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都市部地域住民における歯周病の悪化と咀嚼能力との関係について

令和3年7月16日
国立循環器病研究センター

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)、健診部 小久保喜弘特任部長、新潟大学大学院医歯学総合研究科 小野高裕教授、大阪大学大学院歯学研究科 池邉一典教授らの共同研究チームは、無作為抽出した都市部一般住民である吹田研究(注1)参加者を対象に解析した結果、歯周病が進行すると、歯の数が変わらなくても咀嚼能力が低下することを示しました。本研究成果は、国際誌「Journal of Clinical Periodontology」に2021年6月29日にオンライン公開されました(注2)。

背景

咀嚼能力(食物を細かく噛む能力)が低下すると、摂取可能食品の選択肢が狭まり、栄養摂取に悪影響を及ぼします。その結果、全身的な健康状態の悪化を引き起こし、メタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の発症へとつながることを、これまでの吹田研究の成果で多く報告しております。そのため、咀嚼能力に関連する因子を特定し、咀嚼能力の低下への予防策を講じることは、全身の健康を維持する上でも重要だと考えられます。 一方、歯周病は、歯茎の腫れや疼痛、また歯を支える骨の破壊を引き起こす慢性炎症性疾患です。歯周病が進行すると歯を失い、咬み合わせが悪くなることで、咀嚼能力が低下します。しかしながら、歯の数や咬み合わせが維持されていても、歯周病そのものが咀嚼能力の低下に影響するかどうかについて示した報告はほとんどなく、エビデンスが求められていました。

研究方法と成果

 吹田研究参加者である50~79歳の都市部一般住民のうち、初回歯科検診、および2回目歯科検診(初回から4年以上経過)の両方を受診した方の中から、調査期間中に歯の数が変わっていない663名(男性267名、女性396名)を対象に解析を行いました。咀嚼能力の測定には、専用に開発されたグミゼリーを30回咀嚼して増えた表面積を算出する方法を用いました。  その結果、調査期間中に歯周病が進行した者は、維持した者や改善した者と比較して、咀嚼能力が大きく低下することが明らかになり(図1)、咀嚼能力を維持する上で、歯の数や咬み合わせを維持するだけでなく、歯茎の状態を健康に保つことが重要であることが示されました。

今後の展望と課題

本研究成果の意義は、歯周病により歯が減少し咬み合わせを失うことだけでなく、歯周病の進行そのものが咀嚼能力に影響を及ぼすことを明らかにしたことです。歯の数や咬み合わせを維持するだけでなく、歯茎の状態を健康に保つことが咀嚼能力の低下を予防し、動脈硬化性疾患予防にもつながると考えられます。高齢化率が世界で一番高い我が国で、健康寿命の延伸のためにも、臓器の終末像である心不全や認知症の予防のために、咀嚼能力の維持が重要であるエビデンスを出していくことが今後の課題として検討しております。

謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
日本学術振興会(科学研究費「20390489」、「23390441」、「26293411」、「17H04388H」)、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(循環器病委託研究費「22-4-5」、「27-4-3」)

<注釈>
(注1)吹田研究 (第1次コホート:1989年~、第2次コホート:1996年~)
国立循環器病研究センターが1989年より実施している追跡研究(研究対象者の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)で、大阪府吹田市民を性年代階層別に無作為に抽出した吹田市民を対象としています。現在国民の約9割以上が都市部在住であることを考えると、その研究結果は国民の現状により近い傾向にあると考えられています。

(注2)論文タイトル:Deterioration of periodontal status affects declines in masticatory performance: the Suita study. Journal of Clinical Periodontology. 2021. doi: 10.1111/jcpe.13515.

<図表>
図1.歯周状態3群における咀嚼能力変化率の比較

(n=663)
調査期間中に歯周病が進行した者を「悪化群」、維持した者を「維持群」、改善した者を「改善群」とした。
咀嚼能力の変化率
=(2回目検診時の咀嚼能力-1回目検診時の咀嚼能力)÷1回目検診時の咀嚼能力×100

最終更新日 2021年07月16日

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