広報活動
-国循発クラウドファンディング第4弾-医療従事者発「一つの心室でも生きるためのサポートプロジェクト」
~ 「心臓手術」から「生きる喜び」へ先天性心疾患とともに生きる人々を支える新たな挑戦 ~
2025年11月10日
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の大内秀雄/成人先天性疾患センター/小児循環器内科医長のグループは、クラウドファンディングを開始します。この取り組みは、生まれつき心臓の病気を持つ子どもを救うため、心室機能を一つにする「フォンタン手術」受けた人への支えを広げるものです。手術のあとの体のケアに加え、心のつらさや生活の困りごとまで、一つのネットワークで支える体制をつくります。フォンタン手術を受けた人は、心臓の働きが特別なため、生活や仕事に制限があったり、社会から孤立することがあります。そのつらさが寿命にも影響することがわかっています。国循にとって、今回のクラウドファンディングは4回目のプロジェクトです。生まれつきの心臓病のために手術を受けた人たちの現状を多くの人に知ってもらい、様々な問題の解決につなげたいと考えています。
身体的リスクだけでなく、社会的にも経済的にも厳しい状況
日本小児循環器学会の調査(2023年※)では、出生数727,277人のうち9,284人に生まれつき心臓の異常がありました。発生率は約1.2%です。以前は、こうした患者は酸素吸入が必要で、日常生活に大きな制限があり、死亡率も高い状況でした。しかし、1971年から「フォンタン手術」が始まりました。これは、一つの心室で血液を全身へ送り出して、全身の血液の流れを保つための手術です。2020年には417件が行われて、多くの命が救われています。フォンタン手術後の患者は、世界で約7万人、日本国内では約1万人とされています。手術後でも、心臓の機能は普通の人の約2/3程度で、全身への負担が続くため、定期的な検査や見守りが必要です。しかし、専門医が少ないことや医療情報の共有不足のため、フォンタン手術後に特有の症状が見逃され、「治った」や「問題がない」と誤解されることもあります。その結果、障害基礎年金が受けにくく、成人後も、健康面だけでなく、社会的・経済的にも厳しい状況の中で過ごす人が少なくありません。
※小児期発生心疾患実態調査2023

先天性心疾患フォンタン手術後についてより広く知ってほしい
フォンタン手術は、0~4歳の間に複数回の予備手術を受けた後に行われます。この手術は「ゴール」ではなく、「生きるためのスタート」です。見た目には健常者と同じように見えるため、周囲が配慮の必要性を感じず、患者自身も無理をして活動してしまうことがあります。その結果、体の血の循環が不十分で臓器障害が起こりやすく、特に肝細胞がんの発症リスクが高いことが報告されています。さらに、このようなフォンタン手術後の特性を、患者本人や家族だけでなく、医師でさえ十分に理解していない場合があり、治療時期を逃してしまう場合もあります。
国循は1977年の設立以来、先天性心疾患から重症心疾患、心臓移植に至るまで、心臓病診療における先進的取り組みを続けてきた循環器専門施設です。これまでに600例を超えるフォンタン術後患者と向き合い、小児から成人まで切れ目のない医療と情報連携を実現してきました。医療水準の向上には、医療従事者間の情報共有や術後臓器障害への研究が不可欠であると同時に、患者や家族の情報共有、心のケア、社会活動支援といった「医療とサポートの両輪」で支えていくことが求められます。そのためにも、小児先天性心疾患・フォンタン手術・術後の現実について広く社会に知ってもらうことが重要です。国循発の本プロジェクトは「医療とサポートの両輪」を実現するためのプラットフォーム作りです。

クラウドファンディングの展望
本プロジェクトは、日本発・医療従事者発の取り組みとして、クラウドファンディングを通じて活動資金を確保し、支援ネットワーク構築の第一歩を踏み出します。より多くの方々に関心を持っていただき、認知を広げ、「フォンタン支援体制の整備」が国として必要な活動であることを社会に発信していくことで、持続可能なサポート基盤の確立を目指しています。
私たちは、このクラウドファンディングを通じて、命をつなぎ、心を支える社会の輪を広げていきたいと考えています。
■プロジェクト概要
ひとつの心室で生きていく。フォンタン手術後の患者をみんなで支援したい
- ページURL :https://readyfor.jp/projects/fontan_ncvc
- 目標金額 :400万円
- 実行者(代表):大内 秀雄(成人先天性疾患センター/小児循環器内科部部長)
- 形式 :寄付金控除型 / All-or-Nothing 方式
- 公開期間 :2025年10月31日(金)9時 〜 2025年12月19日(金)23時
- 資金使途 :「フォンタンネットワーク(フォンタン手術後患者の基盤)」を将来的に立ち上げるため以下の活動資金として活用。
- フォンタン手術を受けた患者の社会的認知度を高める広報活動
- 病気の仕組みや状態をさらに解明する研究
- 患者やご家族、医療者同士の交流を促進する教育活動
- 社会の仕組みづくりや政策への提言
■参考
READYFOR 当該プロジェクトページ(https://readyfor.jp/projects/fontan_ncvc)

【報道機関からの問い合わせ先】
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069 (31120) MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
最終更新日:2025年11月10日