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動脈硬化等の生活習慣病に影響する"慢性炎症"の抑制作用が内分泌ホルモン「グレリン」にあることを動物実験により証明

~生活習慣病における動脈硬化等進行の治療薬としての可能性に期待~

2015年5月14日

国立循環器病研究センター(略称:国循)病院 動脈硬化・糖尿病内科の岸本一郎医長と同研究所 生化学部の徳留健室長らの研究グループは、主に胃から分泌されるホルモン「グレリン」を欠損した動物では、心臓負荷後の慢性炎症が増強されることを明らかにし、グレリンの作用が慢性炎症の制御に必須であることを、動物実験により証明しました。

本研究成果は、平成27年5月14日(日本時間)付けでHypertension誌オンライン版に発表されました。

研究の背景

従来炎症との関係が考えられていなかった動脈硬化、肥満、糖尿病などの生活習慣病でも、最近の研究により慢性的な炎症の持続によって病気が進行することが明らかとなっています。さらに最近この慢性炎症のコントロールに自律神経の働きが大きく影響することがわかってきました。国循では、これまでの研究から、胃から分泌される内分泌ホルモンであるグレリンが自律神経を調節することにより心臓を保護することを明らかにしてきました。そこで、今回このグレリンの自律神経作用が慢性炎症を制御する可能性を検証しました。

研究とその成果

動物実験により以下の事実が確認できました。

1.胸部大動脈を縮窄して心臓に負荷をかけた場合、一時的に副交感神経の活性が低下し炎症反応が高まるが、正常の動物では2週間後には副交感神経活性と炎症反応は完全に回復していること、

2.一方、グレリンを欠損した動物では、心臓負荷後3ヵ月経過した状態でも副交感神経活性は低下し、炎症反応はますます増加していること(図1参照)、

3.また、グレリンを欠損した動物にグレリンを投与することにより、副交感神経活性の低下は減弱し、慢性炎症持続は完全に抑制されること、

が明らかとなっています。

これらの事実から、

1.心臓負荷による慢性炎症の持続を内因性のグレリンが抑制していること、また、この抑制効果はグレリンの副交感神経活性化作用を介していること、

2.過食や肥満、糖尿病等の臨床的に血中グレリン濃度が減少する状態では、グレリンの作用が少ないために副交感神経の活性低下や慢性炎症が進みやすく、引いては動脈硬化等の病気がおこりやすい原因となっていること、

3.グレリンや関連薬の投与が動脈硬化等の慢性炎症関連病態の治療法として有効である可能性、

が示唆されています。

(図1)心臓負荷モデルを作成してから3ヵ月後の血中炎症性サイトカイン濃度

グレリンを欠損した動物では、(正常の動物に比較して)胸部大動脈縮窄術後の全身炎症の程度が強く、慢性炎症が持続している。

今後の展望

国循では、今回の研究で明らかになったグレリンの慢性炎症抑制作用を応用して、生活習慣病における動脈硬化進行の治療薬としての可能性を提唱し、現在、グレリンのヒトへの作用を確かめる臨床研究を継続しています。

本研究への支援

本研究は、循環器病研究開発費(♯25-3-1)「循環器疾患に関わる生理活性ペプチドの探索・機能解析とそれに基づくトランスレーショナルリサーチ」の資金的支援を受け実施されました。

≪ 参 考 ≫

グレリンについて

グレリンは、国循で発見された成長ホルモン分泌刺激作用を持つ内因性ホルモンです(Nature 402: 656-660, 1999)。グレリンは主として胃内分泌細胞で産生され、摂食亢進や体重増加、消化管機能調節などエネルギー代謝調節に重要な作用を持ち、今まで知られている中で唯一の末梢で産生される摂食促進ペプチドです(Nature 409: 194-198, 2001)。胃から分泌されるグレリンの情報は、神経求心路を介して摂食や成長ホルモン分泌調節の中枢である視床下部に伝達され、これらの促進作用を発現すると考えられています。グレリンの発見により胃が消化機能だけでなくエネルギー代謝や成長ホルモンの分泌調節にも機能していることが明らかになり、肥満や摂食障害などの病因や病態における意義も解明されつつあります。また、現在までの国循を中心とした基礎的・臨床的検討において、投与したグレリンの自律神経への作用が、副交感神経を活性化し、交感神経を抑制することにより、心臓を保護する作用が示されています(図2参照)。

(図2) グレリンの自律神経作用とその機序

       (Expert Rev Endocrinol Metab,, 4:283-289, 2009より改変)。

最終更新日 2015年05月14日

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