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COVID-19蔓延下の急性期脳梗塞に対する再開通療法におけるワークフローの時間の変遷の検証

令和3年8月19日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市,理事長:大津欣也,略称:国循)の吉本武史 脳神経内科医師,豊田一則 副院長らの研究チームは,急性期脳梗塞に対する再開通療法(静注血栓溶解療法あるいは血栓回収療法)におけるワークフローの時間の変遷を新型コロナウイルス感染症 (coronavirus disease 2019: COVID-19)蔓延期前と蔓延期で比較した結果,COVID-19蔓延期前と比して,COVID-19蔓延期は,病院到着から画像撮影,病院到着から静注血栓溶解療法開始及び病院到着から血栓回収療法開始(穿刺)までの時間が延長していました。一方で,COVID-19蔓延期を4ヶ月毎の3期間に分けたところ,COVID-19蔓延下において,病院到着から静注血栓溶解療法開始及び病院到着から血栓回収療法開始までの時間は,経時的に短縮されつつあることが判明しました。再開通療法に対する院内ワークフローを見直すことで,感染曝露のリスクを最小限に抑えながら,COVID-19蔓延期前とほぼ同程度まで,再開通療法におけるワークフローの時間は改善しました。本研究成果は,「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」誌に令和3年8月13日付でonline掲載されました。

背景

COVID-19蔓延期である本邦において,医療従事者のCOVID-19感染のリスクを最小限にしつつ,脳卒中急性期診療において,静注血栓溶解療法および血栓回収療法を含む再開通治療をいかに迅速に,かつ安全に行うかは喫緊の問題です。
現在,本邦ではCOVID-19蔓延以降約1年以上が経過し,COVID-19蔓延下における院内の脳卒中急性期診療体制も大きく整備されました。COVID-19蔓延以降の再開通治療の時間の変遷に関しての報告は海外及び国内でも未だ少ないのが現状であり,我々は,当院におけるCOVID-19蔓延期前とCOVID-19蔓延期の,再開通療法ワークフローの時間の変遷を比較,更にCOVID-19蔓延期の1年間を4ヶ月毎に3期間に分けてを比較することで,COVID-19蔓延期において,再開通療法の時間の遅延がどの程度であるかを検証しました。

研究手法と成果

2019年3月から2021年2月に当院入院しました,発症7日以内の急性期脳梗塞患者1260名のうち,再開通療法(静注血栓溶解療法あるいは血栓回収療法)を施行した265名分のデータが本研究で解析可能でした。脳梗塞発症時期で,COVID-19蔓延期前群(2019年3月から2020年2月)とCOVID-19蔓延期群(2020年3月から2021年2月)の2群に分けました。COVID-19蔓延期前群(133名,年齢中央値79歳)と比べて,COVID-19蔓延期群(132名,年齢中央値79歳)は病院到着から画像撮影,病院到着から静注血栓溶解療法開始及び病院到着から血栓回収療法開始(穿刺)までの時間が延長しました。更に,COVID-19蔓延期群を4ヶ月毎に第1期(2020年3月から6月),第2期(2020年7月から10月),第3期(2020年11月から2021年2月)に分け,第1期から第3期にかけて,時間の変遷を比較した結果,病院到着から静注血栓溶解療法開始及び病院到着から血栓回収療法開始までの時間は経時的に短縮されていました。
また,COVID-19蔓延期前から蔓延期にかけて,撮影時間がより短縮されることで曝露リスクが軽減される頭部CTが頭部MRIよりも施行数が多くなったことも判明しました。

今後の展望と課題

本邦において,COVID-19蔓延期前と蔓延期の再開通療法の時間の変遷を約2年間という長期間で比較した研究は海外でも報告は少なく,国内でもほとんどありません。今回の研究でCOVID-19の蔓延は,急性期脳梗塞に対する再開通療法のワークフローの時間の遅延をもたらしましたが,その後,院内体制の整備に伴い,徐々に時間は短縮されつつあり,蔓延期前とほぼ同等まで改善していました。COVID-19の蔓延が日本の急性期脳梗塞診療にどのような影響を及ぼしたのかを検証すべく,現在,COVID-19蔓延期前と蔓延期の急性期脳梗塞診療の全国調査が行われており,それらの結果が待たれます。

発表論文情報

著者:吉本武史,塩澤真之,高下純平,井上学,古賀政利,猪原匡史,豊田一則
題名:Evaluation of Workflow Delays in Stroke Reperfusion Therapy: A Comparison between the Year-Long Pre-COVID-19 Period and the with-COVID-19 Period
掲載誌:Journal of Atherosclerosis and Thrombosis

謝辞

本研究は,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(助成金番号 20lk0201094h0002,20lk0201109h000) より資金的支援を受け実施されました。

図1

(図)COVID-19蔓延前後(A)及びCOVID-19蔓延後第1期〜第3期の再開通療法ワークフロー時間の比較

最終更新日 2021年08月19日

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