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小児家族性高コレステロール血症に対する ピタバスタチンの有効性および安全性の検討

~国内初、スタチンの小児投与承認の基礎となった研究~

2016年01月06日

国立循環器病研究センター(略称:国循)病態代謝部の斯波真理子部長らの研究グループは、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値(以下:LDL-C値)が生まれつき高い遺伝病「家族性高コレステロール血症(以下:FH)」の10歳~15歳のFH男児患者に対して、ピタバスタチン(主にLDL-C値を下げる薬剤、スタチン製剤のひとつ)の有効性および安全性を検討する治験を行いました。その結果、ピタバスタチンは、LDLコレステロール値を有意に、かつ安全に低下させることが明らかとなりました。この成果を受け、ピタバスタチンはスタチン製剤としては国内で初めてとなる小児FH患者に対する適用承認(2015年6月)に繋がりました。
本研究内容は、Journal of Atherosclerosis and Thrombosisオンライン版に平成28年1月6日(日本時間)に掲載されました。

研究の背景

FHは、生まれつきLDL-C値が高値であり、動脈硬化の進行が速く、若くして冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)を起こすリスクが高い遺伝病です。次項の図に示すように、累積LDL-C値がある一定になると、冠動脈疾患を引き起こしてしまうと考えられています。FH患者さんは、累積LDL-C値が早く上昇するため、若い時にこの累積LDL-C値の閾値に到達してしまいます。従って、FH患者さんは若い時に正確な診断をして、適切な治療を行うことが求められており、それによって冠動脈疾患の発症を減らしたり、遅くしたりすることができると考えられます。欧米では、小児期からスタチン治療を開始することがガイドラインで推奨されています。しかしながら、日本においては、いずれのスタチンも、小児に対する保険適応はその有効性と安全性が確認できていないとして、これまで認められていませんでした。

研究手法と成果

多施設ランダム化二重盲検法を用い、10歳~15歳のFH男児14例に対して、ピタバスタチン(1 mg/日あるいは2 mg/日)の52週間内服により、LDL-C値が、治療前の値に比べてどの程度低下しているか、何%低下しているか、について検討を行いました。

その結果、LDL-C値は、治療前(平均258 mg/dL)に比べ、ピタバスタチン1 mgでは27.3%、2 mgでは34.3%の低下を認めました。LDL-C値に加えて、総コレステロール値、non-HDL-C値(総コレステロール値からLDL-C値を引いた値)、アポリポ蛋白B値(脂質異常症治療の目安となる値)につき、全て52週まで低下した状態が続きました。1mg 服薬グループ(7例中7例)、2 mg 服薬グループ(7例中5例)の服薬患児で観察期間中に季節性アレルギー、胃腸炎、アレルギー性鼻炎、上気道炎、吹き出物などの有害事象を認めましたが、いずれもピタバスタチン服薬と関連した有害事象ではありませんでした。

ピタバスタチンは、小児FH男児患者に対してLDL-C値を有意に、かつ安全に低下させることが分かりました。

この結果を受け、ピタバスタチンは、スタチン製剤を含む脂質異常症治療薬としては国内で初めて、FHにおける小児用法を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得(2015年6月26日)することに繋がりました。

≪男児のみが本治験対象であったことについて≫

今回の治験は男児を対象として行われましたが、これは当該計画が、当時の動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)を参考に作成されたことが要因としてあります。当時は小児FHに対する薬物治療に対し否定的見解が現在より多かった点、女性が男性と比べて冠動脈疾患発現リスクが低い点、その他スタチン製剤の妊娠に対する影響につき配慮が必要であること等も考慮し、女児FH患者については対象としないことが妥当と考えられていたことによるものでした。しかしその後公表された最新版のガイドラインにおいては若年期からの薬物治療も含めた適切なLDL-C値管理の必要性が示されており、更に海外では女児FH患者も組み入れ可能とされ、有効性や安全性についても男女間での大きな差異は認められませんでした。これらを勘案した結果、小児への投与承認は男児に限らず、女児も対象となりました。

今後の展望

本研究により、日本人の小児FHに対して、ピタバスタチンの安全性および有効性が示されました。リスクの高い小児FHに対して、スタチンという新しい選択が日本においてもできるようになったことは、FHの予後そのものを改善できる可能性があると考えられます。

最終更新日 2016年01月06日

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