そのものが病気というわけではなく、開閉部分が2つしかないことで弁に過度な負担がかかり、大動脈弁の狭窄や逆流が起こることがある。

(注3)二尖弁大動脈弁逆流症
大動脈弁二尖弁により、大動脈弁が十分に閉まらなくなり、血液が逆流すること。

(注4)線維化
内臓などの組織を構成する結合組織(からだを作る組織で、体を支えたり、体の中のさまざまな部分の形を維持したりといった多様なはたらきをするもの)が異常増殖すること。

<(図1)二尖弁大動脈弁狭窄症、二尖弁大動脈弁逆流症および三尖弁大動脈弁狭窄症の肉眼像

(図1)二尖弁大動脈弁狭窄症、二尖弁大動脈弁逆流症および三尖弁大動脈弁狭窄症の肉眼像

各弁の肉眼像を示しています。三尖弁大動脈弁狭窄症と二尖弁大動脈弁狭窄症では著明な石灰化の沈着を認めています。また、二尖弁大動脈弁狭窄症では、他と比較して(線維性の)肥厚を認めています。

(図2)二尖弁大動脈弁狭窄症、二尖弁大動脈弁逆流症および三尖弁大動脈弁狭窄症の病理組織像
<石灰化の程度 (上段:マッソン・トリクローム染色、下段:オステオポンチン 免疫組織化学染色)>

(図2)二尖弁大動脈弁狭窄症、二尖弁大動脈弁逆流症および三尖弁大動脈弁狭窄症の病理組織像

下段の赤矢印が、石灰化の程度を示すオステオポンチンの発現度合いを示しています。

(図3) 3群間における、大動脈弁線維化度合いの比較
<線維化の程度 (上段:マッソン・トリクローム染色、下段:テネイシンC  免疫組
化学染色)>

(図3) 3群間における、大動脈弁線維化度合いの比較

大動脈弁における線維化の程度を示しています。下段の赤矢印が、線維化にも関連するテネイシンCの発現を示しています。二尖弁大動脈弁狭窄症においては、他の2群と比較して、顕著な線維化を認めています。

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