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心臓MRI検査方法が不安定プラークの検出に臨床応用できることをスタチン治療により証明

~心筋梗塞に発展するリスクを有する不安定なプラーク(動脈硬化巣)をMRIで同定~

2015年7月31日

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)の野口暉夫冠疾患科部長ら心臓血管内科グループと新古賀病院(福岡県久留米市)の共同研究チームは、心筋梗塞に発展する可能性の高い危険な動脈硬化巣である不安定プラークを検出する心臓MRI検査法が臨床応用できることを世界で初めて証明しました。本研究の成果は、専門誌「Journal of American College of Cardiology」(impact factor;16.503)に掲載されました。

不安定プラークとは?

急性心筋梗塞や不安定狭心症は、冠動脈血管壁のプラーク(動脈硬化巣)とよばれる塊が突然破綻して血栓を形成し、血管が塞がれることで起こります。この「破綻しやすい危険なプラーク」を「不安定プラーク」と呼びます。

研究の背景

通常、不安定プラークの検出には冠動脈CT(コンピューター断層撮影)が使用されています。しかし、放射線と造影剤を使用するCT検査方法は被曝や造影剤の副作用等のデメリットがあるため、より体への負担を軽減した新しい検査法の開発が望まれていました。これまで冠動脈のMRI撮影は困難とされてきましたが、当グループは以前の研究にてそれを克服しました。
その結果、国循では放射線や造影剤を使用せずにプラークを撮影できるMRI(核磁気共鳴法)による不安定プラークの画像診断を通常診療で行うことが可能となり、プラークの不安定化につながる変化を「白く輝いた」状態で描出しています。これまでの研究で、心事故を引き起こす不安定プラークは、周囲の心筋に比べ1.4倍以上も「輝き」が強いということが明らかになりました。しかし、不安定プラークを安定化させる作用のある抗動脈硬化薬を服用する過程において、プラークの輝度も比例して減弱するのかという点は不明でありました。

研究手法と成果

本研究では、冠動脈疾患患者48人にLDL(悪玉)コレステロールを強力に低下させる「ピタバスタチン」を12ヶ月間服用してもらい、服用前と服用12ヶ月後にMRI装置(1.5テスラ)を用いて冠動脈プラークを撮影し、白く輝いて描出されるプラークの輝度の変化を分析し、ピタバスタチンを服用しなかった対照患者群(48人)のプラーク輝度の変化と比較しました。その結果、ピタバスタチンを服用し、悪玉コレステロールが低下した患者群(目標LDL-コレステロール値80mg/dl未満)では、プラークの輝度は約19%も低下しましたが、スタチンを未服用群は逆に19%も上昇しました。
さらに、ピタバスタチン服用による輝度の低下は、上述の「周囲の心筋に比べ1.4倍以上輝きが強い不安定プラーク」であるほど顕著なことがわかりました。

今後の展望と課題

本研究の結果から、被曝や副作用の心配の無いMRIで不安定プラークを同定できること、さらに抗動脈硬化作用の期待できる薬剤の効果判定にMRIを用いた評価法が有用であることがわかりました。今後、研究に用いられた1.5テスラのMRI装置よりもさらに鮮明な画像が得られる3テスラMRI装置を用いた多施設研究で本研究の結果を検証していく予定です。

本研究への支援

・厚生労働科学研究費 平成24年度 循環器-009

掲載紙について(オンライン)

Journal of American College of Cardiology
http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=2396376

参考資料

● ピタバスタチン非服用群での試験開始時と12ヶ月間後のプラーク輝度の変化を比較
※ピタバスタチンを服用していない患者では、開始時(図A, B)には認められなかった白く輝くプラークが12ヶ月後に新たに出現した(図E, Fの矢印)。輝く程度は開始時の0.92(図A)から12ヶ月後に1.35まで(図E)増加しました(輝く程度が強くなったことはプラークが不安定化した事を意味します)。

ピタバスタチン非服用群での試験開始時と12ヶ月間後のプラーク輝度の変化を比較

● ピタバスタチン服用前と12ヶ月間服用後のプラーク輝度の変化を比較
※ピタバスタチンを服用した患者では、服用前(図A)と12ヶ月間服用後(図C)で、白く輝く程度は1.68から1.08まで低下しました(輝く程度が弱くなった事はプラークが安定化したことを意味します)。

ピタバスタチン服用前と12ヶ月間服用後のプラーク輝度の変化を比較

最終更新日 2015年07月31日

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