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慢性血栓塞栓性肺高血圧症におけるバルーン肺動脈形成術後の心臓リハビリの有効性を確認

平成28年6月28日

国立循環器病研究センター(略称:国循)肺循環科の福井重文医師、大郷剛医長、後藤葉一循環器病リハビリテーション部長らの研究チームは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(以下CTEPH)におけるバルーン肺動脈形成術(以下BPA)終了後に開始する心臓リハビリテーション(以下心リハ)は安全かつ運動能力の改善に非常に有効であることを明らかにしました。本研究は、イギリスの医療専門誌「Heart」オンライン版に平成28年5月24日に掲載されました。

背景

肺に慢性的に血栓ができると、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が高くなり、肺動脈に血液を送り込む右心室の機能が低下します(右心不全)。これがCTEPHで、厚生労働省指定の難病です。治療法としては外科的手術やBPAが一般的ですが、外科手術は非常に高度であるため施術可能な施設は限られており、また高齢や血栓の状況などから手術の適応とならないこともあります。一方近年では、肺高血圧の改善のみならず右心室機能や運動能力の向上、自覚症状の改善などBPAの安全性や有効性が認められ、世界的にも普及しつつあります。しかし、BPA後の安静時平均肺動脈圧は23mmHgで肺高血圧症の定義とされる25mmHgよりは改善するものの、複数回のBPA後も運動能力低下や息切れなど心不全症状が続くケースもあることが、BPAの新たな問題点として注目されています。

研究手法と成果

この新しい問題に対し福井医師らの研究チームは、複数回のBPA終了後1週間以内に開始する12週間の心リハ(図1)への参加群(17名)と不参加群(24名)の運動能力の比較をしました。その結果、心リハ終了時の運動能力の改善率は不参加群で+2.3%であったのに対し参加群は+11.2%と大きく改善し、心リハが終了する3ヶ月後には運動能力の年齢予測値が78.2%と正常に近いレベルまで(80%以上が正常)改善しました(図2)。このことから、BPAとその直後からの心リハの組み合わせはCTEPH患者の症状改善と運動能力回復に非常に有効であるとわかりました。

今後の展望

本研究結果により、従来運動を控えた方がよいとされていたCTEPHを含む肺高血圧患者に対する積極的な心リハの適用拡大とそれに伴う大幅な機能改善が期待されます。しかし、動いた時の血中酸素濃度低下により在宅酸素療法が必要になるケースも多いのが現状であり、今後は積極的な上肢や呼吸筋のリハビリトレーニングの追加により呼吸筋力や血中酸素濃度の改善につながるかどうかが重要な検討課題となると考えられます。

(図1)BPA治療後の心リハスケジュール

(図2)12週間の心リハ終了後の運動能力改善割合
12週間の心リハ参加群では、酸素取込量(=運動能力)が平均11.2%向上したのに対し、不参加群では2.3%の向上に留まっていた。また、運動量も参加群と不参加群の向上率はそれぞれ13.9%と0.3%と、大きく差が出る結果となった。

最終更新日 2016年06月28日

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